何かのメモ

「小屋潰し」私見(初出:2003.9.5)

バカバカしい上に狭い世界の話であるため、わざわざ書くことがかえってみっともないように思えますが、私は出来た人間ではないので書いちゃいます。資料を見返すのが面倒なので(全くもってダメ人間だ)、些細な違いはご容赦下さい。

「 2ちゃんねる BBS 」の「小屋」と呼ばれるスレッド(話題ごとに任意に作られる BBS)が2002年2月24日に大荒れした出来事――俗に「小屋潰し」と呼ばれている事件。スレッドの常連は、この事件を「 IRC のチャンネルの一つ『#名無し』のメンバーがスレッドを荒らし、書き込みの進行を邪魔してスレッドを終わらせようとした」と理解しているようです。その証拠とされているのが、事件後に公開された「#名無し」での会話のログ(記録)です。"KEEPS" というアプリケーション開発環境が開発中止に至ったのは「小屋」の負の側面が発揮されたせいだから、一度「小屋」を終わらせてその負の側面を払拭しよう――というのがその会話の要旨だったと思います。

"KEEPS" 開発者は、「開発中止と『小屋』は関係ない」と言ってるようなので、「#名無し」のメンバーが「小屋」を終わらせようとしたならば、事実誤認から勝手に正義の代弁者を演じたと言われても仕方がないでしょう。

問題は、本当に「#名無し」のメンバーは小屋を荒らしてスレッドを終わらせようとしたのか、そして「小屋」常連はその「荒れ」について全くの被害者だったのか、という点です。

「 2ちゃんねる BBS 」では一つのスレッドでの投稿数は1000までとなっているので、1000に達する直前あたりで有志がスレッドを新たに作り直し、投稿が続行していきます。スレッドの末尾には気の利いた投稿者によって次のスレッドの URL が投稿され、スムーズに閲覧者の移動が可能となっています。「小屋」では、「 任意たん.JAM 」を名乗る人物がこの役目を担っていました(他のスレッドでは決まった人物がこれを行うということはありません)。問題の2002年2月24日、「『何か』 MATERIA 120 J-oたんハァハァ小屋」のスレッド後尾で、移動をやめて「小屋」を終わらせようという書き込みが増え、「 任意たん.JAM 」は次のスレッドへの URL を示すことなくスレッドの終了を宣言してしまいました。

彼は別の場でこの宣言を(なりすましではなく)自分が行ったことを証言していますし、「#名無し」のメンバーであることを否定せずに弁明していた覚えがあるので、「『#名無し』のメンバーが『小屋』を終わらせようとした」のは事実であると言っていいでしょう。

彼はスレッドの終了を宣言したものの、終了するつもりのない有志がスレッドを作り「小屋」は続行しました。それが「『何か』 MATERIA 121 にぅすたんは何を!?小屋」ですが、ここでスレッドの終了を促す投稿が頻繁に行われました。そして続行先のスレッドが乱立するとともに投稿内容も混迷の度合いを深めていくことになります。

ここで先に挙げた問題「本当に『#名無し』のメンバーは小屋を荒らしてスレッドを終わらせようとしたのか、そして「小屋」常連はその『荒れ』について全くの被害者だったのか」について考えてみると、私は以下のごとく思わざるを得ません。

そういうわけで、今のところ私は「 IRC のチャンネルの一つ『#名無し』のメンバーがスレッドを荒らし、書き込みの進行を邪魔してスレッドを終わらせようとした」という見方を事実とすることはできません。むしろそういう見方は、頭ごなしに罪をなすりつけて自己を正当化しようとする誤った姿勢であると思います。なお、「#名無し」のログについては、メンバーがログの内容を否定していないこと、一からあれだけ書き起こすのはよほどの能力がないと出来ないと思われることから、おそらく本物でしょう。絶対に全部本物なのかと詰問されれば哲学の世界まで行ってしまうので困りますが。

もし「#名無し」のメンバーが「小屋」を荒らしたのであって、「小屋」常連は一方的な被害者である――とする信頼すべき証拠があるならば喜んで頂戴しますので、E-mail か当サイトの BBS 経由で提供よろしくお願いします。

実験とその顛末

「界隈」のコミュニケーション構造

2002年5月当時の問題認識として、私には「『伺か』というソフトウェアについて、個を識別できる名前を名乗り web 上で創作物を発表したり言論を交わしたりする人というのは、しばしば不愉快な思いをする」というものがあった。その原因として、彼らが形成しているように見える web 上の繋がり(『伺か』についての言説において、俗に「界隈」と呼ばれているもの)のコミュニケーション構造に着目し、以下のように記述した(2002年5月11日)。

