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ISBN:4062129663

2004年、一人の高校教師が60歳で亡くなった。

彼は並外れた長打力を誇る即戦力のプロ野球選手と期待されて南海ホークスに入団したが、プロ1年目に怪我をしてしまい、大した成績を残せず、わずか5年でプロ野球選手を引退することになった。
しかし当時の野村克也・選手兼任監督により、28歳で打撃コーチに抜擢される。
以後30年に渡り、打撃コーチとして7球団を渡り歩いて何人もの名プレイヤーを育て上げた。
50代に入ってからはコーチを務める傍ら、大学の通信課程で学び、5年かかって58歳で教員免許を取得。
千葉ロッテマリーンズの打撃コーチを最後にプロ野球の世界を離れ、59歳にして高校教師に転身する。

彼の夢は、高校生に野球を指導して全国高等学校野球選手権大会――「甲子園」で優勝すること。
だが、プロ野球出身者は、退団後2年間は高校生に野球を指導することを禁止されている。
禁止期間が明けるまで、一高校教師として生徒の指導にあたった彼は、生徒たちの心を掴んでいった。
しかし禁止期間が明けないまま、彼は膵臓癌に倒れ死去。
夢は果たされぬままに終わったのである。

彼の名は、高畠導宏。
球界随一のアイデアマンとして、ユニークなトレーニング法を数多く考案したが、私が彼の名を覚えたのも、新聞で彼のユニークなトレーニング法が取り上げられているのを読んだからだ。
そのトレーニング法というのは、バットを振るときの腰の回転を正しく身につけるために、自分の一物をブラブラさせて腿に当てるイメージを抱いてバットを振るというものであった。
残念ながら女性には使えないトレーニング法である。
その後高校教師に転身するも夢半ばで亡くなったことも、新聞で読んだ。
そして彼の晩年がドラマ化されることも、新聞で読んだ。
NHK の土曜ドラマ『フルスイング』。
その原案となった本ということで読んだのが、門田隆将著の『甲子園への遺言 伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯』である。

本書では、高畠導宏の少年時代から死去するまでの生涯を軸にしつつ、往年のプロ野球の裏側も語られる。
サイン盗みの横行。
野村克也解任騒動。
ただの守備要因だった水上善雄の打撃を向上させ、レギュラーに育てたこと。
新人時代の西村徳文を付きっ切りの猛練習でスイッチヒッターに転向させたこと。
自分が成功した方法を押し付けるコーチが多い中、高畠は独自の野球理論を持ちながらもそれを押し付けることをせず、選手一人一人に応じた指導法を実践したという。
若き日の落合博満についても、その性格を汲んで口出しをすることを殆どせずに彼の流儀を尊重し、大打者への道を開いた。
また、親身かつ情熱的にプレイヤーたちと付き合い、能力を発揮できるように様々な気配りを行ったエピソードが本書では紹介されている。
さながら、コーチングのお手本集のようである。
現役プレイヤーでも、コーチ生活の晩年に指導を受けた田口壮、小久保裕紀、サブロー、福浦和也など、彼を慕う主力級のプレイヤーの証言が記され、彼の優れた人柄が伺える。

読み進めているうちに、大久保博元を打撃コーチに据えた埼玉西武ライオンズの来シーズンが絶望的に思えてきてしまった。
いや、 TV での顔しか知らないから、コーチとしては優れた能力を持っている可能性がないとは言えないが……少なくとも高畠ほど野球に対する眼力と人徳があるようには見えない。

教育実習期間を含めてわずか1年少々の教員生活だったが、同僚の教員にも、生徒たちにも高畠は一目置かれていたらしい。
大学を出て学校という狭い世界で時間を重ねてきた教員には持っていないものを持つ者として、高畠の存在感は大きかった。
30年間、いつクビになるとも知れないプロ野球の世界で生き残ってきた高畠が心に抱き続け、病に冒されてもなお教壇に立ち、生徒たちに伝えようとしたのは「氣力」の二文字だった。
気軽に使われがちで、時に人を誤った方向へ導く言葉だから私は好きではない。
気力を持てるかどうかというのも人の資質によるものだ。
しかし持てるタイプの人間についてならば、その人間を最終的に左右するのは気力に違いないだろう。
高畠導宏という人の生き様は、それを体現したものだった。

本書はプロ野球ファンが読むと特に楽しめると思うが、人に何かを教える立場にある人や挫折を経験して落ち込んでいる人にも何かしらヒントを与えてくれることだろう。
「偉人伝」という呼び名がふさわしい一冊である。

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2006年の初春くらいに読んだ本。


玄田有史『仕事のなかの曖昧な不安 揺れる若年の現在』(中公文庫)

ISBN:4122045053

20代から30代の若年層が直面している労働問題を、様々な統計データを元にして論じた本。
そこで明らかにされているのは、中高年が優遇される労働政策、雇用慣行の実態だ。
「パラサイト・シングル」「フリーターの増加」は必ずしも精神論に帰せられるものではないことを著者は示す。
さらに定年延長がもたらす問題、転職にまつわる問題、所得格差、仕事内容の格差、成果主義の問題と、様々に問題点が指摘されていく。
その中で若年層が目指すべき道は何か、というと、著者によれば「自営業者になること」だそうだ。
本書のうち一章が自営業についての論考について割り当てられており、その末尾は「若年雇用者問題の将来は、若者が『自分が自分のボスになりたい』と思うかどうかにかかっている」という一文で締めくくられている。

ルドルフ・ヘス『アウシュビッツ収容所』(講談社学術文庫)

ISBN:4061593900

アウシュビッツ強制収容所の所長として、収容所の建設、収容者の大量虐殺を実行したルドルフ・ヘスの告白録。
ひたすら冷静に、仔細に彼の経歴と務めてきた仕事が語られる。
忠実に任務をこなそうとするクソ真面目な公務員の姿がそこにはある。
自分も収容所に入れられた経験があるし、収容者を虐待・虐殺したくなかったけど、資材や食料が足りないのに無茶な命令で収容者ばかり増えるし、総統からの殺せという命令だったんで仕方なかった……という論調は、公務員の悲哀が感じられて共感・同情する部分もあるけど、結局自己正当化だよなあ。
何より、被害者への謝罪の気持ちが全然現れていないのが問題だ。
とはいえ、ナチスが隠蔽しようとした強制収容所の実態と、「残忍だったり嗜虐的だったり頭のおかしかったりする人物でなくても、人は大罪を犯すことができる」という事実を示した点で、人類史に残すべき重要な一冊といえることは間違いない。

D・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』(河出文庫)

ISBN:4309462553

平凡なイギリス人の主人公のもとに、ある日突然工事業者がやってくる。
業者いわく、立ち退き期限が過ぎたので、道路建設のために強制的に家を取り壊す、と。
そんな工事は知らないと抗議していると、友人が現れ彼を連れ出す。
友人いわく、立ち退き期限が過ぎたので、銀河バイパス建設のために間もなく地球が強制的に消滅させられる、と。
友人の正体は、宇宙人向けの旅行ガイドブック『銀河ヒッチハイクガイド』を改訂するため地球にやって来た宇宙人だった。
友人の手で地球を脱出し、地球最後の生き残りとなった主人公は、訳が判らないまま無理矢理宇宙を放浪することになる。

小ネタ的ギャグが満載で、笑いながら「イギリスのコメディ TV 番組っぽいセンスだなあ」と思って読んでいたが、それもそのはず、作者はイギリスのコメディ TV 番組の制作に携わってもいた。
本書読了後、2005年制作の映画版の DVD を買って観たけど、面白さは原作には及ばない。
バカバカしい小説で爆笑したいと言われたら、オススメする一冊だ。

ちなみに本作には、コンピュータに「人生、宇宙、すべての答え」を答えさせるという有名なナンセンス・ギャグがある。
本作へのオマージュ的ジョークとして、「人生、宇宙、すべての答え」で Google 検索すると本作同様の答えが出てくることはファンには有名な話。

酒見賢一『語り手の事情』(文春文庫)

ISBN:4167656108

奇書、である。
舞台はヴィクトリア朝時代のイギリス。
メイドあるいは執事のような仕事をしているが、あくまで自らを「語り手」と称する謎の女性が語る物語。
彼女はある時は性に対する妄想を抱いた少年の筆下ろしを行い、ある時は女性になりたいと妄想する紳士をサポートして、妄想力で彼の肉体を女性に変化させる。
またある時は性奴隷を求めてやって来た SM マニアの男の前で降霊会を行い、依代となった少女に SM 行為をさせる。
傍観者のようにただ「語って」いた彼女だったが、かつて筆下ろしを行い今や青年となった男がサキュバスに犯されたのに際して、身を投じて彼と交わり彼を助け、彼とともに異空間へと去っていく。

フェティッシュな性談義、性行為が次々と描かれていくので、こりゃエロ小説かと思いもするけど、人間の肉体をもっと見ろ、本来備えている「性」の力というものをもっと見ろ、と著者は言いたいのかもしれない。
あとがきで著者が言うのは、これは「恋愛小説」だそうな。

で、結局「語り手」って何?

浅田次郎『椿山課長の七日間』(朝日文庫)

ISBN:4022643528

映画化もされた新聞小説。
映画の方は未見。

突然死した中年オヤジが主人公。
家族に別れを告げるため、天国から舞い戻ってくる。
ただし与えられた時間は7日間、肉体は全く別人の美女のもの。
自分の正体を明かすことはルール違反。
主人公が天国で同席した、同じく現世に未練のあるヤクザの組長、男の子も、生前とは正反対の姿と性格で現世に戻され、現世でやり残したことを果たそうとする。
そして彼らは、自分の人生がどのようなものであったのかを知ることになる。
その中には知りたくないものも、知っておかなければならないこともあった……。

「素晴らしき哉、人生!」的な作品。
しかし最後の最後で、主人公の父親である爺さんのたどる結末が……あれがなけりゃ、ハッピーエンド、大団円めでたしめでたし、だったのに。
楽しんで読んでただけに、味噌をつけられた感じ。

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2006年の初春くらいに読んだ本。

宮部みゆき『人質カノン』(文春文庫)

ISBN:4167549042

いわゆる「日常の中のミステリー」を描いた短編集。
「円紫師匠」とか「猫丸先輩」みたいな全編共通の探偵役がおらず、それぞれの話の主人公が自力で真相を探り当てるのがちょっと目新しかった。
宮部みゆきがこういう短編も書ける人って知らなかったな。

古橋秀之『ある日、爆弾がおちてきて』(電撃文庫)

ISBN:4840231826

あとがきで作者自身が言及しているけど、「時間の流れ」をテーマにした短編集。
ストーリーは「高校生くらいの普通の少年の前に、変な少女が現れて、恋心が絡む」というライトノベルにありがちな構成で統一されている。
青春を感じさせる明るい雰囲気の作品群の中で「恋する死者の夜」という一編が異彩を放っていて印象深かった。
死んだ人間がゾンビ化して生前の行動を繰り返すようになっている世界で、主人公は病弱な少女と出かけた「一日限りのデート」を少女の死後も繰り返し、世界の緩慢な死に身を委ねる……というお話。
あと、最後の一編「むかし、爆弾がおちてきて」の設定は広島・長崎の被爆者や関係者には怒りを買うかもしれないけど、秀逸なアイデアだと思う。
ライトノベル入門の一冊として好適かも。

谷川流『絶望系 閉じられた世界』(電撃文庫)

ISBN:4840230218

谷川流といえば『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズで有名だが、これは毛色の違うアプローチの「セカイ系」作品。
主人公の友人の家に、突然天使と悪魔と死神と幽霊が現れる。ひとまず主人公は、自分の名前しか思い出せない幽霊の青年の素性と死因を探っていくのだが……。
天使や悪魔や死神や幽霊が居る世界のシステムが存在するなら、そんな世界そのものが狂っているのではないか、狂った世界では狂人こそがまともなのではないか……という着眼点で物語が作られている。
荒唐無稽な設定で、主人公もヒロインも狂っているが、一種の思考実験としては面白い。
描かれた狂気をフィクションとして楽しめるだけの免疫を備えてからじゃないと読んではいけない。

長森浩平『タイピングハイ! さみしがりやのイロハ』(角川スニーカー文庫)

ISBN:4044709017

物語の舞台は人口減少により都市コロニーごとに人が住むようになった近未来の世界。
主人公はハッカーの少年。
彼は伝説的ハッカー「レムス」の情報を受け、違法な AI 研究をしているという名門学園に生徒として不正入学する。
早々に不正入学は明らかになるが、顔を隠した謎めいた生徒会長に呼び出され、限られた生徒だけが進むことのできる「 AI 養成コース」に進むことを要望される。
さらに学園内にいる「アリエル」という名の迷子の少女を探し出すことを依頼される。
果たして「レムス」の情報の真偽は、生徒会長と「アリエル」の正体は……というお話。

表紙のイラストこそロリコン調の少女3人が描かれているだけだが、中身はよく出来た SF。
人に教えられなかったら、まず読んでなかったと思う。

それにしても作者の名前の元ネタはやはり『 ONE 』なのだろうか……。

笹生陽子『きのう、火星に行った。』(講談社文庫)

ISBN:4062750228

斜に構えてクールぶっている小学6年生の少年を主人公におき、彼と彼をとりまく少年たちの成長を描いた短編。
熱く燃えていく主人公の疾走感が気持ちいい。
字が大きくペラペラなので、主人公同様の、ちょっとませた小学生が背伸びして読むのもよさそう。

滝本竜彦『 NHK にようこそ! 』(角川文庫)

ISBN:4043747020

大学を中退しアパートに引きこもる青年、佐藤を主人公にした青春小説。
彼の前に清楚な少女「岬ちゃん」が現れ、彼を「ひきこもり」から救い出そうと言う。
そんな彼女をあしらい、自力で「ひきこもり」から脱出しようと奮闘する佐藤だが、挫折してばかり。
佐藤は岬と契約し、彼女のサポートを受けることになる。
しかし岬の行動には、内に秘めた本当の目的があった……。

オタク男やネットサーフィンの描写が「作者自身の実体験でなくちゃここまで書けないだろう」というほど秀逸で、共感を誘われる。
地の文でも、持ち出してくる言葉や文章のセンスが尋常でなく私にジャスト・フィットしてきて、ニヤニヤしてしまう。
ご近所の見慣れた風景がテレビ放送で映し出されているのを観たときに何故か喜んでしまうのと同じような感覚があるのだ。
少なくとも私にとっては、ずっと保管しておきたい本。

マンガ版は無理にストーリーを引き伸ばしている感があってグダグダだけど、原作はすっきり綺麗にまとまっている。

アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』(創元推理文庫)

ISBN:4488123015

ロンドンで毒入りチョコレートによる毒殺事件が発生する。
一体犯人は誰なのか?
事件は警察から「犯罪研究会」に持ち込まれ、会員6人が1人ずつ真相の推理を披露していくことになる。
もっともらしいと思わされた推理は新事実とともに次々と覆っていく。
そして6人目の会員がついに真相にたどり着く……。
アイデアといい、6つの異なる視点を用意する力量といい、感心するばかり。
「古典的名作」の評判に偽りなし。

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岩岡ヒサエ『ゆめの底』(宙出版)

ISBN:4776792559

本屋で表紙を見て何かピンと来るものがあったのでジャケ買い。
結果大当たり。

眠りについた少女がふと気づくとコンビニエンスストアの前に居た。
そこは夢のできるところ。
生の世界と死の世界の狭間にあるこの場所に、いくつもの思いがやって来ては去っていく。
丸っこくてぷにぷにしててキュートでありながら、繊細で軽い独特のタッチ。
枠線以外定規を使わないことから生まれているのだろう、心地よい酩酊感がある。
まったりほっこりできるファンタジーだ。

こうの史代『さんさん録』(全2巻、アクションコミックス)

ISBN:4575940046
ISBN:457594016X

主人公は定年を過ぎて妻に先立たれた初老の男、参平。
自分の家を引き払い息子一家とともに暮らすことになった彼は、荷物の中から一冊のファイルを見つける。
それは亡き妻が参平に残した生活ノートだった。
そのノートを読んで家事を学び実践する参平と一家の日々を描いた作品。
シリアスな展開でしんみりさせておいて毎回オチをつける、こうの史代お得意の匠の技を堪能できる。
ついでに生活の知恵も学べて非常にお得。
こうの史代にハズレなし。

五十嵐大介『リトル・フォレスト』(全2巻、ワイド KC アフタヌーン)

ISBN:406337551X
ISBN:406337582X

主人公のいち子は、街の生活をやめて東北地方のとある村、小森に帰り一人暮らしをしている。
畑を耕し作物を育て、料理をして食べる。
手間はかかるし不便だけど、その生活の何と豊かに見えることか。
作中で描かれる料理の模様を読むたび口に唾が湧いてきて、自分も田舎で暮らしたくなる。
しかし農村での暮らしは甘いものではないことも教えてくれる。
五十嵐大介の他の作品世界とは少々毛色が違ってイメージや超自然の世界が展開されることはないけれど、彼の中には「人間は自然から恵みを受け取って生きている」という自然への崇敬がベースにあって、その崇敬の部分を抽出して展開したのがこの作品なんだと思う。

読んで大満足するとともに、買ったきり読まずに1年放置してたのを後悔した。
五十嵐大介のマンガはよくわからん、と言う人でもエッセイマンガの気分で読めるはず。
火事で焼けてももう一度買いなおしたいと思うお気に入りの一作。

