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『ドラクエ』シリーズをやってていつも思うことがある。
「この世界の連中は何を食べて生きているのか。」
農業は存在しているようだが、農地がほとんどない。
町の外にモンスターが闊歩している状態で農業を営むというのは無理がある。
モンスターを狩って食料にしているのだろうか。
だとすると勇者一行がラスボスを倒して世界からモンスターが居なくなると、食料供給が不足して飢饉が発生してしまう。
モンスターの皮とか角とかを材料に道具を作っている職人は失業してしまうだろう。
モンスターの脅威のおかげで生計が立っていた武器屋・防具屋、剣士も失業する。
余剰になった武力を消化するために、あるいは食料資源を求めて戦争が行われるかもしれない。
ラスボスを倒して平和が戻りめでたしめでたし、とは終わらないのではないか。
ほかにもツッコミどころはある。
「どうのつるぎ」の銅や「はがねのよろい」の鉄を採掘して製錬・鋳造している場所も人間も出てこない。
モンスターを倒すと金やアイテムが手に入るというのはどういう仕組みなのか。
モンスターが旅人から金やアイテムを奪っているとしても奪う動機が不明だ。
彼らも交易をしているのだろうか。
城の石材はどこで採掘されどうやって運ばれてきたのか。
衣服の布は何から出来ているのか。
わからないことだらけである。
まあ、コンピュータゲームの都合上描写を省略したりゲームとして成り立つように設計したりしてるからそういうことになってるんだよ、と言ってしまえばそれまでなのだが。
そんな感じで「ドラクエ」的ファンタジー世界に対して穿った見方をしてしまう自分にとっては『魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」』、通称『まおゆう』はストライクな作品だった。
『まおゆう』は2ch BBSのニュース速報VIP板に投稿された即興長編小説である。
私が好きなゲームクリエイター桝田省治のインタビュー記事を読んだところ、彼が書籍化に関わっているというので読んでみたのだ。
――勇者が魔王の城へ単身乗り込み、魔王を殺そうとする。
だがその魔王は、経済学を中心に様々な知識に長けた若きインテリ美女だった。
血気にはやる勇者に対し、彼女は冷静に説明する。
人間界も魔界も、人間対魔族の戦争によって社会秩序が保たれているので、今戦争をやめても、勇者と魔王のどちらかが倒れても、悲惨な未来が訪れるだろう、と。
そして「まだ見たことがないものが見たい」と告げ、自分が勇者のものとなるのと引き換えに勇者が自分のものになるよう勇者に迫る。
勇者を説得することに成功した魔王は勇者と共に正体を偽り、人間界のとある村に潜入。
輪栽式農業の導入、弟子の養成、ジャガイモの栽培の普及を手始めとして社会改革に乗り出す。
勝利でも敗北でもない戦争の終わり方……まだ見ぬ「丘の向こう」を目指して。
しかし魔王と勇者の挑戦は、人間界と魔界に新たな動乱を引き起こしていく……。
あらすじはそんな感じ。
「閉塞した状況の中から前向きな未来を目指す物語」とか「経済や近代化の歴史の教科書になる」とか肯定的な評価がある一方で、「ネオリベラリズムのイデオロギーによって現状を肯定する物語」なんて批判もあって、発表当時は随分論争があったようだ。
「地の文が存在せず、ほぼ会話のみで物語が進行する」「キャラクター名は肩書きや属性で記され固有名がない」というVIP板によく投稿される小説のフォーマットが踏襲されているため、読みやすさや取っつきやすさという点では劣る。
また、書籍版が桝田省治の監修のもとに『まおゆう魔王勇者』と銘打たれて順次刊行されているが、それが全5巻予定というくらい話が長い。
それでも物語がどう着地するのか気になって、ついつい読みふけってしまった。
「魔法使い」の声は茅原実里、「東の砦将」は山寺宏一で脳内再生されたり。
女騎士は『ティアーズ・トゥ・ティアラ』のオクタヴィアみたいな造形をイメージしてしまったり。
単純な勧善懲悪へのカウンターから始まっている物語ではあるけれども、勧善懲悪なモラルは保持されているのでカタルシスがある。
物語が進むにつれて脇役と思われた連中それぞれが主人公並に存在感を現してきて、キャラクターが立つのもいい。
書籍版の「無料お試し版」を読む限りでは、即興で書かれたゆえに雑だったり整合性が合わなかった部分に細かい修正が加えられているし、台詞が色分けされているので読みやすくなっている。
面白い物語を書いてくれた作者に報酬を与えるという意味でも書籍版を読むのが一番いいと思う。
でも結構なお値段がするので、お金がない人はまとめサイトで読むのも悪くない。
検索結果のトップに出てくるこのサイトが黒背景で目に優しい。
http://maouyusya2828.web.fc2.com/
こちらは読者の反応も交えて読めて投稿当時の臨場感があり、目にも優しい。
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/maou_kono_warenomonotonare_yuusyayo_kotowaru.html
この春からはマンガ版の連載も始まっているようだ。
原作に即して書くと何年かかるか分からないが、適当にカットするのかな。
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