『何か』『伺か』はデベロッパとユーザが不可分であり時間の推移とともにしばしばユーザがデベロッパとなる。そのユーザは『偽春菜』時代からの歴史的事情からウォッチャーを兼ねており、匿名掲示板を根城として常にゴシップを求めている。ウォッチャーとしてゴシップをユーザが集約・拡大させ、そのゴシップはデベロッパとしてのユーザにフィードバックされる。

この構造では、ゴシップが楽しいものとして受け入れられるものであれば全体を盛り上げるが、ひとたび醜聞が立つと全体に動揺を与える。動揺とまで行かなくても、不快な空気が漂うことになる。

そうすると、「『何か』『伺か』に関わると不幸になる」という言説においては、不幸とは自らが招いてたものであるか、自らが荷担した結果振り掛けたものであるかのどちらかといえる。翻れば、ウォッチャーであることを放棄する、ウォッチ範囲を限定する、ウォッチャーと直接に関わらないといったことによって主体的に不幸を回避することが可能であると思われる。

想定したモデルの構成要素は、ユーザ、デベロッパ、ウォッチャー、匿名掲示板(主として「 2ch BBS 」の「小屋」と呼ばれるスレッド)、デベロッパの web 日記、「さくらナビ」(投稿式新着ニュースアンカーサイト)、アンテナ(特定の web ページ群を、更新のあった web ページ順に表示するサービス)である。

例えば、ある話題 A が「小屋」で取り上げられると、ウォッチャーとして「小屋」の閲覧者・投稿者でもあるデベロッパは自身の web 日記で 話題 A について触れる。その web 日記は、その web 日記が登録されているアンテナの上位に来ることで更なるウォッチャーの目に留まることとなり、「小屋」において話題 A をさらに展開し、あるいは別のウォッチャーでもあるデベロッパがさらに自分の web 日記で話題 A について触れ、アンテナを「動かす」。それらの相互作用によって話題 A はより広がって行く。

この例では「小屋」→ web 日記→アンテナ→「小屋」/ web 日記、という流れであるが、さくらナビ→「小屋」/ web 日記→アンテナ→web 日記、というルート、web 日記→アンテナ→「小屋」/ web 日記→「さくらナビ」というルートもあり得る。ウォッチャーは複数の場を情報チャンネルとしてアクセスするので、実際のルートは一本道ではない。

ルートがどうであれ、「小屋」、「さくらナビ」、アンテナは話題を顕在化させ、増幅させる役割を果たす。「さくらナビ」とアンテナは単なる話題の媒介の場であるが、「小屋」の場合、より魅力的な別の話題がもたらされ、かつその話題が覇権を握らない限りは、ひとつの話題が一定期間において他の話題を退けてしまうことから、議題設定機能と媒介機能を同時に発揮することとなる。

なお、デベロッパがウォッチャーになるのは、ディープなネットワーカーが好んで訪れるような web サイトで話題となり広まったという歴史的事情のみならず、『伺か』というアプリケーション自体が、Internet へのアクセスを促す性質を持っているからと言った方がよいだろう。ゴーストそれぞれが「おすすめ」などの形で web サイトへのポインタを持つようになっているし、ゴーストの更新は基本的に web 経由で行われる。『伺か』本体やゴーストの入手方法自体、雑誌の付録 CD に収録されることは少ないので基本的には web 経由だ。ゴースト等の開発に関する情報やツールを得るのは web サイトを巡ることが唯一の道となっていることからも、それは明らかである。

実証実験

ところで、当時「何か最萌トーナメント」というイベントが『伺か』の繋がりの中で中心的話題になっていた。また当時はゴースト「54」がもてはやされていた時期でもあった。私は「54」のスクリーンショットを見るなり「こりゃダメだ」と思い、世間的評価とのずれを感じていた。「最萌トーナメント」に出場している「 54 」の出場日、私は試しにその流行のゴーストとは実際どんなものかと試用してみたのだが、直観通り実にうんざりさせられたのみならず、それに対する批判的検討が全くなされていない状況を危惧した。これを機会に先の仮説を身を持って実証してみようと5月13日、「ネガティブキャンペーン」と皮肉った煽りの文を公開した。