志村貴子『どうにかなる日々』(全2巻、F COMICS)

ISBN:4872337255
ISBN:4872338421

志村貴子の作品はキャラクターの無表情の表情であったり、ぼけーっとした表情だったりが生み出す「静止」の感覚とゆるい雰囲気が特徴的。
この『どうにかなる日々』はそんな雰囲気で淡々と恋愛模様描かれる、一話完結の短編集。
面白いとかつまらないとかではなくて、志村貴子だなあとしか言えない。

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山川直人『コーヒーもう一杯』(第1巻-第2巻、ビームコミックス)

ISBN:4757723024
ISBN:4757727305

コーヒー豆を買ってきてコーヒーを淹れる習慣ができた私がタイミングよく出会った一作。
市井の人々のエピソードの中にコーヒーがある。
コーヒーのようにほろ苦く、コーヒーのように香りたち、コーヒーのように温かい連作短編集。
絵は全て手書きでかっちりと書き込まれていて、スクリーントーンは使われていない。
デフォルメされたキャラクターや記号は今時珍しく懐かしいタッチ。
木版画のようでもあり、コミカルで温かみがある。
昔読んだ永島慎二の『フーテン』を思いだした。

外薗昌也:作、別天荒人:画『ガールフレンド』(第1巻、ヤングジャンプ・コミックス)

ISBN:4088766237

外薗昌也が原作やってるやん、ということで買ってみた。
1エピソード完結の短編集だ。
シリアスな学園ラブストーリーを描こうとしているけど、どうにも居心地の悪さを感じる。
童貞的、オタク的妄想が拭いきれてなくて痛々しいというか気恥ずかしいというか。
あとがきを読むと外薗昌也にも自覚があるみたい。
成長して『 BOYS BE... 』に物足りなくなった人向けか。
ヤングジャンプがターゲットとしている読者層の需要にはマッチしているんじゃないかな。
別天荒人の描く女の子は爽やかさのなかにちょっと色気があってなかなか可愛い。

平野博寿『ガールガールボールシュートガール』(第1巻-第2巻、ヤンマガ KC)

ISBN:4063613801
ISBN:4063614786

珍しい女子サッカーものマンガ。
女子高校のサッカー同好会で細々と活動していた主人公、香織の前に、梅澤という寡黙なクール・ビューティーが現れる。
天才的なサッカー技術を身に着けている梅澤を部に招き入れ、ついに11人揃ったサッカー同好会。
サッカー部を設立し大会に出場することを目指して男子サッカー部に交流試合を申し込む。
梅澤を中心に実力を見せつけサッカー部設立を認められた彼女たちだったが、女子サッカーの強豪選手たちがその前に立ちはだかる……。

掲載雑誌がヤングマガジンということもあってキャラクターはみな美少女ぞろいで巨乳ぞろい。
無駄に胸や太ももや下着を見せる描写が多いのもやり過ぎの感が否めない。
だけど本筋のストーリーはなかなか熱い。
現実感はないけど、マンガと割り切れば楽しめる。

青木和雄・吉富多美:原作、オ・スギル:画『コミック ハッピーバースデー』(上下巻、金の星社)

ISBN:4323070667
ISBN:4323070675

児童書として書かれ文芸書版、アニメ版もあるベストセラー『ハッピーバースデー』のマンガ版。
原作は未読。

ストーリーは児童虐待といじめをテーマにしたもの。
11歳の誕生日に母親から「生まなきゃよかった」と言われたことをきっかけに、主人公の少女あすかは声が出なくなってしまう。
あすかと違い両親の期待を受けていた兄は当初あすかをバカにしていたが、あすかが心を閉ざして廃人同然になってもなお彼女を邪険に扱う母親の態度を見て失望。
田舎に住む祖父母のもとにあすかを預けることにする。
祖父母の愛情と自然に包まれて、あすかは心を開くようになり声と元気を取り戻す(上巻)。

学校に復帰したあすかだったが、クラスではいじめがはびこっていて、担任教諭もいじめに加担しているような有様だった。
あすかはいじめに立ち向かい、養護学校の少女との出会いと別れを通じて成長していく。
自分と正面から向き合い反抗する子供たちの姿を見て、あすかの両親も自分の非を受け入れるようになる。
12歳の誕生日、あすかは皆から祝福を受けるのだった(下巻)。

というわけでいかにも感動的なストーリーなわけだけどマンガとしての出来はよくない。
長い台詞が詰め込まれて説明的・演説的になってしまう場面が多く、読んでていちいちひっかかってしまう。
ページの制約がきつかったのかもしれない。
編集者はマンガ編集のプロではないように見受けられる。
マンガ雑誌の編集者ならネームを見てすぐ手直しさせるだろう。
長台詞の洪水の中で「みんないい人」になってしまう強引な展開には押し付けがましさと胡散臭さを感じてしまい、素直に受け入れられない。
マンガを担当しているのは韓国人だが、絵に若干の固さを感じるものの日本マンガの技術をしっかり自分のものにしている。
あすかのキャラクターデザインにもそこそこの「萌え」がある。
横書き(洋綴じ)マンガである点には違和感があるかもしれない。

ところで、上巻の帯には「100万人が泣いた」とあり下巻の帯には「120万人を泣かせ、癒した」とある。
上下巻の刊行は1ヶ月しか空いてないのに増えすぎ。
そんなに売れたんかなあ。

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さそうあきら『神童』(全3巻、双葉文庫)

ISBN:4575724912
ISBN:4575724920
ISBN:4575724939

『のだめカンタービレ』の前に読んでおこうと思ってたのに後回しになってしまった。
言わずと知れた……って知らない人の方が多いかもしれないけど、1999年文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞作。

名門音楽大学を目指しピアノの練習に励む主人公の青年、和音はある日、少年野球のピッチャーを務める小学生の少女に出会う。
快活で野球好きな彼女、成瀬うたは実は、類まれなピアノの才能を持つ天才少女だった。
うたの助力を得て主人公は見事志望大学へ進学。
うたもまた、音楽界の表舞台へと躍り出てその才能を世間に知らしめていく。
そのままうたは順調に国際的スターに成長すると思いきや、終盤は衝撃的な展開に。
そして物語は大団円を迎える。

『のだめ』の音楽描写に心が高揚してしまう人なら是非オススメ。


福島聡『6番目の世界』( BEAM COMIX )

ISBN:4757713843

90年代初頭、著者のマンガ家駆け出し時代の作品と近作を収めた短編集。
その一作『 UFO 』は山口県で少年に妻子を殺されて、夫が少年を死刑にしろと言ってるアレを思い起こさせます。

福島聡『 DAY DREAM BELIEVER again 』(全2巻、BEAM COMIX)

ISBN:4757717199
ISBN:4757717202

「モーニング」に連載されて打ち切りになった作品を完結させたもの。

博物館に勤める25歳の女性、日下部霞。
彼女は夜には体を売る仕事をしていたことがバレてしまい、博物館を辞めさせられてしまう。
そんな彼女にはクビに月型の「刻印」があった。
ある日、彼女のもとに同様の「刻印」を持った男二人が現れる。
彼らは超能力者で、その力を生かして旅をしながら犯罪を重ねて生きてきた。
霞は彼らの計略にひっかかり、自身の能力に気づかされ、家を捨てて彼らとともに旅に出る。
霞の能力とは、人が封印していた記憶を実体化させるというものだった。
一方、彼らが起こす不可解な事件に興味を持ったある雑誌記者が調査を始める。
そして霞と記者が出会ったとき、二人が封印していた記憶が蘇る。

結局二人はどうなったのか。
流される血は実体化された記憶、タイトルが示すように白昼夢なのか。
境界が曖昧なまま、物語は閉じられる。


ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』(第5巻、アフタヌーン KC )

ISBN:4063143937

夏の大会初戦が始まった。
しかし1巻で3回の表までしか行ってない。
しかも月刊連載。
ライフワークにするつもりなのか。

あびゅうきょ『晴れた日に絶望が見える』(バーズコミックススペシャル)

ISBN:4344802012

黒いベールで全身を覆った独身無職38歳のオタク男、「影男」。
絶望の中、町を彷徨う彼は不思議な女性たちに出会い、罵倒されていく。
作者が彼に示した救済は、身体を捨て魂を「靖国」に一体化することだった。
自虐とペシミズム、軍事オタクの精神に偏執的な描き込みがもたらす空間の迫力が魅力的な短編「影男」シリーズが半分。
残り半分は、女主人公が活躍する戦記もの短編。

妻を娶れず戦士として戦うこともできない男の人生に価値はなく絶望のみがある。
そして女は強く美しく、絶望独身男性は脆弱で醜い……という思想の徹底ぶりには清清しさすら覚える。
これは掘り出し物だわ。
作者の Web サイトに掲載されている文章も面白い。

あびゅうきょ『あなたの遺産』(バーズコミックススペシャル)

ISBN:4344803671

あびゅうきょという人は1980年代から細々とマンガを描いていたらしい。
まだ日本が絶望感に侵食されておらず、主人公の少女の無垢性に若い作者が希望を託していた時代の戦記もの短編集が本書。
第二次世界大戦時、アメリカ軍のB29により行われた日本空襲は、日本の神官の要請のもとで行われた破壊と再生の儀式だった――という凄い解釈が登場する。
絵柄が80年代してて懐かしいが、やはり偏執的な描き込みが特徴的。


あびゅうきょ『絶望期の終わり』(バーズコミックススペシャル)

ISBN:4344806492

再び「影男」シリーズである。
『晴れた日に絶望が見える』で靖国神社にたどり着き「死の拠り所」を見つけた影男だったが、国に殉じる手段もなければ教育も受けていない現代の絶望男性には「俗世」にも「死の拠り所」にも居場所はないと作者は言う。
そして影男は俗世と靖国神社の間を彷徨い続けるのだ。

作中、愛知万博の廃墟で「人類の死と絶望」をテーマに行われる万博「死・絶望博」の皮肉と悲観には大笑いするとともに切なくなった。


石川雅之『もやしもん』(第1巻―第2巻、イブニング KC )

ISBN:4063521060
ISBN:4063521265

世界初か、細菌をテーマにしたマンガ。

種麹屋の息子、直保は蔵元の息子、蛍とともに上京し、農業大学に入学する。
直保には細菌が肉眼で見えるという特殊能力があった。
祖父の紹介で細菌の研究を行っている樹教授と知り合った直保は、その能力を見込まれ研究室に出入りをさせられるようになる。
樹教授だけでなく先輩たちも癖のある連中ばかり。
そんな中で展開する直保の学生生活が描かれていく。

可視化された細菌たちのデザインと会話がコミカルで可愛い。
そしていかに細菌が我々の生活に満ちているか勉強になる。
細菌により人間にもたらされた恩恵の一つに酒があるが、作中に登場する酒が何よりうまそうだ。
酒好きには是非おすすめ。
ちなみにこの作品で紹介された地酒「龍神丸」、そして同じ蔵元でこの作品をきっかけに限定発売された純米吟醸生酒「かもすぞ」は注文が殺到して入手不可能。

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溜めすぎ。

倉知淳『猫丸先輩の空論』(講談社ノベルス)

ISBN:4061824465

毎度おなじみ、日常ミステリを猫丸先輩が鮮やかに解いてみせる。
その一編「子猫を救え」はちょっと萌え要素あり。

由紀草一『団塊の世代とは何だったのか』(洋泉社新書 y )

ISBN:4896917634

「団塊の世代」のライフステージの背景となった時代風俗を追い、彼らがその時代にどのように振舞ったのか、その足跡を辿っていく。
サラリーマンとしての「団塊の世代」について、『島耕作』と清水義範の『柏木誠治の生活』を引き合いに出し対比させて論じているのが面白かった。

鹿島茂『オール・アバウト・セックス』(文春文庫)

ISBN:4167590042

「性」に関する書物の書評コラムを単行本化したもの。
鹿島先生、商売が手広いですな。
書評を読むだけで「性」の奥深さにおなかいっぱい。

沖田雅『先輩とぼく4』(電撃文庫)

ISBN:4840229422

乗りかかった船ってことで、買い続けているシリーズの続刊。
この巻は夏のイベントの回。
花火大会、海水浴、無人島。

沖田雅『先輩とぼく5』(電撃文庫)

ISBN:4840230684

この巻は学園祭の回。
学園祭で「ぼく」は男装し「先輩」は女装する。
男性の自分が女性の先輩を愛し、女性の先輩が男性の自分を愛する、という可能性は肉体が入れ替わってしまったがために失われてしまった(シリーズ1巻)。
その失われた可能性をかりそめに復活させるとともに、決別を図ろうという試みである。

佐々淳行『連合赤軍「あさま山荘」事件』(文春文庫)

ISBN:4167560054

当時の現場指揮官だった著者の視点から事件の裏側を描いていく。
映画にもなった実録モノ。
作者含め事件解決に尽力した人々の功績を訴えたい気持ちは伝わってくるし、頭も下がるのだけど、年寄りに若い頃の手柄話、自慢話を聞かされているような感じが否めない。

東野圭吾『放課後』(講談社文庫)

ISBN:406184251X

東野圭吾のデビュー作となる密室ミステリー小説。
物語の語り手は、とある女子高に勤める男性教師。
東野圭吾というと淡々とした文体というイメージがあるけど、本作の主人公が感情が乏しい人間という性格設定だからか、やはり淡々とした文体。
不審な出来事に次々と襲われ、主人公は自分が何者かに命を狙われていると思うようになる。
そんななか、教員用更衣室で同僚の男性教師が殺される。
しかしその部屋は密室だった。
さらに体育祭の真っ最中に別の同僚の男性教師が殺されてしまう。

作中のとある箇所の描写を誤読してて、実はその誤読が密室トリックそのものだったのだけどそのままスルーしてしまっていた私。
自分の頭の悪さを再確認。
この殺人事件の「動機」については評価が分かれそう。
21世紀の学園では精神文化が変わってしまってて、この「動機」を抱いたとしても同様の殺人計画を立案実行することは困難じゃなかろうか。

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Amazon.co.jp の「この本を買った人はこんな本も買っています」を元に突撃してみるキャンペーン。

榛名まお『ぱわまゆ』(バンブー・コミックス)

ISBN:4812460115

ペットショップを営む姉の下で働く女の子、まゆを主人公に据えた4コママンガ。

作者名が個人的に懐かしい。
CG とペン画では印象が違いますな。

言っちゃあ悪いが何の変哲もない作品で、そのまま歴史の中に埋もれてしまうことでありましょう。
絵柄は可愛いし、つまらなくはないんだけど。

いずみ『ちょこパフェ』( 全2巻、まんがタイムコミックス)

ISBN:4832275097
ISBN:4832275402

パティシエになることを夢見る洋菓子屋の娘と、その同級生の和菓子屋の娘ら小学生の少女たちの日常を描いた4コママンガ。
最近流行の「萌え4コマ」という奴ですな。
どこかで見た絵柄だなーと思ったら、『貧乏姉妹物語』と同じ作者だった。

そこそこ毒のあるギャグと可愛い絵柄ってことで、萌え重視の人にはまあまあ悪くないのでは。

湖西晶『かみさまのいうとおり!』(第1巻、まんがタイムきららコミックス)

ISBN:4832275240

生徒の信仰する宗教を最大限尊重するという高校に通う少女たちの日常を描いた4コママンガ。
キリスト教の安倍まりあ、神道の鳥居くりこ、修験道の山伏実希代がメインキャラクター。
安倍まりあはすぐにエロい想像をしてしまい鼻血を噴出してしまうという設定で、ソフトな下ネタが多い。
さしずめ「萌えみこすり半劇場」といったところ。
それを面白いと思うかどうかは読者次第。

萌え4コママンガ雑誌「まんがタイムきらら」の看板作品らしい。

小箱とたん『スケッチブック』(第1巻‐第2巻、BLADE COMICS )

ISBN:4901926500
ISBN:4861271096

個人的に「大当たり引いた!」感あふれ大満足。
4コママンガでは今私が最もオススメする作品。
「月刊コミックブレイド」に2002年から連載中。

作品の舞台は北九州にあると思われる高校。
妙にゆったりペースな女子高校生、梶原空が入部した美術部は、彼女を含め個性的な部員揃い。
そんな彼女たちの日常を描いている。

4コママンガとして注目したいのは「間」の使い方が秀逸なこと。
『あずまんが大王』以来の感覚だ。
では学園4コママンガという点でポスト『あずまんが大王』となり得る作品か、というとちょっと趣が異なる。
あずまきよひこほどキャッチーな絵柄ではないし、女性の身体的特徴をネタにすることがない。
キャラクター性から取り出されるのは成分として萌えよりもギャグが強い。
本作では比率は少なめとはいえ男子部員も登場する。
共学校であるにも関わらず男子生徒を意図的に排除し、楽園的世界を構築していた『あずまんが大王』とはここでも違いがある。

本作が優れているのは、日常生活のちょっとした事柄を掬い上げてネタにするそのセンスだ。
その着眼点には「あるある!」と共感を誘われること間違いない。
また、作者は生き物についても造詣が深いようで、生物・植物ネタが数多く披露される。
それはしばしば登場人物が住む町に残る自然の風景に見出されるもので、作品世界に土のにおいと広がりをもたらしている。
これもまた、作者が切り出してみせる「日常」の一つの側面と言える。

