クロード・ランズマン監督の映画『ショア』( SHOAH )と『ソビブル、1943年10月14日午後4時』( Sobibór, 14 octobre 1943, 16 heures )を収録した DVD-BOX。
『ショア』
1985年に公開された記録映画で、制作期間は11年にも渡る。
第二次世界大戦時代、ナチス・ドイツが行った大量虐殺のうち、ユダヤ人を対象にして主にポーランドで行われたものを題材としている。
10年遅れて日本に入ってきたため、私が高校生くらいの時に話題になっていた作品だが、一般向けのビデオ販売は行われておらず、観ることができる機会は有志による上映会や図書館での閲覧などに限られていた。
かつて私が観たのは、大学の講義の補助教材として教授だったか助教授だったかが持参したビデオで、限られた講義の時間の中では断片的にしか観ることができなかった。
しかし DVD として一般販売されたおかげで、ゆっくりと自宅で全部を観ることができるようになった。
何ともめでたい。
本作はインタビューで構成されていて、絶滅収容所で生き延びたユダヤ人、絶滅収容所に勤務していたドイツ人、絶滅収容所の地元のポーランド人、歴史学者であるユダヤ人、ユダヤ人の鉄道輸送に携わっていたドイツ人、ワルシャワ・ゲットーを管理していたドイツ人、ポーランド政府の密使として働いていたポーランド人などが登場する。
BGM はなく、音楽はと言えば、インタビューをされている人物が口にする歌くらいのもの。
第二次世界大戦当時に撮影された写真や映画などの刺激的な映像も一切登場しない。
淡々と証言が続き、インタビュー当時、すなわち戦後30年から40年経過した後の収容所近辺や収容所跡地などの映像が時折証言に重ねられるのみである。
恐らく、感動だとか感情移入だとかいうものは拒否しているに違いない。
監督は恐らく次のように言いたいのだろう。
真実の記録は記憶の中にこそあるのであって、記憶は証言を介してしか現れない。
第三者ができるのは、ただそれを受け入れるだけ。
当事者でない者が被害者と心を重ね合わせることなどできやしない、と。
ただ、このやり方は歴史修正主義者の手にかかると「そもそもホロコーストには証拠がないから証言に頼ってるんだ」という風に解釈されてしまうし、観ていて退屈になりがちなので私はベストだとは思わない。
上映時間は9時間にも及ぶ。
あまりにも長くて、一気に観ることなど到底無理。
ホロコーストという余りにも凄惨な出来事を表現するには、2時間や3時間では不可能だと、あるいは、被害者が受けた苦痛を観客も味わえとでも言うような長さだ。
興味深かったのは、歴史学者による解説で、ユダヤ人を絶滅収容所に輸送するのにもナチス・ドイツは鉄道事業者(国鉄)に運賃を支払っていたという話。
団体料金が適用されていて、列車の手配には一般の旅行者と同じ旅行代理店を介していたんだそうだ。
列車が占領国の鉄道を経由する場合は、ちゃんとその国の通貨で支払っていたとか。
さすが律儀さに定評のあるドイツ人!
それだけにホロコーストが単なるナチス首脳部の狂気なのではなく、社会的に、官僚的に、冷静に、粛々と遂行された事業であるということも垣間見えるのだ。
鋭い刃物で心を抉るのではなく、布をこれでもかとばかりに大量に積み重ねて行って、心を重みで潰しにかかるような作品である。
『ソビブル、1943年10月14日午後4時』
2001年に公開された記録映画で、元々は『ショア』のために撮影されたが、『ショア』ではカットされた一つのインタビューを映画作品にしたもの。
1979年に撮影されたインタビュー部分と、2001年に撮影されたワルシャワやソビブルの映像から成る。
強制収容所からの脱走に8回失敗しながらも強制収容所を転々として生き延び、ついにはソビブル絶滅収容所で武装蜂起に成功して脱走を遂げたユダヤ人、イェフダ・レルネルが自らの経験を語っている。
BGM も第二次世界大戦当時の映像もないのは『ショア』と同様である。
結末にはソビブル絶滅収容所への移送実績の日付と人数のリストが延々と読み上げられる。
作品を単なる英雄譚にしない、心憎い嫌らしさが感じられる。
上映時間は1時間38分。
![ショア [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/21V7VMBPBYL._SL160_.jpg)

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