以前から言おうと思っていました。

私はゴースト「54」が嫌いです。

ジョニーの背番号がどうこうはまぁ置いといて。まず、キャラクターとして気に入らない。「叩くなら俺を叩け」と表明した発言番号54なのだから叩いてやるのが筋というものです。女性化して萌えようとする一発ネタにしても。だから例えば先日 2ch BBS で行われた猫虐待中継のごとく(自粛)ことはおろか、連合赤軍の内ゲバのごとく全身を(自粛)することができるゴーストの方がよっぽど適切だな、と思うのです。

百歩譲ってそれを見逃すとしても。話す内容が萌えを狙ったあざといだけのものでバリエーション少なく、それに頭の悪そうな口調があいまって、私の神経を逆なでします。「鬱陶しいんじゃヴォケが!金属バットで(自粛)るぞ(゚Д゚)ゴルァ!!似たような喋り方するなら『2nd天使しのの』並に気の利いたことを喋ってみろやヘタレが!」などと言いたくなります。個人的に。

それを我慢するにしても。所詮一発ネタゴーストであるにも関わらず「54」が支持されている状況が不快です。頭の悪い女の子、大人しく控えめな女の子が相手ならばヲタクは自分が絶対的優位に立てますから、そういうタイプである「54」のキャラクターづけが好まれるのは分かります。しかしなぜ内容が薄いのに現在最萌トーナメントで「54」がベスト8にまで進出することが出来ているのか。技術的にも歴史的にも会話ネタとしても「54」を凌駕しているゴーストが悉く、話題性だけの1日か2日で作れそうな即席ゴーストに人気で負ける。それは、人気ゴーストであるためには技術も会話の面白さも評判の蓄積も要らない、流行に乗っていればそれでよいということだと言っても過言ではないわけです。結局『伺か』人気の本質はゴシップ増幅構造が生むスキャンダリズム・センセーショナリズム・エモーショナリズムなのか、なんて虚しい気分になります。

本当にそんなのがいいのですか。

この煽り文の内容の妥当性についてはひとまず保留する。なお、「最萌トーナメント」での「 54 」の勝負を妨害する意図はなかったこと、内容に現在の私の見解とは相違があることは考慮されたい。さて、これを公開した結果どうなったか。

この文を掲載したページ http://meta-metaphysica.net/journal/journal.html は一日に20件程度しかページビューがなかったのだが、「小屋」にいち早く転載され、猛反発する内容の投稿が並んだ。さらに「さくらナビ」には誹謗(どのような書き方だったかは記憶に無い)とともに、ページへの直リンクが投稿された。それとともにページビューは急増。また、デベロッパ諸氏のサイトの日記においても、私の煽り文を名指しはしていないが、明らかにそれを指しているであろうという文章が掲載された。正確には記憶していないが、次のような内容だった。

亜呂みどり氏も自身の web 日記で名指しすることなく私に対する失笑を表していたが、内容を思い出せない。

仮説どおり煽り文の一撃は『伺か』関連サイトに広がっていった。その結果を見て私は「おー、釣れた釣れた」と 2ch 風に揶揄したが、その発言は一層反発を招いた。

「さくらナビ」での投稿ポインタは誹謗部分は管理者の J-o 氏によって削除されたものの、リンク自体は保持された。意図した以上に「さくらナビ」からの訪問者が多く、ライトな『伺か』ユーザに煽り文を見せるのは酷であると判断し、話題の伝播を抑えようと 「さくらナビ」の referer を吐いた journal.html へのアクセスはサーバ側で拒否するようにした。しかしそれを受けて何者かが「 54批判(執務録) ゴースト作者・界隈関係者は一度は読みましょう」と記して http://meta-metaphysica.net/ へのポインタを投稿した。翌日にも「 54批判の続き(執務録)」というポインタが投稿された。これらのリンクによって、普段は50ページビューくらいしかないトップページは1日で一挙に1000ページビューほどに至り、「さくらナビ」の力を数字で具体的に思い知らされることになった。ちなみに、これらのリンクも気づいた時点でサーバ側でアクセス拒否するよう設定しておいた。

結局、煽り文に対する反応はゴーストとしての「54」の評価に集中し、コミュニケーション構造に対する省察は一顧だにされなかった。「お前の言う様な構造など存在しない」とか「下らない妄想」とかくらいの一言もなかった。そして「小屋」などでは、私を指して「『54』を叩いた挙句、言うに事欠いて『釣れた釣れた』と強弁した奴」といった感じで紹介されるようになっている。

「54」から見えるもの

(未完)


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