作品傾向として二次創作という形で消費しづらいため、オタクの世界にブームを巻き起こすということはないだろう。
しかし口コミでじわじわ売れ行きを伸ばしていくタイプの作品だと思う。

荒井チェリー『三者三葉』(第1巻‐第3巻、まんがタイムきららコミックス)

ISBN:4832275119
ISBN:4832275313
ISBN:4832275526

真面目なメガネっ娘に見えるが腹黒い葉山てる。
明朗な性格で底なしの食欲を持つ小田切双葉。
大金持ちのお嬢様だったが今や没落し一人貧乏生活、クラスでは孤立している西川葉子。
氏名に「葉」のつく女子高生仲良し三人組の日常を描いた萌え系4コママンガ。

メインの3人のキャラクターが立っている。
人気が高そうなのはやはり「葉子様」だろうか。
お嬢様の言動を残しつつ健気に現実と戦うギャップが笑いを誘う。
絵柄は可愛らしくまとまっているし、ギャグも毒が効いている。
萌え系4コママンガの中ではオススメできる作品だ。

大井昌和 『風華のいる風景』(第1巻、まんがタイムきららコミックス)

ISBN:4832275283

4コママンガではなく、短編ストーリーマンガ。
表紙の絵の少女が「風華」なのだが、タイトルに名前があって更にカバーイラストに大きく少女の絵が描かれていれば彼女がヒロインであろうと誰しも思うはず。
しかし彼女はヒロインではない。
ストーリーには殆ど絡んでこず、街の通行人として一瞬現れるだけに過ぎない。
確かにそこにあり、人の心に影響を及ぼすこともあるが、大抵は通り過ぎるだけの風のような存在。
そういう意味では『風華のいる風景』というタイトルは正しい。
そんな風景のもとに登場人物が織り成す人情話を描いた作品。
ハートフルストーリーって奴ですな。

袴田めら 『最後の制服』(第1巻、まんがタイムきららコミックス)

ISBN:4832275410

これも短編ストーリーマンガ。
とある女子高の寮、1つの部屋に2名が割り当てられ生活する少女たち。
言葉にすることはないものの、彼女たちは同室の少女に友情を越えた好意を抱いている。
それぞれの秘めた思いが、ゆるやかに綴られていく。
ぶつかり合ったり、傷つけあったりすることなく、ひたすら密やかにしみじみと。
少女幻想、それもまたよし。

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ざちお『はねむす』(ダイトコミックス)

ISBN:4886534643

Web 上で連載されているマンガ『はねむす』を単行本化したもの。
Web なら無料で読めるから別に買わなくてもよかったんだけど、やはり本って形の方が読みやすい。
本書には第7話まで収録されている。

19世紀末か20世紀初頭のヨーロッパの田舎を思わせる村に住む一人の男のもとに、7歳の少女がやってくる。
彼女は彼の知己らしい「教授」と呼ばれる人物からの手紙を持っていた。
その手紙を読んだ彼は、父親として彼女を育てることにする。
「るり」と言う名のその少女の背中には、鳥のような翼があった。
そんな人間は、その村では「はねむす」と呼ばれ老人たちの信仰の対象になっているらしい。
とは言え、るりは普通の女の子と変わりない。
るりと彼女を温かく見守る人々の姿が、ほのぼのと描かれていく。

いやあ、るりは可愛いわ。
なんかこう、いじくりまわしたくなりますな。
しかしそういうことを口に出すと危険人物と思われる世知辛い世の中です。

きづきあきら『ぼくのためのきみときみのためのぼく』( Seed ! comics )

ISBN:4901978470

ぺんぎん書房が倒産したと知り、きづきあきらの既刊を急いで入手しようと試みたものの店頭在庫を入手できたのはこれだけだった。
古書でもプレミアムがついた値段になってます。

本書は同人誌で活動していた時代のきづきあきらの初期短編作品を集めたもの。
近親姦、主従関係、フェティシズム、ストーキングなど、少し歪んだ様々な性愛が描かれている。
センスの良さはビンビン感じるけど、切れ味は近作と比較するとちょっと鈍めかな。

魚喃キリコ『 blue 』( MAG COMICS )

ISBN:4838708963

7年間ずっと読もう読もうと思って果たせずにいたけど、やっと読んだ。
そのうち1年間は買ってから行方不明になっていたのだが……。

海に面した地方都市の女子高。
そこに通う桐島カヨ子は、同級生の遠藤雅美に恋をする。
心を通い合わせたり、傷つけたり、傷ついたり。
少女たちの特権的な一季節を切り取った物語。

背景は極力省かれ真っ白。
そこに精密な切り絵のようなシンプルな描線の平面的な人物が配置されて、少女たちの織り成す不器用で、儚くて、美しい心模様が静かに綴られていく。
画面に吸い込まれそうでちょっと怖くもあるけれど、名作ですな、これは。

比嘉富子, みやうち沙矢『白旗の少女』( BETSUFURE KCDX )

ISBN:4063414515

あまりにも有名な実話『白旗の少女』をマンガ化したもの。

1945年4月、激戦地となった沖縄で、家族とはぐれてしまった7歳の少女富子。
米軍に、あるいは味方であるはずの日本兵に住民が次々と殺されていく凄惨な光景の中、彼女は戦場を一人彷徨い生き抜いていく。

オチが分かってるのにクライマックスで目に涙。
この手の演出には弱いのよ私。

少女マンガ方面の絵柄で描かれる戦争ものってところで違和感はあるけれど、死体がゴロゴロ転がっている悲惨な場面をなかなか頑張って描いている。
こうやって幼い読者に戦争の悲惨さが語り継がれるのはよいことだ。
もちろん、単に「戦争は嫌だ」で思考停止してしまうのはダメだけど。

岡本一広 『トランスルーセント 彼女は半透明』(第1巻‐第3巻、MF コミックス)

ISBN:4840113181
ISBN:4840113238
ISBN:4840113505

体の一部、時には全部が透明になってしまう病気「透明病」に悩む中学生の少女、しずか。
演劇部に所属し女優を目指す彼女にとって、その病気はハンディキャップとならざるを得ない。
しかしガキで阿呆だが真っ直ぐな性格の同級生の少年、マモルによって彼女は励まされていく。
初々しくて爽やかな二人の純情ラブストーリー。

ちょっと朴訥とした絵柄が物語に似合ってる。
そして読みきり連載だからか、一話一話、大ゴマを使って盛り上げるのが上手い。
お気に入りは第2巻、新入生歓迎の寸劇を行う羽目になった生徒会長に、しずかが演技のお手本を示すシーン。

20年、30年前ならこういうお話は女の子向けって言われただろうな。
男性向けマンガの少女マンガ化、なんて言葉が頭に浮かぶ。

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西島大介『凹村戦争』(ハヤカワ SF シリーズ J コレクション)

ISBN:4152085568

「J コレクション」は SF 小説のシリーズだけど本作はマンガ作品。
第35回星雲賞アート部門受賞作、だそうな。

タイトルは「おうそんせんそう」と読む。
火星人が地球に攻めてくるというオーソン・ウエルズの有名なラジオドラマをモチーフにしたセカイ系青春劇だ。

舞台は外部から隔絶された寒村、凹村。
主人公は平坦な日常に嫌気が差している中学生の少年、凹沢。
登場人物たちにはすべて「凹」の字が含まれている。
ある日凹村に、X 字型の巨大な物体が墜落する。
遊星からの物体 X 、というわけだ。
それは火星人襲来の兆候。
凹沢はその物体に日常からの脱出を期待するのだが……。

SF 作品をパロディにしつつ、デフォルメが強くてポップで可愛い絵柄によって描かれる、テキトーであっけない世界の終末。
今時な世界認識の表明といった感じの物語。

いしいひさいち『ヒラリー・クイーン――大統領への道』(光文社文庫)

ISBN:4334736718

ヒラリー・クリントン、クリントン元大統領、ブッシュジュニア大統領といったワシントンの人々をおちょくった4コママンガ。
手堅い面白さ。

滝本竜彦, 大岩ケンヂ『 NHK にようこそ!』(第1巻‐第3巻、角川コミックス・エース)

ISBN:4047136360
ISBN:4047136816
ISBN:4047137154

滝本竜彦の小説のマンガ化。

ひきこもり歴4年という青年、佐藤達広。
彼の前に中原岬という謎の美少女が現れる。
彼女は佐藤がひきこもりから脱出するのをサポートするのだという。
彼女をあしらいつつ、ひきこもりから脱出しようと試みる佐藤だが、アパートの隣室に引越してきた高校の後輩とエロゲー作りを始めて挫折したり、自殺オフ会に巻き込まれたり、マルチ商法にひっかかったりと道化を演じてばかり。
果たして彼は社会復帰できるのか。
そして中原岬の正体は?
というお話。

進行がゆっくりなので、原作を読んじゃった。
マンガ版も悪くはないけど、原作の方がもっとおもしろおかしくて共感しまくり。
自殺オフ会やマルチ商法のエピソードは原作にない。
まあ、小説の単行本を2冊発表して後が続かない滝本竜彦が生活するのには、このスローペースはいいのかも。
大岩ケンヂの描く岬ちゃんの可愛さがマンガ版の魅力。

石田敦子『純粋!デート倶楽部 完全版』(上下巻、Beam comix )

ISBN:4757719086
ISBN:4757719094

デート倶楽部って言われると、ある世代から上はある種の抵抗感を覚える単語だ。
だからこそわざわざ「純粋」って付けてるんだけど。

主人公は女子大学生の掛井朱音。
男性向けマンガの主人公らしくリアリティのない子供っぽい女性。
彼氏に振られてしまった彼女は、大学の同級生から「デート倶楽部」に勧誘される。
その「デート倶楽部」とは、体に触れることは禁止、メンバーが依頼者の男性の望む仮想のデートを演じ、一緒に過ごすときめきを提供するというサービス業だった。
「デート倶楽部」での仕事を通じて、朱音や同僚たちそれぞれが抱えた恋愛模様が浮かび上がり、絡まっていく。
心に受けた傷とその回復を描いた物語。

いやーよかったよかった、と爽やかな読後感。
連載していた雑誌が休刊に次ぐ休刊で完結が危なかった作品だったらしいが、ここに見事完結、これまためでたい。

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Andy Riley『 The Book of Bunny Suicides 』( Plume )

ISBN:0452285186

生きるのが嫌になったらしいウサギが、ひたすらいろんな方法で自殺を試みるという一コママンガ集。
現実的ではない様々な自殺方法が披露され笑える。
例えば表紙の絵は、トースターに潜んで死の時を待っているというもの。
ほとんどのものは絵だけなので、英語が分からなくても大丈夫。
こういうセンス好きだわ。

金田一蓮十郎『アストロベリー』(第1巻、ガンガンコミックス)

ISBN:475751011X

宇宙人の青年、ベティは奴隷・ペット用のクローン人間を作って一攫千金を果たそうと、地球の女子中学生、まこの性格をコピーし二人のクローン人間を作った。
しかしその二人の性格は全く正反対。
原因を探ろうと、ベティはまこの家の隣に居を構え、クローン人間たちを使って調査に乗り出す。
そして地球人の常識をよく知らない上に元々奇人であるベティの行動に、まことクローン人間が翻弄される、というコメディ。

テンポよく勢いのあるギャグとツッコミが上手い。
続きを読みたいけど不定期連載だから、次の巻が出るのはいつになることやら……。

鈴木みそ『銭』(第1巻‐第2巻、Beam comix)

ISBN:4757715412
ISBN:4757719477

鈴木みそと言えば「ファミ通」でのエッセイ・ルポマンガで名高いが、本作は物語仕立ての作品。
事故で死んでしまい幽霊となった少年が、黄泉の国のオペレータと思しき女性とともにお金とは何かを探りに社会見学に出かける、という筋立て。
そこで様々な業界が如何にして金を稼いでいるかという裏事情が描かれていく。
第1巻では、マンガ雑誌、アニメ、コンビニエンス・ストア。
第2巻では、ゲームセンター、同人誌サークル。

第3巻が出てるな、買わねば……。

丸川トモヒロ『成恵の世界』(第1巻‐第5巻、角川コミックス・エース)

ISBN:4047133469
ISBN:4047133655
ISBN:4047134163
ISBN:4047134775
ISBN:404713516X

SF 学園ラブコメディ。
冴えない中学生の少年、和人が雨の日にダンボール箱に入れられた子犬の前で悩んでいると、突然中学生の少女が現れ子犬を撲殺。
「これは危険な改造宇宙生物」と言って笑顔で去っていく。
これがきっかけでその少女、七瀬成恵に魅かれ始めた和人だったが、彼女の正体は地球人の母と宇宙人の父を持つダブル。
成恵と交際を始めることに成功した和人は、成恵のその素性ゆえに様々な騒動に巻き込まれていく。

何年か前にテレビアニメとして放送されてて、成恵の姉が宇宙船に乗ってやってくる回だけ観たのを覚えている。
原作を読むとその時に抱いた印象とギャップがあって意外だった。
最初の方は成恵がツンデレ気味なキャラクターだったのが、和人にゾッコン(死語)になってどんどんイチャイチャカップル化して、逆に和人が翻弄されてしまうのね。
甘くてリリカルでほのぼの風味、なお話。

ちなみにタイトルの元ネタは『非(ナル) A の世界』。
そしてサブキャラクターの少女、八木は SF 本に目がないという設定。
作者の SF 好きが伺える。

古本屋で安く出てたので買ってみたけどなかなか良い買い物だった。
現状は第8巻まで出てるようだ。
追々買い進めることにいたしましょう。

佐藤 順一、紗夢猫『魔法使い Tai!』(全3巻、角川コミックス・ドラゴン Jr. )

ISBN:4047121908
ISBN:4047122009
ISBN:4047122238

これまた懐かしい代物。
10年近く前にビデオ売りのアニメとして発売された作品が原作のマンガ。
アニメ版は観たことないけどキャラクターは覚えてた。
魔法クラブというものが存在する学園で、魔法クラブの新米部員の少女が奮闘するというラブコメもの。
当時の萌え系作品に位置づけられるのだろうが、特筆すべきことはない。
絵柄が微妙に古臭い。
古本屋の100円均一コーナーに置いてなかったら、一生手に取ることがなかったかもしれない。

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倉知淳『日曜の夜は出たくない』(創元推理文庫)

ISBN:4488421016

黒い上着に身を包んだ神出鬼没、年齢不詳の青年「猫丸先輩」が、不思議な殺人事件の謎を鮮やかに解いてみせるという七つの短編を収めた本。
落語のご隠居みたいな語り口の猫丸先輩のキャラが立ちまくり。
本書の結末で明かされるメタフィクション的仕掛けにも唸らされてしまう。

倉知淳『猫丸先輩の推測』(講談社ノベルス)

ISBN:4061822721

またも登場、猫丸先輩の謎解き6編。
今度は「日常生活の中のミステリー」という奴で、人は死なない。

唐沢なをきにカバーイラストと挿絵を描かせようと考えた人は天才やね。

文庫版が2005年9月に出てます。

田中啓文『蹴りたい田中』(ハヤカワ文庫)

ISBN:4150307628

「蹴りたい背中」ではなくて「蹴りたい田中」。
このタイトルが暗示している通り、ひたすら下らない駄洒落をオチに持ってくる脱力系 SF 短編集。
ここまで徹底していれば許してしまえるかな。
爆笑というよりも終始苦笑という笑い。

佐藤忠男『映画の真実―スクリーンは何を映してきたか』(中公新書)

ISBN:4121016165

冒頭、「映画で現実が分かるか」という問いに「映画とは現実と美化の間を揺れ動くものである」という答えを置く。
この考えのもと、古今東西の映画を引き合いに出して映画が映し出しているものを論じている。
映画の見方、楽しみ方を広げてくれる好著だ。

橘木俊詔『日本の経済格差―所得と資産から考える』(岩波新書)

ISBN:400430590X

今(2006年)の国会で国民の経済格差の拡大の問題が取り沙汰されている。
小泉内閣の政策が経済格差を拡大させている、と攻撃されているわけだが、1998年に出版された本書で既に経済格差の拡大は指摘されていて、本書を元に考えるならば別に小泉内閣の政策を中止したところで物事は解決しないということになる。

本書で指摘されている経済格差の拡大というのは、所得、資産における不平等化である。
日本では年功序列の賃金制度による賃金格差があって、世代間に所得の不平等があるが、それが世帯構成の変化により拡大している。
資産の面では、バブル期に土地価格が大幅に上昇したせいで資産の流動性が弱くなっていて、相続税の安さもあいまって、土地を持つ者と持たぬ者との差が広がっている。
また、資産を多く持つ者は貯蓄や株やらで資産を増やしやすいが、資産を持たない者は生活に手一杯でなかなか資産を増やせないという格差がある。
格差を調整するための手段として租税負担と社会保障制度があるが、日本では税制の不平等度が高く所得再分配効果が低い。
逆に社会保障制度による所得再分配効果が高いという。

そうした分析から、本書ではロールズの格差原理を支持しつつ具体的に政策提言にまで踏み込んでいる。

本書出版後に実行されている政策はというと、世代間の所得の格差が解消されるほど年功序列の賃金制度が改まっていることもないし、税金は安いままだし、社会保障制度は「小さな政府」の名の下に弱体化されようとしている。
小泉内閣に責任を押し付けられるわけではないが、小泉内閣が不平等化を助長しているのは間違いない。
もちろん、大して税金を払ってないくせにすぐに国民負担増反対と煽動するマスコミとそれに踊らされる国民が馬鹿なのも間違いないが。

小谷野敦、斎藤貴男、栗原裕一郎『禁煙ファシズムと戦う』(ベスト新書)

ISBN:4584120994

ルサンチマンと粘着質に溢れる小谷野敦大先生が中心になってタバコ排斥運動に異議を唱える書。
「タバコの煙は駄目で何故自動車の排気ガスは許されるんだ」という小谷野大先生の論理は論点をすり替えてないかと思わなくもないが、そんなにタバコが害のあるものなら何故非合法化しないのかという指摘は私も常々思っていたことなので同意。
(もちろん非合法化しない理由も推測できるけど。)
疾病を引き起こす危険のある輸入牛肉、アスベスト、食品添加物、農薬なんかは禁止になる癖に、タバコがそこらじゅうで簡単に手に入るのは筋が通らない話である。
最近、医療機関における禁煙指導を健康保険適用にしようなんて動きがあるが噴飯ものだ。

非喫煙者と自称する斉藤貴男はタバコ排斥運動を、個人の行動を国家が管理・統制しようとする動きとして捉えて危惧している。
この視点は重要。


フランス・ドルヌ、小林康夫『日本語の森を歩いて フランス語から見た日本語学』(講談社現代新書)

ISBN:4061498002

キュリオリの発話理論をベースにフランス人の言語学者が日本語を読み解いている。
旦那さんが日本人(デリダやリオタールの翻訳やってる先生ですな)で、第一インフォーマントにして草稿のまとめ役、だそうな。
日本語の例文との対比としてフランス語の例文を挙げているので、よりよく理解するには大学の第二外国語程度のフランス語を知っている方がいいけども、知らなくても差し支えない。
言語というのは言語が話されるまさにその状況が中に組み込まれているものであり、発話者から構築されていく関係性の網である。
単純に単語の継ぎはぎ、組み合わせじゃないよ――ってのが発話理論。

たまには言語学もよろしいですな。
毎日だと「もうええやん、こんな細かいこと考えんでも」なんて気分になりがちだけど。

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谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』(角川スニーカー文庫)

ISBN:4044292019

帯には「『このライトノベルがすごい!2005』ライトノベル・ランキング作品部門 第1位」とデカデカと書いてある。
通販で買ったので全然知らなかったのだが、本屋に行ったらずらーっと『涼宮ハルヒの○○』というタイトルの本が並んでいた。
売れてるシリーズなのね。
この『涼宮ハルヒの憂鬱』は第8回スニーカー大賞大賞受賞作で、著者のデビュー作でもあるという。

物語は手堅く、高校生の少年「キョン」の一人称で語られている。
高校の入学式の日、彼のすぐ後ろの席の少女が自己紹介の場でこう言い放った。
「ただの人間に興味はありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
彼女こそ涼宮ハルヒ。
折角美少女なのに変人である彼女に何故か目を付けられた主人公は、無理矢理彼女に付き合わされて文芸部を乗っ取り新しいクラブを創設することになる。
世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団、略して「 SOS 団」。
その活動は宇宙人や未来人を探すこと。
その活動を通じてハルヒとキョンの周りに様々な少年少女たちが関わってくる。
しかしハルヒは全く気づいていなかった。
彼らは、主人公を除いて宇宙人や未来人や異世界人や超能力者だったのである。
非日常を求めながら自分が非日常の世界に居る事に気づかないハルヒと、彼女の知らないところで非日常に翻弄されるキョン、という構図で物語は進んでいく。

これもいわゆる「セカイ系」という奴に入るのかな。
日常への幻滅、倦怠というのはライトノベルの読者層の年代には共感できる心理で、それを物語の根幹に据えたこの作品はスイートスポットにすぱっとはまる。
それに加えて一気に読ませる力は看板に偽りなし。
売れるのももっともだ。
露骨にラブコメしてないのもよい。

ジャック・ケッチャム『隣の家の少女』(扶桑社ミステリー)

ISBN:459402534X

ぐわぁぁぁぁぁぁ!
私、子供が虐待される話って読んでて辛いんですホントに。

この小説は語り手である主人公が、その少年時代を悔悟とともに振り返るという形式のお話。
少年時代の彼の隣家に、両親を交通事故で亡くした少女メグが引き取られてくる。
主人公はメグに心魅かれるのだが、メグはその家の女主人に虐待され、虐待はどんどんエスカレートしていく。
主人公は傍観者の立場を脱することができないまま、事態は惨事へと向かう。

悪趣味だなあ。
救いが全くないわけではないけど、気分が滅入る。
しかしきっついのにどんどん読み進めてしまう魔力がある。

それにしてもこの表紙、怖いよう……(シルエット恐怖症)。

カレル・チャペック『山椒魚戦争』(岩波文庫)

ISBN:4003277414

1935年に書かれた SF 小説の古典。

赤道直下のある島で、不思議な海生の山椒魚が発見される。
彼らは人間に従順で知能が高く、教育すれば道具を使いこなしたり、言葉を話すこともできることがわかった。
人類は山椒魚を盛んに繁殖させ、優れた労働力として活用し始める。
それがどんな悲惨な結果を招くかも知らずに……。

核開発競争と「核の冬」の恐怖を予見したかのような傑作。

秋山瑞人『イリヤの空、UFO の夏』(全4巻、電撃文庫)

ISBN:4840219443
ISBN:4840219737
ISBN:4840221731
ISBN:4840224315

宣伝によれば、各巻12万部以上売れたというライトノベル。
2005年にビデオ販売のアニメーション作品にもなった。

現代日本と似ているがちょっと違う世界を舞台に物語は進行する。
自衛隊ではなく「自衛軍」と米軍の基地がある地方都市、園原市。
そこに住む中学生の少年、浅羽直之が主人公である。
彼は並外れた知力・行動力を持つが変人という新聞部部長の水前寺に付き合わされて、夏休みの間ずっと UFO を探すために市内の山中に篭っていた。
夏休みの最後の夜、山から家に帰る途中に浅羽は、浪費した夏休みを埋め合わせるために学校のプールに忍び込む。
するとそこには「イリヤ」と名乗る不思議な少女が居た。
泳げない彼女に浅羽は水泳を教えるが、程なく政府関係者か軍関係者と思われる男が現れ彼女を連れ帰ってしまう。

その翌日、彼女「伊里野加奈」は浅羽のクラスに転校生として現れる。
しかし伊里野は無口で表情に乏しく、同級生と交わろうとせず、浅羽としか関わろうとしない。
普段はリストバンドで隠しているが彼女の両手首には金属の玉が埋め込まれている。
突然鼻血を出して倒れるし、大量の薬物を持ち歩いているし、公衆電話でどこかへ頻繁に連絡を取っている。
学校を欠席したり、校内放送で呼び出されて早退したりすることも多い。
訓練のための抜き打ちの空襲警報に異常に反応し、機敏な動きを見せもする。
『新世紀エヴェンゲリオン』の綾波レイみたいな「新兵器のパイロット」という設定を匂わせつつ、浅羽と伊里野、そして彼らを取り巻く面々の物語が綴られていく。
徐々に浅羽や新聞部員と打ち解けていく伊里野だったが、その時間は長くは続かない運命だった……。

キャラクターやストーリーだけ見るといかにもライトノベルという感じ。
しかしそのキャラクターの動かし方が上手い。
電撃文庫というライトノベルのレーベルだから正直言って侮っていたのだけど、見かけとは裏腹に文章力が高くて驚いた。
1巻につき1話というわけではないが、1話完結的なエピソードを重ねることで全体的に物語が進む構成になっている。
この物語構成も巧みですっかり引き込まれてしまい、1巻を読み終わるとすぐに次の巻を買いに走った。

ちなみにここから先はネタバレ。
物語が佳境に入って浅羽は、伊里野と共に過ごすか、あるいは伊里野を犠牲にして世界を救うか、というジレンマに陥ることになる。
「セカイ系」ですな。
結末は切ない。

少し不満なのは、読んでて頭の中に思い浮かぶ登場人物の姿と、カバーイラストや口絵に描かれている登場人物の姿が一致しないこと。
私の想像力と趣味の問題なのかもしれないけど、どうしてもこのギャップを埋められない。
アニメ版も web サイトを見たところイメージが合わなくて、躊躇しているうちにオンライン配信が終わってしまった。

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窪田 般弥、滝田 文彦編『フランス幻想小説傑作集』(白水 U ブックス)

ISBN:4560070717

フランス幻想文学のアンソロジー。
収録されているのは、サド、バルザック、ゴーチエ、ボレル、ネルヴァル、ヴィリエ=ド=リラダン、モーパッサン、ロラン、シュペルヴィエル、ロブ=グリエ、クランなどの短編小説。
作家の数の豊富さとともに翻訳者の数も豊富。
クランの「怪物」に至っては SF で、意表を突かれた。

J. K. ユイスマンス『彼方』(創元推理文庫)

ISBN:448852401X

『さかしま』で薀蓄たっぷりに人工楽園を描いたユイスマンス。
本書では、ジル・ド・レの一代記を執筆する作家を主人公に据えて、オカルト、悪魔崇拝の世界を展開している。
「産業と科学の世紀」への反発を主人公に語らせるあたり、さすがユイスマンス。

藤野千夜『ルート225』(新潮文庫)

ISBN:4101164312

志村貴子がカバーイラストを描いているのに気づいて「ジャケ買い」してしまった本。

中学二年生の少女、エリ子の視点で物語は語られる。
彼女は母親の言いつけで、帰りの遅い中学一年生の弟、ダイゴを迎えに家を出る。
落ち合った二人だが、二人をとりまく世界は微妙に変わってしまっていた。
町並みが変わっていて家に帰れない。
ようやく帰ると家には両親がいない。
死んだはずの同級生が生きている。
ジャイアンツの高橋由伸が少し太っている。
疎遠になったはずの同級生が親しく話しかけてくる……。
二人はどうやら平行世界に迷い込んでしまったらしい。
果たして二人は元の世界に戻れるのか。

オチを期待すると肩透かしを食らう。
第1章が「ルート196」、第8章が「ルート225」と銘打たれているところからして、少女が14歳から15歳へと移ろい行く部分を描いたお話なのか。
性別の問題からか、その辺の心の機微というのはよく判らなくて、私はエリ子よりもダイゴに共感してしまうが、姉が弟に抱く感情というのはこんなものかなと納得するところもある。

倉田英之、スタジオオルフェ『 R.O.D―READ OR DIE YOMIKO READMAN“THE PAPER”』(集英社スーパーダッシュ文庫)

ISBN:4086300028

『かみちゅ!』の脚本家、倉田英之のライトノベル。
出版と近い時期にアニメ化されたりマンガ化されたりしてるようだけど、メディアミックス作品なのかな。

本作の主人公は大英図書館の工作員で、紙を自在に変化させ武器とする特殊能力を持った女性、読子・リードマン。
コードネームは「ザ・ペーパー」。
美人なのにお洒落には無頓着で、野暮ったいメガネをかけている。
重度のビブリオマニアで、工作員とは思えない天然ボケな性格、という設定。
そんな彼女が世界史の臨時教師として、日本の高校に赴任してくる。
その高校には、高校生にして売れっ子ジュブナイル小説作家の菫川ねねねがいた。
ねねねの才能に目をつけた謎の人物によって何通もの異常な手紙を送りつけられ、ねねねは不安な毎日を過ごしている。
ある日、その人物の命を受け、怪人がねねねを襲う。
ねねねの大ファンである読子はその能力を使い、怪人と一大バトルを演じる、というアクションもの。

紙を武器にする、という発想は面白い。
本を愛するあまりの読子の奇行は、本好きな人なら共感できるのではないだろうか。

読子が「ザ・ペーパー」になるにあたっては辛い出来事があったようなのだが、それはほのめかしに留まり、本作は「つづく」の一語で終わってしまう。
一話完結じゃなくて最初から連続ものを意図してるんだったら、タイトルに「1」って入れてくれればいいのに。

文章はテンポを重視してか読みやすいのだけど、他の小説を読んでから読み返すと「描写がスカスカだなあ」という感が否めない。

でもまあキャラクターは魅力的なので、そのうち続きを読もうと思っている。
もう半年以上経っちゃったけど。

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実際に読んだのは初夏あたりの時期。

カール・ブルノー・レイダー『図説 死刑物語―起源と歴史と犠牲者』(原書房)

ISBN:4562020768

死刑の起源と執行方法の歴史的変遷を記した本。
原著は1980年の出版で、本書は1989年に出た日本語訳。
翻訳者の手により図版が増補されている。

死刑に賛成か反対かという意見は保留して記述は進む。
終盤になってから、死刑に反対であるという著者の立場が明らかにされる。
著者によれば死刑制度の起源は人間の深層心理にある。
歴史的事実から見て、死刑には犯罪抑止力はないという。
そして理性的なものでない死刑制度は法によって正当化されるものではないと断ずる。

私自身は、人間というものは理性で全て合理的に対処できるほど高等な生物ではないと考えていて、感情の捌け口として、財政縮減の手段として死刑制度を必要悪だと思っている。
ただし、それは刑罰が原則死刑であるという限りにおいてのことで、それが出来ないというのであれば、死刑制度は即刻廃止して犯罪者の社会復帰の受け皿を徹底的に整備すべきだとも考える。

まあ、死刑制度に対する意見はともかくとして名著です。

ジェレミー・ヴィンヤード『傑作から学ぶ映画技法完全レファレンス』(フィルムアート社)

ISBN:4845902303

映像面での映画技法のハンドブック。
辞書的に1ページに1技法という感じに記されていて、手書きイラストによる作例が付く。そしてページの末尾に「この映画のここで使われている」と小さく言葉で実例を示している。

今泉容子『映画の文法―日本映画のショット分析』(彩流社)

ISBN:4882028700

これも映画技法のハンドブック的構成で、言及されるのは撮影技法限定だ。
戦前・戦後すぐあたりの日本のクラシック映画のスチル写真を挙げて解説を加えているのが特徴。
おかげで非常に理解しやすい。
映画入門書としていい本だと思うけど、いかんせん値段が高い。

催馬楽吉之丞『元店長が暴露するアキバ PC ショップの秘密』(毎日コミュニケーションズ)

ISBN:4839913781

秋葉原で PC パーツ屋の店長をしていた著者が、裏話や経験談を明かすという内容。
聞きかじりのフランス語を思い出してフランス人客の接客に当たったというエピソードが印象的だった。
日本語話せるのにフランス語で話しかけてくるなんて、フランス人らしい話だ(偏見)。
最後の1/3は秋葉原の情勢についての批評や店舗紹介記事だが、本書の出版は2004年1月だから変化の激しい秋葉原の町の現状とは合わない部分もあるだろう。

本書の欠点は表紙の下手な萌えイラストだ。
店頭で手に取るのは辛い。

hacksection『ソーシャル娘。萌絵ちゃんのスパイ大作戦』(データハウス)

ISBN:4887187971

ソーシャルハッキングの解説書。
前半の記述は物語仕立てになっている。
高校一年生にして凄腕ハッカーの少女、萌絵には大学生でネットゲーム廃人の兄がいる。
兄が同じゼミに居る女子学生に魅かれていることを知り、大好きな兄のために一肌脱ごうと、萌絵は兄にソーシャルハッキングの技術を教えていく……という内容。
後半は質問に対して萌絵が回答するという形式になっている。
本書で取り上げられている技術は尾行、トラッシング(ゴミ漁り)、盗聴、ピッキング、キーロガー、携帯電話のジャミング、Internet 上でのなりすまし、パスワードのクラッキングなど。

MMO の RMT で金を稼ぎ、読書に励み、七ヶ国語を身に付け、さらに肉体改造も行っている、と萌え妹キャラなイラストに反して設定が荒唐無稽で笑える。
しかし解説されている事柄はしっかりしたもの。
防御法の会得には攻撃法を知ることからって奴で、自己防衛のために知っておきたい。

プレスプラン編集部『タバコを吸わせろ!―喫煙者の喫煙者による、喫煙者のためのバイブル』(プレスプラン)

ISBN:4921132941

喫煙に対する昨今の情勢といったら、反対意見は一切許さないファシズム的で非常に気持ち悪いものだ。
そんな中で喫煙を擁護する言説を展開している本がこれ。
露悪的で堅苦しくない、軽い読み物である。
カバーを裏返すと「タバコをやめよう」という題の本に偽装できるおまけつき。

伊集院光、岸川真『球漫―野球漫画シャベリたおし!』

ISBN:4408612332

前半は伊集院光が自らの野球マンガ読者歴を披瀝しつつ、編集者岸川真と野球マンガについて熱く語り合う。
後半は野球マンガの名作を生み出した三人のマンガ家への伊集院光によるインタビューで、登場するのは『アストロ球団』の中島徳博、『ドカベン』『野球狂の詩』『あぶさん』の水島新司、『ストッパー毒島』のハロルド作石。
マンガ好きで野球好きの私にはヒットです。

みうらじゅん、伊集院光『 D.T. 』(メディアファクトリー)

ISBN:4840106193

みうらじゅんと伊集院光による、飲み屋のアホ話風の対談。
羞恥とともに隠蔽されがちな童貞的精神、または童貞的精神を保ったままでいる大人を「 D.T. 」と呼び、敢えて称揚してみよう――というのが本書のコンセプト。
サブカルチャーを軽妙に語らせれば一級品、の伊集院光とみうらじゅんが揃えばつまらないはずがない。
掬い上げられる数々のエピソードや知見は行動文化論的示唆に溢れていて、面白おかしくもあり興味深くもある。
ただ、10代で今まさに脱童貞への闘争に浸っている少年には、童貞というのはアイデンティティに関わる深刻な問題すぎて笑い飛ばせないかも。
既に20代、30代にあってもはや童貞でない読者が、過去の自分の行動と照らし合わせて笑いながら共感する――というのが一般的な読まれ方だろう。

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ISBN:4840220093

女子野球もの小説「若草野球部狂想曲」の本編は全3巻から成るが、サイドストーリーとなる短編集が存在する。
「若草野球部狂想曲」全3巻刊行後、ライトノベル雑誌の「電撃 hp 」に掲載された短編3本と、書き下ろし短編2本を収めた『若草野球部狂想曲 EX アンサンブル』(電撃文庫)だ。

1本目「サイレントハート」は若草高校野球部でも主人公の西宮光児に並ぶ頭脳的プレイヤーであり、謎の多い美少女でもある二塁手、夙川奈留緒の物語。
彼女が野球部に入部した経緯が描かれている。
何故彼女が頭脳的プレイに長けているのか。
一作目で、右打ちの彼女が左打席で難なくバッティングが出来たのは何故か。
その辺の疑問が氷解する。

2本目「マイフレンド」は二作目で助っ人として野球部に加入した一年生の遊撃手、伊奈市鈴音と、一作目から登場している一年生の外野手、服部・O・マリーの物語。
舞台は二作目で鈴音が野球部へ加わってから本番を迎えるまでの間の空白の二週間だ。
ブランクを埋めようと躍起になる鈴音。
マリーは新しいチームメイトを温かく迎えるが、マリーの優れた身体能力を前に鈴音は気後れしてしまい打ち解けることができない。
トレーニングに焦るあまり鈴音はマリーに八つ当たりをしてしまい、マリーも鈴音も深く傷つくことになる。
そんな二人の少女が友情で結ばれるまでの経緯を描いている。

3本目「猫と小夜美と無四球試合」は二作目で若草高校野球部が対戦した白桜学園高校野球部の物語。
ノーコンピッチャーの小夜美が、無四球ゲームを達成しなければならない賭けを行う羽目になった事件を描いたもの。

4本目「キャプテン八木沢」は若草高校野球部のキャプテンのはずなのに、非常に影が薄い遊撃手、八木沢勝彦の物語。
堅実な守備力を持った彼だが、女子部員にも劣るバッティングが欠点。
何とかバッティングを向上させようと奮闘する八木沢に光明は訪れるのか。
短編らしく小気味よい一作。

5本目「夏の彼方に ~ Last ball ~」は西宮光児が若草高校に転校する直前の夏休みの物語。
三年生部員が引退する前なので、若草高校は公式戦に出場できるメンバーがギリギリ揃っていた。
夏の全国高等学校野球選手権大会の地方予選第一回戦に出場した若草高校は、三年生のキャプテンにしてエースピッチャーの戎行信が打ち込まれコールド負けしてしまう。
結局彼は公式戦で1勝も出来ずに野球部を引退することになった。
夏休みを無気力に過ごす戎。
同じく野球部を引退した三年生で若草野球部の女子部員第一号である一ノ谷真綾は、そんな彼の姿を見かねて後輩を巻き込み一計を仕掛ける。
この短編集と、「若草野球部狂想曲」シリーズを締めくくるにふさわしい一作だ。

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『花咲くオトメのための嬉遊曲』を当サイトで紹介した際、「女子野球もの」の作品をいろいろ列挙したが、賢明な方はその中に小説が一つもなかったことに気づいたことだと思う。
私は小説を読む習慣があまりなかったので知らなかったのだが、小説の世界にも「女子野球もの」の作品があったのだ。
今年の春、『花咲くオトメのための嬉遊曲』をクリアしてからシナリオ担当者の web サイトなどを辿っていると、彼の書いたある書評を目にした。
その一節で初めて女子野球もの小説『若草野球部狂想曲』の存在を知ることになったのである。
いつかまとめて書かなきゃな、と思いつつも紹介するのをサボっていたのだが、『花咲くオトメのための嬉遊曲-イレギュラーズ』の発売を前にようやく手をつけた。

一色銀河『若草野球部狂想曲 サブマリンガール』(電撃文庫)

ISBN:4840214131

「第6回電撃ゲーム小説大賞」の銀賞を受賞し電撃文庫に収められて出版されたというのが『若草野球部狂想曲 サブマリンガール』だ。
電撃文庫、ということだから対象読者は10代から20代の男性で、アニメ風のイラストが表紙にあって、美少女キャラクターがいて、ラブコメで、肩肘張らずに読める――と頭に浮かぶが、その予想は正しい。
だが、なかなかどうして、エキサイティングに野球というスポーツを描いた楽しい作品であった。

主人公は夏の全国高校野球選手権大会で準優勝に輝いた超高校級のキャッチャー、西宮光児。
高校二年生の彼はある事情から、所属していた高校を退学。
神戸の若草高校へと転入する。
プロを目指している彼は「何もせずにブラブラするよりかはマシか」と考え若草高校の野球部に入部することにするが、その野球部は部員が9名しかおらず、しかもそのうち4名は女子のため公式戦に出場できないという弱小野球部だった。
さらに実績のない部活動を整理するという学校の方針のため、一ヵ月後の練習試合に勝たないと廃部になるのだという。
その練習試合の相手というのが、先の全国高校野球選手権大会で光児が敗れた優勝校、神戸学園だった。

野球部の救世主として祭り上げられる光児だったが、彼はそこで一人の女子ピッチャーを見出す。
彼女の名は文月真由美。
ピッチャーとは思えない、引っ込み思案で大人しい少女。
右投げのアンダースローで、最高球速は120km/h。
女子でアンダースローということを考えれば速い球を投げているといえるが、これで高校野球優勝校の打線を抑えられるのか?
だが、光児は彼女を主戦に立て、神戸学園に挑むことにする。
彼女特有の才能と、彼女のピッチングが持つ恐るべき特徴に活路を見出したのだ。
アンダースローという投法であるがゆえに可能な「変化球」と配球を武器にする、と言えば野球に詳しい人は気づくかもしれない。
皆の目の前からボールが消えるような荒唐無稽な魔球は登場しない。
あくまで合理的な野球理論に基づいて、若草野球部の活躍は描かれることになる。

今では千葉ロッテマリーンズのアンダースローのピッチャー、渡辺俊介の活躍が注目を浴びているので意外性は薄いかもしれないが、渡辺俊介がまだ無名のアマチュアピッチャーであった2000年にこの作品は刊行されている。
作者はなかなか目の付け所がよかったと思う。

本作では「野球のルールくらいは知っているけど理論は知らない」という一般読者でも作品に馴染めるように、途中でラジオ番組の掛け合いのようなインターミッションが入る。
そこで野球の薀蓄が語られることになる。
野球マニアには判りきった初歩の薀蓄なので、私なんかはいちいち説明されることに鬱陶しさを覚えてしまうことは否めない。
しかし電撃文庫の小説の読者は野球マニアばかりではないのだからやむを得ないだろう。
それよりも鼻につくのはベタベタなラブコメ描写だ。
一例を挙げるなら光児が初めて野球部を訪ねるシーン。
光児がドアを開けると丁度女子の着替え中。
覗き魔と間違えられた光児は投げ飛ばされてしまい、彼の下敷きになった真由美と唇同士が触れ合ってしまう。
ここで光児はバットで頭を殴られてしまうが、別に怪我をすることはない。
何てマンガチックな。

とはいえ、野球シーンがエキサイティングに描かれているから全て許す。
誤字が校正されずにそのままなところは所詮電撃文庫か、と思ってしまうが許す。

そもそもこの作品、続編が刊行されているということから見ても結末はバレバレである。
「ご都合主義に陥らずに、バレバレな結末へ如何に至るか」というところに作者は知恵を絞る必要があるわけだが、その辺を野球マニアでも納得できるよう、きっちりと処理できている。
野球マニアでない人でも野球というスポーツの奥深さを覗くことのできる、優秀な作品である。


一色銀河『若草野球部狂想曲2 クイーン・オブ・クイーンズ』(電撃文庫)

ISBN:4840216819

続編である。

若草高校野球部は、女子高校硬式野球大会の優勝校、白桜学園とエキシビション・マッチを行うことになる。
女子の非力さを克服するために ID 野球を身につけている白桜学園野球部。
彼女たちには、真由美・光児バッテリーの投球術も看破されてしまう。
苦戦を強いられる若草高校野球部は如何に戦うか――。

光児の幼馴染、月山小夜美が白桜学園の主戦ピッチャーとして登場し、相変わらずのラブコメを展開する。
しかし若草高校野球部に新たに加わった女子部員を巡るエピソードによりドラマ性が向上。
野球の薀蓄もよりマニアックになって楽しく読める。
作者の成長が微笑ましい。

一色銀河『若草野球部狂想曲3 スプリング・ステップ』(電撃文庫)

ISBN:4840217831

『若草野球部狂想曲』シリーズ完結篇。

春季合宿に出た若草高校野球部だったが、部のリーダー的存在である春野亜季の気分は晴れない。
彼女は女子である以上、どう頑張っても公式戦には出場できないのだ。
若草高校野球部の活躍を聞いた新入生が入部してくれば、女子部員はお払い箱になる。
しかし親友の真由美は光児の指導に盲目的に従うばかり。
焦燥感に駆られた亜季は光児と対立してしまう。

折りしも合宿先の旅館を経営する一家には、150km/hを超える速球を投げるサウスポーの高校生、有馬大志がいた。
光児は、大志の所属する地元の若狭常陽高校野球部と練習試合を行うことを決める。
亜季が若狭常陽高校の一員として練習試合に参加し、負けた方が若草高校野球部を去るというのだ。
果たしてこの勝負の結果や如何に。

――と言われてもおよそ見当がつくだろうが、盛り上がった勝負の末に爽やかに大団円を迎えるのである。
めでたしめでたし。

こうして三作を読み終わると、面白い作品だったなと満足感でいっぱいだ。

美少女キャラクターが活躍して華やかだし、次がどうくるかワクワクするゲーム展開にページをめくるのが速くなる。
素人考えだが、このままマンガ化しても十分行けそうな気がする。
無名のまま埋もれさせるのは惜しい。
失礼ながらこのシリーズの挿絵絵師はちょっと古臭さのある絵柄の人なので、もうちょっと今風のキャッチーな萌え絵を描く人が作画を担当したらブレイクしませんかね。
厳しいかな、野球のゲームをマンガで描くと長期連載になるし……。

蛇足だが他に女性が活躍する野球小説には、『赤毛のルーキー』という作品があるらしい。
アメリカのメジャー・リーグで女性のピッチャーが大活躍するというもので、1970年代末に日本でも翻訳本が出版されたようだ。
また、1986年に梅田香子の『勝利投手』という作品が河出書房新社から世に出ている。
ISBN:4309004555
ISBN:4309402364

ただし絶版である。

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二ノ宮知子『のだめカンタービレ』(第2巻―第7巻、講談社コミックキス)

ISBN:406325982X
ISBN:4063259935
ISBN:4063404110
ISBN:4063404234
ISBN:4063404382
ISBN:406340451X

amazon.co.jp にばっかり金を落とすのは既存の書店が可哀想だと思って、『のだめ』はオフラインの書店で買うことにしている。
有名過ぎるけど一応説明しておくと、音大を舞台にしたコメディ。
吹奏楽をやってた頃の楽しさやしんどさを思い出させてくれる。

羽海野チカ『ハチミツとクローバー』(第1巻―第7巻、クイーンズコミックス)

ISBN:4088650794
ISBN:4088650808
ISBN:4088651073
ISBN:4088651111
ISBN:4088651391
ISBN:4088652037
ISBN:4088652738

2005年に入ってブレイクした『ハチクロ』。
美大を舞台にした青春若者群像的ラブコメディだ。
『のだめ』と同じく「本屋でちまちま買っていくぞ」と妙な決意で買い進めている。

連載されている雑誌は女性向けなのに、すんなり嵌れてしまう。
女性向けの恋愛マンガを読むとかなり疲れるんだけど『ハチクロ』は全然疲れない。
主に男性視点の成長物語的だったり、みんなが片思いで修羅場が生まれなかったり、コミカルな描写で中和されたりするからか。

TV アニメの DVD もコツコツ買い進めております。

水木しげる『総員玉砕せよ!』(講談社文庫)

ISBN:4061859935

太平洋戦争末期、南太平洋における日本軍の凄惨な戦いが、著者の実体験と創作とを交えて語られる。
そこには戦争の大義だとか愛国心だとかに酔う余地はない。
兵士たちは虫けらのように死んでいく。
水木しげるの飄々とした絵柄が一層それを際立たせている。
自衛隊を解散しろなんて言う気は更々ないけれども、戦争は嫌だ、と素直に思う。
よしんばあの戦争が欧米の帝国主義から生き残るためのものであったと正当化するにしても、自国民の命を無闇に失わせたという責任は追及されるべきだろう。

石田敦子『アニメがお仕事!』(第1巻―第3巻、ヤングキングコミックス)

ISBN:4785924608
ISBN:4785925132
ISBN:478592571X

石田敦子って聞いたことのある名前だなと思ったら、TV アニメーションの『魔法騎士レイアース』のキャラクターデザインをやってたあの石田敦子だった。
アニメ業界を離れてマンガ家に転向してたんだなあ。
そういうわけで勝手知ったるアニメ業界を舞台に、アニメーターとして働く双子の姉弟の成長と恋愛模様を描いているのがこの作品。
さすが作画技術は大したもの。
広島カープのファンで広島弁が随所に現れる主人公(姉)には個人的に萌えます。
石田敦子って福山の出身なのね。
その縁なのか、同じく広島県出身で広島カープのファンのこうの史代が本の帯に推薦文を書いている。

作中、再放送の『天才バカボン』を観た小学生が主題歌を歌っていることから、アニメーターの一人が救われるというシーンがある。
それは作者が若かった頃の実体験に基づいているらしいのだが、その時の小学生って、ちょうど私くらいの年代じゃなかろうか。
私も小学生の頃よく観てて、『元祖天才バカボン』の哀感漂うエンディングテーマは結構トラウマなのだ。
何だか勝手に因縁めいたものを感じてしまう。

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意外に量が多くて二つじゃ収まりそうにない。

志村貴子『敷居の住人』(全7巻、Beam comix )

ISBN:4757702116
ISBN:4757701314
ISBN:4757701322
ISBN:4757701772
ISBN:4757703775
ISBN:4757706944
ISBN:4757709714

主人公のちあきは、髪を緑に染めタバコを吸いゲームセンターに入り浸る中学生。
童顔の美少年で女子生徒の人気絶大だが、本人は気にも留めていない。
ある日ちあきはゲームセンターの対戦格闘ゲームで、キクチナナコという美少女に出会う。
また、ちあきの学校に彼と瓜二つの顔の教師、兼田が赴任してくる。
兼田に恋するキクチナナコ。
キクチナナコに恋する主人公の友人、村上。
ちあきに恋する同級生、中嶋。
ちあきと知り合う少女、ゆか。
親しくなってちあきが恋心を抱いたのも束の間、狙いは村上だった少女、安達。
傷ついたり傷を舐めあったりする少年少女たち。
彼らに囲まれながら、ちあきはひたすらウジウジと中学・高校生活を過ごしていく。
端正な絵柄で脱力感のある独特な雰囲気のなか語られる物語。

坂口尚『 VERSION 』(上下巻、講談社漫画文庫)

ISBN:406260874X
ISBN:4062608812

梅田の紀伊国屋書店の隅っこに潮出版社版がひっそり売られてて、買わなきゃなーと学生の時から思ってたのに随分と時が経過してしまった。
いつの間にか文庫版が出てるやん、と気づき購入。

学習・記憶し自己増殖を行うバイオチップ「我素」の開発者が「我素」を持ち出し失踪。捜索依頼を受けた私立探偵は開発者の一人娘と出会い、共に彼の行方を追う。
さらに「我素」が人類を新たな段階へ導くものとし、「我素」を手に入れようと謎の教団が二人の前に現れる。
その中で浮かび上がってくるのは人類に繁栄と苦悩の両方をもたらした「自我」と「言葉」の問題なのだった。
そんな壮大なテーマを描いた SF 長編作品。
人類の知のルーツを語っている点では『2001年宇宙の旅』を、人間の自我とコミュニケーションをめぐる物語という点では『新世紀エヴァンゲリオン』を思い出させてくれる。

坂口尚『12色物語』(講談社漫画文庫)

ISBN:4063603873

12の色のイメージから生み出されたという12本の連作短編集。
「珠玉の短編」って言葉はこの人のためにあるね。
坂口尚の長編作品は人類全体を見据えてて、ある種の説教臭さがあるけれど、それが苦手って人にはこちらがお勧め。

坂口尚『坂口尚短編集』(第1巻、チクマ秀版社)

ISBN:4805003731

剣と魔法の世界じゃない方のファンタジー的作品が多く収められている。
1970年頃、芸術マンガといった感じの感覚的・文学的表現が模索されていた時期の作品もあって興味深い。
全巻揃えたいけど高いのよね。
その代わり紙はマンガ本においては最高クラスだと思われる上質なものが使われてて、永久保存版ではある。

小栗左多里『ダーリンは外国人』(第1巻、第2巻、メディアファクトリー)

ISBN:4840106835
ISBN:4840110328

外国人の男性と事実婚をしている著者のエッセイマンガ。
外国人と暮らすことによるカルチャーギャップよりも、国籍・民族に関係なく夫のトニーの愉快なキャラクターが面白さの主因じゃなかろうか。

安野モヨコ『ラブ・マスター X 』(上下巻、宝島社文庫)

ISBN:4796619631
ISBN:479661964X

閉塞感のあるニュータウンを舞台に様々な恋愛模様が絡み合う。
それは舞台同様、実は極々狭い範囲の人間の間で生まれた恋愛の坩堝だった。
怒涛のテンポで動いていく物語に突き動かされて一気に読んでしまった。
実は安野モヨコのマンガは『働きマン』くらいしか読んだことがなかったのだけれど、こりゃ大した技量だわ。

雁えりか 『バンパイアドール・ギルナザン』(第2巻、ZERO-SUM コミックス)

ISBN:4758051437

ギャグあり、感傷あり、の2巻目。

ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』(第4巻、アフタヌーン KC)

ISBN:4063143848

いよいよ夏の甲子園の第一試合が始まるってところでこの巻は終了。
アフタヌーン本誌はすっかり読まなくなっちゃったんで、第5巻が出るのが楽しみ。

あずまきよひこ『よつばと!』(第4巻、電撃コミックス)

ISBN:484023163X

相変わらずいい仕事してますな。

あずまきよひこ『あずまんがリサイクル』(電撃コミックス EX )

ISBN:4840218617

あずまきよひこが『あずまんが大王』でブレイクする前、アニメ『天地無用!』『バトルアスリーテス大運動会』のビデオなどの付属冊子に描いていたマンガをまとめたものの再版。
元ネタ作品のキャラクター設定の知識はあったのでそこそこ楽しめたが、知らない人には辛いだろう。
『あずまんが大王』に通じる雰囲気はしっかり備えているので、『あずまんが大王』ファンはコレクターズアイテムとして持っていてもいいと思う。

陸奥A子『ハーパーの秘密 陸奥A子 collection 1』( YOUNG YOU 特別企画文庫)

ISBN:4087851370

1990年ごろの作品。
陸奥A子の乙女チックなマンガに触れた少女が20歳そこそこになったけど、まだ乙女チックなところに留まっている――そんな読者を対象にしているような感じ。
2005年の現在にあっては、この作品に描かれるような女性たちは現実感に乏しくて、同年代の女性の共感は得られないんじゃないかな。
ただ、だからこそ私みたいに少女幻想に逆行しがちなオタクでも抵抗なく読めるのだが。

陸奥A子『紙のお月さま 陸奥A子 collection 3』( YOUNG YOU 特別企画文庫)

ISBN:4087851400

古本屋には「1」と「3」があって間の「2」は欠けていた。

森真之介『HAPPY・LESSON ママ先生は最高! 』(第1巻―第2巻、電撃コミックス)

ISBN:4840222428
ISBN:4840225060

柔らかくて可愛らしい絵柄だったので古本屋で「ジャケ買い」してみた。
天涯孤独な高校生である主人公に同情して、5人の若い女性教師が母親代わりに同居を始める――という終末感漂う設定。
しかもそこに至る経緯は殆ど説明がされない。
仕方ないので調べてみると「電撃 G's マガジン」の企画が原作で TV アニメにもなった作品らしく、このマンガはその原作設定を元にマンガ化したものらしい。
なるほど、『シスタープリンセス』みたいなものか。
それぞれのキャラクターに萌えれればそれでよし、ってことね。
同じ職場の同僚と生活を共にするのに葛藤はないのかとか、職員5人が同じところに転居したら事務員経由で学校にばれるぞとかいうツッコミはするだけ野暮なのだ。

続きがあるらしいのだが単行本第3巻は未刊。
折角だから続きを読みたいのに……売れなかったのかな。

原作:片山恭一、作画:一井かずみ『世界の中心で、愛をさけぶ』(フラワーコミックススペシャル)

ISBN:4091382738

こいつも古本屋で見つけたので買った作品。
原作は言わずもがなの大ヒット作だけど、私は原作の小説を読んでいないし、映画版も TV ドラマ版も観ていない。
大衆迎合は嫌だ、みたいな中学生じみた感情があって、原作は古本屋の100円コーナーに並んでるのを見つけたら買おうと思っている。
有名作品だけに「恋人が不治の病で死ぬ」という筋書きらしいとは聞いていた。
映画『劇場版 AIR 』の感想で「セカチューの二番煎じ」「不治の病ものは食傷」なんて言う人もいたし。
しかし私は『 AIR 』の方が原作も映画も好きだ(ちなみに『 AIR 』の原作は2000年発売、『世界の中心で、愛をさけぶ』は2001年発売)。
原作の小説はもっといいのかもしれないけれど、少なくともこのマンガ版では切なさを感じこそすれ、あまり心を揺さぶられなかった。
ヒロインを病院から連れ出して結局死期を早めるだけに終わり、しかもその行動の馬鹿馬鹿しさに屈託のない主人公には興醒めしてしまう。
不治の病→病院脱出という物話の展開上、どうしても『 narcissu 』と比較してしまうのだが、『 narcissu 』の方が断然グッと来る。

『世界の中心で、愛をさけぶ』『 AIR 』『 narcissu 』を三つ並べて思うのは、男はヒロインの死に際して、とことん無力だということだ。
『 AIR 』の原作では主人公は鳥となってヒロインに殉じ、映画版ではヒロインの「ゴール」を見届ける。
『 narcissu 』では、もはや恋愛すら発生せず、ヒロインは自ら人生を選び主人公はそれを見届ける(そして主人公も早晩死ぬことになっている)。
男って悲しいな……。

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量が多いので二つに分けます。

小村あゆみ『ハイブリッドベリー』(第二巻、マーガレットコミックス)

ISBN:4088478444

男子に混じって実戦で野球をやることになったヒロイン。
全くの素人だった彼女が、彼女ならではの無茶苦茶なやり方で守備に打撃に開眼。
初の対外ゲームも盛り上がって終了し、マネージャーも加わって、いよいよ甲子園目指して公式戦が始まるのだが……この巻であっさり完結。
全国高校野球に女子生徒は出場できないから当然だけど。
この作品で野球の面白さを知る女の子が少しでも増えてくれたらうれしいな。

こうの史代『ぴっぴら帳』(アクションコミックス)

ISBN:4575937002

「ぴっぴら帳」と書いて「ぴっぴらノート」と読む。
『夕凪の街 桜の国』でブレイクしたこうの史代の作品。
風呂なしアパートで貧乏暮らしな20歳前後のヒロインとインコの「ぴっぴらさん」が共に過ごす日常を描いた4コママンガである。
スクリーントーンを殆ど使わない、どこか懐かしい感じの絵柄がほのぼのした空気を醸し出している。

こうの史代『ぴっぴら帳 完結編』(アクションコミックス)

ISBN:4575938904

『ぴっぴら帳』の第二巻目にして完結編。
いきなり装丁も厚さも一変してます。
ラブコメ度がアップ、ジャンボセキセイとカナリアが加わってギャグもアップ。

こうの史代『こっこさん』(宙出版)

ISBN:4776791277

小学生の女の子、やよいはある日の帰り道にニワトリに出会う。
彼女はそのニワトリに「こっこさん」と名づけて飼い始めるが、可愛げの欠片もなく凶暴で傲慢なこっこさんに振り回されるばかり。
そんなやよいとこっこさんを中心に展開するドタバタコメディであり、ちょっと心温まる日常ドラマでもある。
コマの使い方のうまさは流石、キャリアの長さを感じさせる。

こうの史代『長い道』(アクションコミックス)

ISBN:4575939625

甲斐性なしで貧乏な男、荘介のもとに、いきなり道という名の女性がやってくる。
酔った勢いで彼女の親が二人の結婚を決めてしまったのだ。
何故か結婚を受け入れている、暢気で変わり者の道。
道は全然好みのタイプではないが家事要員に使えると思い結婚を承諾した荘介。
基本は緩やかに流れる二人のおかしな夫婦生活を描いた1話4ページほどのコメディ。
しんみりした展開になったかと思えばオチがつく。
だけどどこかノスタルジックでもあり切なくもある。
もはや職人芸と言っていいだろう。

田中ユキ『神社のススメ』(第1巻-第2巻、アフタヌーン KC)

ISBN:406314366X
ISBN:4063143856

神社の神職として働き始めた青年を主人公にしたラブコメディ。
一般になかなか馴染みのない神社という業界の内情が描かれていて勉強になる。

おりもとみまな『魔法少女猫 X 』(全2巻、角川コミックスドラゴン Jr.)

ISBN:4047123803
ISBN:4047123935

ロリコンエロマンガかと見紛うカバーイラストで、部屋に連れ込んだ女性の目に触れれば退かれまくること必至。
出版にあたって出版社の内部規定に引っかかり、編集者に台詞を改変されたことを作者が自らの web サイトで公開して話題になった。
基本はエロ度の高いラブコメギャグ。
突然変異により人間の姿で生まれる動物「獣人」が社会に溶け込んで暮らしているという設定で、表紙の少女はあくまで主人公の飼っている「猫」である。
女の子が首輪をつけられようが、乳が出ようが下半身が丸出しになろうが、動物だから許される。
動物だから人権はなく、主人公が平気で彼女の顔面を拳で殴ったりエルボードロップを入れたり、ボディーブローを入れるのも大丈夫。
……ということなのだが、暴力はあまり愉快なものではない。
成人指定のない雑誌・単行本で流通してしまうのはちょっとまずいような気がする。

大高忍『すもももももも ~地上最強のヨメ~』(第1巻-第2巻、ヤングガンガンコミックス)

ISBN:4757514441
ISBN:475751509X

押しかけ女房もののラブコメディ。
主人公は武術家の名家に生まれながら、武術をせず検事を目指す普通の高校生。
しかし武術家の親同士の勝手な約束で、可愛らしい外見とは裏腹に常人を超える戦闘力を持った少女、もも子を許婚として迎えることになってしまう。
一方的に主人公に惚れこんでいるもも子に煩わされる中、さらに彼は武術家の勢力争いに巻き込まれ、刺客に命を狙われる羽目になる。
テンポのよいギャグと、萌えを誘う女性キャラクターたちが魅力的。

秋山はる『すずめすずなり』(第1巻、アフタヌーン KC)

ISBN:4063143864

「朝6時半に住人一同が集まって朝食を摂る」という奇妙なルールのあるアパートに入居した主人公と住人たちの人間模様をコメディタッチで描いている。
職場の女性に恋して足掻く主人公と、主人公に恋する大家の娘(中学生)の運命やいかに。

水兵きき『みかにハラスメント』(ガンガンコミックス)

ISBN:4757513933

ヒロインが半裸で生活させられたり、犬耳・首輪をつけられて犬の格好をさせられたり、幼児服やおむつを着せられたりする表題作は少年誌に掲載されたとは思えないほどエロマンガ風味。
ってことで発売直後は印刷部数が少ないところへ客が殺到したので、入手困難だった。

やぶうち優『ないしょのつぼみ』(第1巻、ちゃおコミックス)

ISBN:4091370799

小学5年生の女の子、立花つぼみを主人公にした性教育マンガ。
学習雑誌の「小学五年生」に連載された作品だから対象読者はまさに主人公と同じ。
つぼみと彼女の友人たちの恋心に、つぼみの母の妊娠、第二次性徴の戸惑いが絡んでいく。
医学的な説教くささや露骨さは巧みに回避しつつ、押さえるべきポイントはきっちりと押さえられている。
しかし少女マンガ的恋愛描写が読んでてこそばゆい。

かずといずみ『貧乏姉妹物語』(サンデー GX コミックス)

ISBN:409157341X

母は死別、父は借金を作って失踪したため、風呂なしボロアパートで二人きりで暮らす15歳と9歳の姉妹の日常を描いた作品。
普通は児童福祉施設なり生活保護なりが絡んでくるはずだが、二人は保護者なしに姉のアルバイトのみで生計を立てていて、行政が全く介入していない。
近所の住人に生活を助けられている様子もない。
「法律が変わって中学生以上から大人と同様に働けるようになった」というご都合主義的な設定で済ましているが、これって実は「小さな政府」がもたらす福祉切捨てのディストピア的社会なのでは?
健気な9歳の妹には萌えるが、その辺の残酷さが気になる。

陽気婢『日本の裸族』(ヤングマガジンコミックス)

ISBN:4063235424

街で見かけたとある女性に恋した主人公の大学生。
彼女と話す機会を得て、いい雰囲気になったと思うのも束の間、彼女には小学生の娘みかさがいることが発覚。
しかもみかさは全裸になると超人的な力を発揮する不思議な少女だった。
全裸生活を提唱し社会運動を行う集団にみかさは狙われ、主人公もまた彼らの引き起こす騒動に巻き込まれていく。

1980年代末ごろのノリを多分に残した表現が懐かしい。

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綾辻行人『十角館の殺人』(講談社文庫)

ISBN:4061849794

清涼院流水推薦ということで読んでみた日本版『そして誰もいなくなった』。
なるほど、『コズミック』と『ジョーカー』の元ネタがここにある。

山際淳司『バットマンに栄冠を』(角川文庫)

ISBN:4041540550

広島カープの衣笠祥雄の最後のシーズンを取材した表題作ほか3編を収めた実録物。

山際淳司『野球雲の見える日』(角川文庫)

ISBN:4041540070

一冊丸々、野球をテーマとし、エッセイ風に描いた実録物。

勝岡寛次『韓国・中国「歴史教科書」を徹底批判する―歪曲された対日関係史』(小学館文庫)

ISBN:4094023763

韓国・中国は日本の歴史教科書を歪曲だ修正しろ云々とケチをつけてくるが、では逆にその韓国・中国の歴史教科書の内容はどうなんだと、その内容を検証・批判し、修正要求を突きつけている本。
批判が妥当がどうかはさておいても、爽快な気分にさせられる。

清水義範『普及版 世界文学全集 第1期』(集英社文庫)

ISBN:408748369X

古典から近代の外国文学作品をネタにしたパスティーシュ小説集。

清水義範『普及版 世界文学全集 第2期』(集英社文庫)

ISBN:4087483894

近代から20世紀の外国文学作品をネタにしたパスティーシュ小説集。
最後に収められた一編「20世紀の文学」は元ネタを知っている人には笑えるし、知らない人には文学史の勉強になる。

清水義範『深夜の弁明』(講談社文庫)

ISBN:4061850733

パスティーシュ作品のほかミステリー風の小説も収めた短編集。

清水義範『似ッ非イ教室』(講談社文庫)

ISBN:4062635852

エッセイ集のパロディ。

清水義範『ザ・勝負 』(講談社文庫)

ISBN:4062750481

ソース対醤油、米対麦といった二つの物事の対立をネタにした、雑学読物的な短編小説集。

清水義範『日本ジジババ列伝』(講談社文庫)

ISBN:4062738368

様々なお年寄りたちの日常を書いた短編小説集。
大したもんだ。

筒井康隆『夢の木坂分岐点』(新潮文庫)

ISBN:4101171246

SF における多世界解釈のように、一人の人間の様々な可能性が錯綜し流転する小説。
ここでは現実・虚構の別が取り払われている。
主人公はある時は夢の中の登場人物であり、ある時は作中内小説の登場人物である。
技巧としては凄いんだけど、正直なところ展開がだるくて読み進めるのが少々辛かった。

沢木耕太郎『テロルの決算』(文春文庫)

ISBN:4167209047

1960年、社会党委員長の浅沼稲次郎が右翼少年に刺殺された。
その加害者と被害者それぞれが事件に至るまでの経緯を丹念に取材し明らかにした伝記。
事件のことは歴史の事実として知っていたが、経緯がこんなに面白いものだったとは。

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もう2005年度も半分過ぎようとしていますが。

北村薫『覆面作家の愛の歌』(角川文庫)

ISBN:404343202X

表題作で使われているトリックがすぐに理解できず、自分の頭の悪さを痛感した。
今でも答えを見ずにトリックを説明できない。

北村薫『覆面作家の夢の家』(角川文庫)

ISBN:4043432038

「去年、マリエンバートで」のギャグには笑った。
多分、一生忘れないと思う。

最後のくだりは痒くて悶絶しそう。

中谷宇吉郎『雪』(岩波文庫)

ISBN:4003112423

雪の結晶の研究者であり、優れた文筆家としても知られる中谷宇吉郎。
彼が自らの雪の研究について一般向けに記した本。
戦前に書かれた本とは思えないほど平明な文章だ。
中学生から高校生あたりに科学する心を伝えるのにはうってつけなんじゃなかろうか。

安野モヨコ『美人画報』(講談社文庫)

ISBN:4062747936

マンガ風のイラストがついたエッセイ。
マンガ家という過酷な仕事をしつつも、キレイであろうとあれこれ美容を試したり、美について語ったりといった内容。
決して高尚なものではないけれど、美への情熱がくだけた文章でよく伝わってくる。
話し言葉でガンガン切り込んでいくスタイルが嫌味なく似合ってて、女性読者に人気が高いのも納得。

清涼院流水『コズミック 流』(講談社文庫)

ISBN:4062646498

清涼院流水『ジョーカー 清』(講談社文庫)

ISBN:4062648466

清涼院流水『ジョーカー 涼』(講談社文庫)

ISBN:4062648695

清涼院流水『コズミック 水』(講談社文庫)

ISBN:4062648687

もともとは『コズミック』『ジョーカー』という単体のミステリー小説なのだが、文庫化にあたって分冊されている。
冒頭で「流→清→涼→水」の順番に読むよう著者が強く薦めているので、それにしたがって読んでみた。

『コズミック』では「密室卿」なる人物が「1200の密室で1200人が殺される」という予告を行い、その通りさまざまな密室で人間が殺されていく。
その捜査にあたるのは、350人の探偵を抱える組織、日本探偵倶楽部(JDC)。
『ジョーカー』は『コズミック』の作品世界における事件の少し前の物語で、登場人物は共通である。
陸の孤島となった幻影城で行われる、装飾的密室連続殺人事件を描いている。

密室殺人のインフレ、探偵のインフレ。
多用される言葉遊び、メタフィクション的構成とトリック。
マンガのキャラクターのような、現実離れした造形と推理法を持つ探偵たち。
型破り、荒唐無稽もいいとこで、探偵たちが真相に近づいていくたびにズッコケそうになる。
『コズミック』の犯人が明かされたところでは「ハァ?」と口に出してしまいそうになった。

作者は既存のミステリー小説を踏まえた上で、それらを全部ぶっ潰しにかかっている。
決して主流にはならないだろうが、ミステリー小説の歴史には残るであろう奇書。

別役実『虫づくし』(ハヤカワ文庫)

ISBN:4150501432

虫について、真面目な文体で嘘八百な考察を繰り広げている作品。
ニヤニヤ笑いを呼び起こす。

ロバート・コーミア『フェイド』(扶桑社ミステリー)

ISBN:4594011454

清涼院流水が作中で激賞していたので読んでみたミステリー小説。
この作品において用いられている「作中内小説」の物語構成が、清涼院流水に多大な影響を与えていることがよくわかる。
清涼院流水が言うほど結末は衝撃的ではなかったけど、つまらなくもなかった。

山際淳司『エンドレスサマー』(角川文庫)

ISBN:4041540526

著者のおなじみである、1980年代半ばの様々なアスリートたちを描いた実録もの。

北村行孝、三島勇『日本の原子力施設全データ―どこに何があり、何をしているのか』(講談社ブルーバックス)

ISBN:4062573458

原子力発電所以外にも、日本にはいくつもの原子力関連施設がある。
それらの立地場所や業務内容を網羅するとともに、原子力発電や原子力事故、安全対策について解説した本。
原発大国日本に住むなら読んでおきたい。

豊田泰光『サムライたちのプロ野球―すぐに面白くなる7つの条件』(講談社プラスアルファ新書)

ISBN:4062721953

日本プロ野球に対する批判と提言を記した本。
著者の昔はよかった式の論調はいつものことなので置いとくとして、現役時代のエピソードは面白く、プロ野球改革のための提言は大筋で同意できる。
ただし、記述は実現のための方法論にまでは至っていない。
セ・パ交流戦については実現しましたね。

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山田克哉『核兵器のしくみ』(講談社現代新書)

ISBN:4061497006

原子の構造から始まって、核兵器、原子力発電、核融合までを読みやすい文章で丁寧に解説してくれている。
オススメできる一冊。

山辺健史『マンガ世界の歩き方』(岩波ジュニア新書)

ISBN:4005004814

岩波ジュニア新書の本を読むのは中学校以来だ。
しかもその時読んだのが水玉螢之丞がイラストを描いている『ナウなヤング』なんだから、未来が決定されてたようなものである。
トホホ。
著者は映画学校を卒業後、映画の仕事を2年でやめて古本屋で働くフリーターの青年。
マンガマニアではない彼が駆け出しライターとして、路上マンガ販売、コミケ、週刊誌の編集長、貸本屋などを取材していく。
読者にとってそれは彼の成長過程を見守るものでもあって、だからこそ岩波ジュニア新書というシリーズから出版されてるといえる。

山田真哉『<女子大生会計士の事件簿>世界一やさしい会計の本です』(日本実業出版社)

ISBN:4534037384

確かにやさしい会計の本。
資本、資産、費用、収益をそれぞれ水、木、火、金に喩えて会計を説明している。
何故か挿絵は萌えイラストで、収録されている小説「女子大生会計士の事件簿」とあいまって、ライトノベル的雰囲気が少々。

森村誠一『人間の証明』(角川文庫)

ISBN:4041753600

西条八十の詩(「母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?」のアレ)が有名なのって、この作品(と映画版)がヒットしたからなんだなあ。
謎解きは面白かったのだが、説明的な文体が素人っぽくて気になってしまう。

別役実『思いちがい辞典』(ちくま文庫)

ISBN:4480034471

不条理なエッセイ。
どこからどこまで本気でどこからどこまでがジョークなのかよくわからん。

呉智英『現代マンガの全体像』(双葉文庫)

ISBN:4575710903

現代って言っても元々は1986年に出版された本である。
前半は当時の的外れなマンガ評論に対する攻撃になっている。
攻撃対象となっている評論家は今となっては忘れられた存在で、出版当時は意味があったんだろうけど、今の読者としては「そこまで必死にならなくてもいいんじゃないの」と失笑してしまう。
マンガ評論の歴史を垣間見るという意味での価値はある。
後半はマンガ史の概説と作品論で、堂々、今でも有用な資料だ。

別役実『ことわざ悪魔の辞典』(ちくま文庫)

ISBN:4480035885

最初から最後までボケっぱなしでツッコミ無し。
辛い。

バリー・ユアグロー『一人の男が飛行機から飛び降りる』(新潮文庫)

ISBN:4102209115

悪夢のようなイメージを描いた短編を149本収めた作品集。
こんな発想を見せられては、私みたいな凡庸な人間は諸手を挙げて降参するしかない。

佐野正幸 『1988年10・19の真実―「近鉄‐ロッテ」川崎球場が燃えた日』(知恵の森文庫)

ISBN:4334783201

著者は西本幸雄監督ファンが昂じて近鉄百貨店に入社し、近鉄バファローズの関東応援団長を務めたのち、現在スポーツライターをしている人。
日本プロ野球史上に残る伝説的ゲーム、1988年10月19日のオリオンズ対バファローズ戦のフィールド上の出来事を記した文章は世に数多くある。
この本の白眉なのは、著者が応援団長としてこのゲームを迎えた過程と、客席から見つめたゲームの模様を描いているところにある。
「1988.10.19」はフィールド上のみならず、フィールドの外にもまたドラマを作り出していたのだ。
プロ野球ファン必読の一冊である。
残念なのは、このゲームの初戦に先発したピッチャー、小川博が殺人犯になってしまったことだ。
折角の名勝負も、この汚点のせいで永久に封印されてしまうかもしれない……。

橋本治『宗教なんかこわくない!』(ちくま文庫)

ISBN:4480034951

オウム真理教が摘発された数ヶ月後に出版された本。
オウム真理教を軸として宗教を論じている。
面白いんだけどこれはあくまで日本国内における個々の日本人に関する限りの論考。
イスラム世界相手に現実に対処する武器にはならない。

加藤寛一郎『エアバスの真実―ボーイングを超えたハイテク操縦』(講談社プラスアルファ文庫)

ISBN:4062566346

エアバスというと、1994年に名古屋空港で中華航空のエアバス機が着陸時に墜落事故を起こして、その操縦設計がコンピュータ主導だと日本では随分非難を浴びたものである。
この本では航空機メーカー出身の研究者である著者がエアバス本社を取材する。
そしてその設計思想に感嘆するとともに誤解を恥じ、日本の航空界の貧しい現状を批判している。
エアバスは実にクールな会社だ。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『わたしが幽霊だった時』(創元推理文庫)

ISBN:4488572014

剣と魔法の世界じゃない方のファンタジー。
前半、主人公は自分が誰なのか分からないまま幽霊として彷徨う。
この部分が退屈で辛い。
後半に入るとドラマに緊張感が出て来るのだが……。
主人公の設定は新鮮だったけど、テンポの悪さのせいで全体としてはイマイチ。

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氏賀Y太『真・現代猟奇伝』(夢雅 COMICS )

ISBN:4861051746

1989年、日本を震撼させた「女子高生コンクリート詰め殺人事件」。
帰宅途中の女子高生を数人の少年たちが拉致、41日間にも渡って自宅二階に監禁したうえ、陵辱・暴行を加えた末に死亡させ、遺体をコンクリート詰めにして遺棄したという事件である。
あまりの凄惨さに、事件のあらましを読んでいるだけで目頭が熱くなるのを禁じえない。
同時に少年たちの所業に義憤が満ち満ちてくる。

2004年には事件をモデルにした小説が『コンクリート』という名前で映画化されたが、抗議や嫌がらせが殺到し、公開中止に追い込まれている。

その「女子高生コンクリート詰め殺人事件」が、エロマンガ雑誌の企画としてマンガ化された。
「真・現代猟奇伝」と銘打って、現実に起きた凄惨な事件を元にしたマンガを連載するという企画である。
執筆を担当したのは氏賀Y太。
氏賀Y太といえば萌えマンガ風の絵柄で内蔵露出のエログロマンガを描いているマンガ家だ。

その雑誌連載を収めているのがこの『真・現代猟奇伝』。
映画の公開中止事件や発表媒体、執筆者の事情があってだろう、本の冒頭には編集部による企画意図の説明文があり、さらに「このお話は事実に基づいた物語であり、内容に関しては全てフィクションです」と書かれている。
また、奥付けにも雑誌編集者の署名入りで「本作品を読まれた読者様のご意見やご感想は何卒編集部までお願いします」と書かれ、くどいほど予防線が張られている。

「女子高生コンクリート詰め殺人事件」を描いた作品は冒頭から全4話。
全体的には「実際にはもっと酷かったんじゃないか」という気がして、描写がぬるいように思う。
しかし最終的に被害少女を死に至らしめたリンチの凄惨なシーンの描写はなかなかで、好色的な猟奇趣味とは一線を画した感がある。
彼女の笑顔を写した写真に一輪の花を手向けた絵によって物語は終わり、鎮魂の祈りと事件への怒りが捧げられている。

ただ、問題はその後に収録されている短編だ。
国家反逆罪への刑罰として、生きながらにして子供の目の前で肉体を解体される母の話「そこの肉片に告ぐ」。
受けた暴行の苦痛が快感になる手術を女性に施し暴行を加える話「 ANGEL 」。
人間が食肉加工される社会、加工工場で働く一人の女性を描いた話「ゆめいろハンバーグ」。
折角張った予防線が台無しになってるよ!

世の中にはこれで興奮したりエレクトしたりする人がいるから商売として成り立っているのだろうけど……私はダメです。
ピクリともしませんわ。

きづきあきら『モン・スール』( Seed!comics )

ISBN:4901978063

本の帯に「小学生は、人を好きになっちゃいけないの?」とあり、ロリコンマンガかと思わせておいて、実は性愛と家族をテーマとした重い物語。
父の失踪後、親友の助力を受けながら小学生の妹と二人暮しをしていた大学生の主人公。
しかしその親友が妹と肉体関係を持っていたことが発覚し、妹も姿を消してしまう。
そして主人公の知らなかった事実が明らかとなり、「妹を守る兄」という関係は一気に反転する。
実は妹こそが兄を守っていたのだった。

正直なところ、この作品の「妹」は怖いです。
やはり男は阿呆、女には敵わないと思わざるを得ません。
良作。

雁えりか『バンパイアドール・ギルナザン』( 第1巻、ZERO-SUM コミックス)

ISBN:4758050856

吸血貴公子と恐れられた吸血鬼、ギルナザンがエクソシストの手により現代に復活。
しかしそのエクソシストは美男子ながらマニアックな趣味の性格破綻者だったため、復活した肉体は美少女の蝋人形だった。
彼に振り回されるギルナザンの日々を描いたコメディ。
絵はベタが多くて重たいが、ギャグはなかなか面白おかしい。

もうすぐ第2巻が出る見込。

あかほりさとる・桂遊生丸 『かしまし~ガール・ミーツ・ガール』(第1巻、電撃コミックス)

ISBN:4840229554

宇宙人との事故により女性に変わってしまった少年と、幼馴染の少女、初恋の少女の三角関係を描く物語。
コメディチックながら、全体的な展開はややゆったりとシリアスに流れている。
あかほりさとるという名前から受ける印象とはちょっと違う。
「オネニーサマ」というギャグはさすがに寒いが。
細やかで柔らかい絵柄がよい。

小村あゆみ『ハイブリッドベリー』(マーガレットコミックス)

ISBN:4088477901

「少女野球もの」ジャンルでは珍しい、少女向け作品。

土いじりが好きな少女、要は野球部の二塁手杉崎に惹かれているのだが彼の前では素直になれず悪態をついてしまう。
彼女のイレギュラーバウンドへの反応に、野球部の顧問教師は内野手の才能を発見。
彼女の恋心を利用してマネージャーとしての入部を勧めるが、本当の目的は8人しかいない野球部にプレイヤーとして入部させることだった。
思いもよらず野球をやることになるわ、ポジションが杉崎と競合してしまうわで、果たして彼女の恋はどうなるのか……。

今後の展開が楽しみだが、作者が熱心なスワローズファン、担当編集者がマリーンズファンというところに好感が持てる。

第2巻がいつの間にか出てたので買わなくちゃ……。

綾瀬さとみ『夏色ショウジョ』(ワニマガジンコミックス)

ISBN:4898299148

成人マークは付いていないけれどエロマンガ短編集。
作者は気に入っていないようだが、「ああっ青春オナニスト」は無闇な勢いで突っ走る、爆笑間違いなしの一編。
ギャグ以外にシリアスな短編も収められていて、その一編「笑ウ少女」のクライマックスに描かれる、悲しみに歪んだ少女の醜い表情はなかなか印象深い。

小だまたけし『平成イリュージョン』(ミッシィコミックス)

ISBN:4776714914

日中戦争を回避し、太平洋戦争も迎えず平成に至った架空の日本を描いた表題作その他を収めた短編集。
80年代の「少年キャプテン」を彷彿とさせる物語設定と絵柄だが、作者の web サイトを見たらまさにその時代からマンガを細々と描き続けている人らしい。
ちょっと応援したくなります。

宮野ともちか『ゆびさきミルクティー』(第1巻~4巻、ジェッツコミックス)

ISBN:4592134575
ISBN:4592134583
ISBN:4592134591
ISBN:4592143841

女装趣味の少年と、彼にとって妹的な存在である隣家の少女、彼女の家庭教師で少年の同級生の少女、彼ら三人の三角関係を描いている作品。
少女二人は主人公の少年に惹かれているが、彼もそれを承知の上でそれぞれに愛情とも恋心ともつかない感情を抱き、彼女らを傷つけていく。
しかし決定的な破局は訪れない。
ラブコメの、なかなか進展しないぬるい恋愛からコメディ部分を取り去ったような、「ライト泥沼」とでも言った感じの物語がゆるゆると続く。
第4巻では、少年の姉と隣家の少女の父との関係が明かされる。
泥沼はますます深く込み入っていくようだ。

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児童文学を数点。

といっても私には児童文学の定義がよく分からないんですが、子供が主人公なら児童文学なのか、子供向けの文学が児童文学なのか。
あるいはその両方でしょうか。

森絵都『宇宙のみなしご』(講談社)

ISBN:406207334X

買った当時出版社でも品切れで、古本で1900円の高値がついていた。
今は重版がかかってお安く手に入ります。

「第41回青少年読書感想文全国コンクール 中学校の部 課題図書」と帯にでかでかと書いてある。
普段の私なら一瞥して「ケッ」と思って手に取りもしないだろうが、知人の勧めもあって読んでみた。

両親に構ってもらえない中学生の姉弟が、真夜中に他人の家の屋根に上るという遊びを思いつく。
その遊びに、姉のクラスメイトが絡んでちょっとした事件が起こるという話。

読書感想文コンクールの課題図書なんて言われると、大人の建前的な価値観を刷り込もうとする奇麗ごとな物語かと身構えてしまうが、さにあらず。
自我を確立していく中学生の頃、感受性の強い子供は大人や社会や人間関係に、失望や諦念を見出す。
主人公もそんな「ちょっと早く大人に近づいている」タイプの少女であり、彼女の視点で物語が描かれていく。
同年代にある彼女のような子供たちにとっては、主人公とシンクロしまくりで直球ストライクな本だと思う。
私ももっと若いときにこの本を読みたかった。

ところどころ、意表を突いた比喩が出てくるのも面白い。
高かったけど満足満足。

草壁たき『猫の名前』(講談社)

ISBN:4062113872

中学生の少女が、隣家に住む女性、クラスメイト、かつての同級生との人間関係を通じて成長する様を描く。
『宇宙のみなしご』を気に入った人なら同様に面白く読めると思う。

カレル・チャペック『長い長いお医者さんの話』(岩波少年文庫)

ISBN:4001140020

ユーモラスな童話集。
良し悪しは別として、ヨーロッパの人の御伽噺はセンスが日本人と違う……。

あさのあつこ『バッテリー』(角川文庫)

ISBN:4043721013

2004年の文庫本で最高の一冊。
イヤッホウゥ、角川文庫最高!

大体新刊本の帯に書かれた煽り文句というのは大げさで鵜呑みにできないものである。
しかし。
この本の帯にある「こんな傑作を読んでこなかったのかと猛烈に反省 北上次郎」「これは本当に児童書なのか!?」という文は全くもってそのとおりで、同じことを私も思った。

中学校入学直前の夏休み、天才ピッチャー原田巧は、父親の転勤に伴って病弱な弟とともに母の実家へと引っ越してくる。
そこで巧は、同じ中学校へ入学する永倉豪に出会う。
少年野球のキャッチャーをしていた豪は巧の投球に惚れこみ、巧も豪の才能を認め、バッテリーを組むことになる。
自分の才能に揺ぎ無い自信を持ち、しばしば冷酷に他者を切り捨てる巧。
一方、他者へのいたわり、慈しみを備えた豪。
豪と共に過ごすうち、巧の心にも僅かな変化が訪れる。

少年たちの心の動きを丁寧に描いていて、立派な文学と言っても過言ではない。
野球というスポーツが嫌いなら仕方ないけど、そうでなければ是非オススメしたい作品です。

あさのあつこ『バッテリー II 』(角川文庫)

ISBN:4043721021

野球部に入部した巧と豪。
しかし唯我独尊な巧の性格が中学校の教育的管理野球に合うはずもなく、巧は監督の指導に反抗を続ける。
そんな巧に対して先輩野球部員がやることといったら、大体想像がつくもので……。

展開に緊迫感が増し、一気に読みきってしまった。

あさのあつこ『バッテリー III 』(角川文庫)

ISBN:404372103X

『 II 』の事件で部活動停止になってしまった野球部。
なんとか活動再開が認められたものの、校長は野球部に対して不信感を抱いている。
不信感を拭い去るため、監督は強豪校とのゲームを組もうと計画。
そのためのデモンストレーションとして、三年生のレギュラーによって構成されたチームと、一・二年生によって構成されたチームとの紅白戦が行われる。
一方で、巧と豪の間に不協和音が生じる……。

三巻目になってゲームのシーンがメインになり、巧と豪の衝突と和解も加わってエキサイティング。

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マイケル・ルイス『マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』(ランダムハウス講談社)

ISBN:4270000120

貧乏球団なのに好成績を残しているオークランド・アスレチックス、その秘密は統計分析から得られた、他球団にないプレイヤー獲得基準と戦術にあった。
アスレチックスのジェネラル・マネージャー(チーム編成の実行役にして責任者)であるビリー・ビーンを中心に据えて、従来のセオリーを覆す彼の野球理論と、彼の強烈な個性が生み出す人間ドラマを描き出す。
野球ファン必読の一冊。

大平貴之『プラネタリウムを作りました。―7畳間で生まれた410万の星』(エクスナレッジ)

ISBN:4767802512

410万個の星を映し出す移動式プラネタリウム「メガスター II 」を個人製作してしまった青年、大平貴之の自叙伝。
トラブルにもめげず少年のようなプラネタリウム作りへの情熱を維持し続け、事を成し遂げる著者の姿は、安穏とダラダラ生きる我が身が恥ずかしくなってくる。
それこそ星のように眩しすぎます。
科学やものづくりの啓蒙書としても秀逸。

井上尚英『生物兵器と化学兵器―種類・威力・防御法』(中公新書)

ISBN:4121017269

生物兵器・化学兵器の性質、診断、治療法、実戦での使用例をまとめたハンドブック。
医療関係者は必読。

松原隆一郎 『失われた景観―戦後日本が築いたもの』( PHP 新書)

ISBN:4569622704

どこ行っても国道沿いは「ファッションセンターしまむら」とか「スーツのはるやま」とか「吉野家」とかのチェーン店の看板に出くわすし、街中は電柱に電線のジャングル。
ヨーロッパの町並みを見るにつけ日本の醜悪な景観にうんざりする。
そんな私なので、著者の主張には「同志よ!」と思わず叫んでしまいそうになる。
しかし、全国の電柱を地中に埋めることは技術的にはともかく、政治的・経済的に困難ということが判ってがっかり。
もうダムとか道路とかいい加減作り尽くしたんだから、21世紀日本の土木事業は50年計画の「全国電柱電線地中化」をやってくれと強く主張したい。
公共事業不足に喘いでいる地方の土建屋さんも喜ぶと思うんだけど。

小林信彦『笑いごとじゃない―ユーモア傑作選』(文春文庫)

ISBN:4167256037

御馴染み「唐獅子」シリーズほか、面白おかしいユーモア短編集。
これが絶版とは実に惜しい。

沖田雅『先輩とぼく』(電撃文庫)

ISBN:4840226121

第10回電撃ゲーム小説大賞銀賞受賞作。
何だよ「ゲーム小説」って。

聡明な美少女だけど変人の先輩に惚れてしまった主人公の少年。
クリスマス、一緒に UFO 見物に出かけたところ、宇宙人に捕まり手違いで先輩と脳を入れかえられてしまう。
そして先輩に振り回され続ける元・彼の受難の日々が始まる。
オタク文化のタームに馴染みがないとギャグが判らないかもしれないが、判る人間には苦笑を禁じえないこと請け合い。
まあ、電撃文庫ですからねえ……。

先輩がどう変人なのか、というと「主人公たちを巻き込んで『ゴレンジャー』のような戦隊を結成しようとする」、と言えば明らかだろう。
ドタバタラブコメディに終始すると思いきや、終盤の展開は意外。

沖田雅『先輩とぼく 2 』(電撃文庫)

ISBN:4840226997

今度は特撮ヒーローの「悪の組織」を演ずることになった主人公たち。
男だったときの主人公に恋していた幼馴染の少女が登場して、主人公の受難の日々は続く。

沖田雅『先輩とぼく 3 』(電撃文庫)

ISBN:4840228353

人気があるのか3巻も出てた。
まだ読んでないけど4巻目も発売済。

今度の主人公は「魔法少女」を演ずることになる。
先輩が連れてきた無表情の少女、彼女に一目ぼれした主人公の親友の恋を中心として、主人公の受難の日々はまだまだ続く。

カレル・チャペック『園芸家12カ月』(中公文庫)

ISBN:412202563X

園芸マニアの生態がユーモラスに語られる。
園芸への愛が詰まった一冊。

カレル・チャペック『いろいろな人たち―チャペック・エッセイ集』(平凡社ライブラリー)

ISBN: 4582760902

鋭い人間観察力を見せるエッセイ集。
中でも「『シカシ人間』たちについて」というコラムは、そのものずばり私のような人間のことを的確に表現していて降参です。

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千趣会に注文していた本棚が届いた。
早速組み上げて、部屋の隅に積んだり Amazon が配送に使ったダンボール箱に詰め込んだりしていた本を収めてやる。
本棚の半分が埋まった。
背表紙を眺めて、「我ながらいろいろ読んだものだなあ」と思ったけれど、中身はさっぱり身に付いていないのだから情けないもんです。

Amazon.co.jp のサイトでの情報によると、私が Amazon で購入あるいは注文した商品、その数314。
DVD や CD も Amazon で購入しているとはいえ、9割がたは本。
買った本を売ったり捨てたりしないから、部屋が本まみれになるのももっともだ。
もちろん書店・古書店でも買うことがあるから、買った本の数はもっと多い。

Web 上の通信販売サイトでは、たいてい次のようなかたちで注文を受け付ける。
利用者は購入したい商品を選択して「ショッピングカート」という部分に登録していく。
登録が終わったら、登録された商品のリストに、発送先や決済に使う手段の情報を添えて送信する。

Amazon の場合、ショッピングカートに登録した商品について、「今は買わない」と保留をかけることができる点が優れている。
この仕組みのおかげで、一度に買いすぎてしまうことに歯止めがかかることは喜ばしい。
また、買おうと思ってやめた商品について、後になって買おうと思ったとき名前を思い出せないなんてこともなくなる。
欲しい、と思ったらとりあえずショッピングカートに入れてしまえばよい。
保留をかけた商品は90日間保存されることになっているが、商品が新たにショッピングカートに登録されれば、期間は延長されるようである。

私のショッピングカートには、127の商品が保留されている。
本棚の空きスペースは、半年以内になくなるだろう。

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清水義範の本は何冊も読んでいるが、2004年秋ごろから何となく勢いがついて読み漁った。
電車通勤の行き帰りに読むには、清水義範の作品はもってこいなのだ。
よいところを列挙してみよう。

・文章が平易で読みやすく、寝ぼけた頭でも疲れた頭でも眠くならない。
・短編が多いので乗り換えや降車駅での到着で中断されることが少ない(中断されても続きを読み始めるのに苦がない)。
・パスティーシュ作品やユーモア小説はネタ選びの着眼点が鋭いし、出来上がった作品も面白おかしくて没頭して読める。
・市井の人に対する温かい視線、物事に対する誠実な姿勢が感じられる作風で、読んで陰鬱にならない。

そんな訳で一冊、また一冊と買っては読み、気づいたら20冊以上読んでいるのだった。

清水義範『蕎麦ときしめん』(講談社文庫)

ISBN:406184542X

清水義範の出世作、代表作を収めたパスティーシュ作品集。

清水義範『スシとニンジャ』(講談社文庫)

ISBN:406263080X

チャンバラ映画マニアが昂じてアメリカの田舎から日本へやってきた純朴な青年が、カルチャーギャップに戸惑いながらもエキサイティングな旅をしていく様を描いた面白おかしい長編小説。

清水義範『私は作中の人物である』(講談社文庫)

ISBN:4062632594

パスティーシュ作品集。
「フィネガンズ・ウェイク」の文体模倣小説「船が州を上へ行く」がすごい。

清水義範『日本語必笑講座』(講談社文庫)

ISBN:4062739003

ことば、日本語をテーマにしたエッセイ、読み物。
「読書感想文必勝法」のくだりは正鵠を射てます。

清水義範『行儀よくしろ。』(ちくま新書)

ISBN:4480061215

えっ、新書コーナーに清水義範の本が?同姓同名の人じゃないの?
と驚いて著者紹介を見ると、間違いなく小説家清水義範その人の本であった。
新書といっても雑談風の柔らかい教育論だ。
単純な「最近の若者は……」「最近の子供は……」式の苦言ではない。
子供や若者に見られる様々な事柄について、良いところ、受け入れざるを得ないところを見出しつつも、おかしいところはおかしいと言う、実に清水義範らしい誠実な論考。
「行儀よくしろ」とは、子供に向けてのものだけでなく、大人に向けての言葉でもある。
『バカの壁』を読むくらいならこの本を読んだほうがよっぽどよい。

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滝本竜彦『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』(角川文庫)

ISBN:4043747012

不条理な物語設定とはいえ、さらっと流し読みできる素直でライトな青春小説。
しかし次世代文学の旗手」という宣伝文句には首を傾げてしまう。
リアリティよりマンガやゲームっぽい世界観とか雰囲気とかを共有しようってタイプの作風が次世代文学って言うんでしょうか……。
高校生向けかなあという感じ。

松沢呉一『ぐろぐろ』(ちくま文庫)

ISBN:4480038876

エロ、グロ、下品な話題を面白おかしく書いてはいるけれど、著者の良識・誠実さが垣間見える、そんなエッセイ。
おすすめ。

ウディ・アレン『羽根むしられて』(河出文庫)

ISBN:4309461077

パスティーシュ短編と、ドタバタ劇を収録した短編集。
文学論を売り物にするコールガール組織の話が特に笑えた。
清水義範を好む人に特におすすめできるが、絶版なのが悲しい。
復刊を願う。

苅谷剛彦『知的複眼思考法』(講談社+α文庫)

ISBN:4062566109

著者の語ることは私も経験的に分かっていて、心がけてはいるものの完全には実行できてません。
高校生、大学生はとりあえず読んでおくべき本。
マスコミに煽られて床屋政談しちゃうブロガーやサラリーマンにもおすすめ。

大塚英志『サブカルチャー反戦論』(角川文庫)

ISBN:4044191174

したり顔で傍観者を決め込むインテリやオタクっぽい態度よりは、乱暴なやり方であっても言いたいことを言っていく著者の態度の方が好ましい。
しかしあと10年近く経てば著者が何でこんなに必死になってるか分からない世代が出てきて生意気なこと言うんだろうなあ。

灰谷健次郎『子どもの隣り』(新潮文庫)

ISBN:4101331073

「友」という短編は中学生の心情がリアルに描かれていてよかった。
新潮文庫版は絶版になっていて、今は角川文庫から出ています。

北村薫『冬のオペラ』(中公文庫)

ISBN:4122035929

語り手であるヒロインのさらりとした感じや物語の哀切がいかにも北村薫的。
バイトで身を立てている名探偵巫弓彦は可笑しくもカッコいい。
表題作「冬のオペラ」はまさにカバー絵のとおり、目を閉じて雪に降られるような粛々と静かに沈む読後感。

森博嗣『女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN』(新潮文庫)

ISBN:4101394326

SF ミステリー。
哲学的問答が好きなら楽しく読めると思う。

浅田次郎『壬生義士伝』(文春文庫)

ISBN:4167646021

これぞ大衆娯楽小説、上手いなあと素直に感心する。
素晴らしいストーリーテリング、ペーソス、カタルシスだわ。

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こうの史代『夕凪の街 桜の国』(双葉社)

ISBN:4575297445

2004年に刊行されたマンガの中で最高傑作。
読んでて涙腺が緩んだマンガは久しぶりだ。
この作品のことを思い出すたびに目頭が熱くなる。

『はだしのゲン』が被爆当事者の怒りと叫びだとするならば、『夕凪の街 桜の国』は原爆を語られながらも目を背けてきた世代による鎮魂と再出発の物語だ。

読後、心の揺さぶりの中に切なさが襲う。
日本人を鬼畜と教わり、憎悪の視線を向ける朝鮮半島や中国の人々がいること。
もし彼らがこの作品を読めば単純な思考を見直してくれるのではないかという希望と、捏造だの反動だのと断罪されそうな可能性に対する絶望。
この世に生きる人間の、その心の断絶を思うと切なくてたまらない。

あずまきよひこ『よつばと!』(電撃コミックス1-3巻、メディアワークス)

ISBN:4840224668

ちょっと風変わりだが元気な少女(というか幼女)「よつば」の日常物語。
ほのぼのとしつつもテンポと間が絶妙で心地いい。
萌え系マンガだと思って読まず嫌いするのは損します。

桜場コハル『みなみけ』(ヤンマガ KC 1巻、講談社)

ISBN:4063612864

三姉妹の日常を描いた萌え系まったりマンガ。
テンポと間の取り方が上手い。
あずまきよひこ並にブレイクするか、今後が楽しみ。

山名沢湖『スミレステッチ』(ビームコミックス、エンターブレイン)

ISBN:4757720610

お菓子のようにメルヘンチックな短編集。
男性向け雑誌に掲載されていた作品ということもあってか、甘いながらも胸焼けはしない程度の匙加減に留まっている。

山名沢湖『委員長お手をどうぞ』(アクションコミックス1巻、双葉社)

ISBN:4575830356

メルヘンチックなところは抜いて、ほのぼのさだけ残した風味。

岩崎つばさ『 30GIRL.com 』(双葉社)

ISBN:4575939080

日立空調システム株式会社のイメージキャラクターとして作られた萌え系(見た目だけ)主婦が織り成すドタバタコメディ。
キャラクター解説抜きに本編だけ読むと、キャラクター設定が分かりづらいのが難点。

二ノ宮知子『のだめカンタービレ』( KC キス1巻、講談社)

ISBN:4063259684

音大を舞台に奇人変人が活躍するコメディ。
大学の、一般的にはあまり縁のない専門的な学科を舞台にしたマンガというと傑作『動物のお医者さん』が思い浮かぶけれど、果たして並び称されるところまで行けるか。
今のところあと10巻、読み進めて行くのが楽しみな作品だ。

ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』(アフタヌーン KC 1-2巻、講談社)

ISBN:4063143422

『家族のそれから』『ヤサシイワタシ』の「自意識過剰で繊細で傷つきやすい若者」モノの作風から一変、理論派野球マンガ。
久々に面白い野球マンガに出会えた。
これも今後の展開に期待。

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腹が減ったので午前1時半、ラーメンを食いに外へ出る。
帰り道、普段ずっと前を素通りしていたマンガ喫茶に入ってみる。マンガ喫茶に入るのは5年ぶりくらいか。
おかげさまで5年くらい読まずに放置していた『ドラゴンヘッド』を読了しました。おかげさまで『朝霧の巫女』って巫女萌えドタバタラブコメディじゃなくて、巫女萌え怪奇ものだと知りました。おかげさまで外に出たら空が白んでおりました。
寝付けないので徹夜コース、現在に至る。「題名のない音楽会」を観たの、いつ以来だろうか。

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折角本を本棚に収め、なおも本が溢れ出ているというのに、紀伊国屋書店でマンガ本1万3千円分買ってくる阿呆。
マンガ一気買いなんて久しぶりのことです。1年くらいご無沙汰かもしれません。

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