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2008年12月 4日
「 NIRO 400 」で5.1chサラウンド

DVD-VIDEO のパッケージの裏面を見ると、たいてい下の方に表がある。そこには「5.1chサラウンド」「2.0chステレオ」「モノラル」などと書かかれている。これは音声の再生様式を示している。
ステレオとモノラルは知っている人が多いと思う。ステレオは前面2個のスピーカーで左右別々の信号を再生して、立体的な音響を作り出すもの。対してモノラルはスピーカーが1個だけ(厳密にはモノラルと言うのは間違いで、モノフォニックと言う)。
では5.1chサラウンドとは何か。これは聞き手を取り囲むように6個のスピーカーを設置して、それぞれに別々の信号を流し、ステレオよりも更に臨場感を高める仕組みだ。聞き手の前面左右にステレオと同様にフロントスピーカーを置く。そしてその間にセンタースピーカーを置く。聞き手の斜め後ろ左右には、サラウンドスピーカーを置く。映画の場合、センタースピーカーからは主に俳優の台詞が出て、フロントスピーカーからは BGM や環境音が出る。サラウンドスピーカーからはカメラの後方から発せられる音や残響音が出る。「.1」と表記される残りの1個は重低音を専門に担当するサブウーファーと呼ばれるスピーカーで、フロントスピーカーの近辺に置く。こうすることで、映画館のように迫力のある音響を楽しめるのである。この5.1chサラウンドに対応した家庭用音響システムが、電器メーカー各社から発売されている。
一方、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの技術革新で TV の薄型化と大画面化が進行してきた。ところがスピーカーは箱に充分な大きさが取れる方が音がよくなるので、薄型の TV というのはどうしても音が貧弱になる。大画面により映像では迫力が出るのに、音響では迫力がないという状況になった。
音響を解決するには、前述のサラウンドシステムを別途導入すればいい。しかし日本の住宅事情では聞き手まで均等に音が届くようにスピーカーを配置するのは難しいし、サラウンドスピーカーそのものや、サラウンドスピーカーとアンプを接続するコードが掃除や通行の邪魔になって家族の不興を買いがちだ。
そこで、「前面にスピーカーを置くだけで5.1chサラウンドを楽しめたら便利で売れるんじゃないか?」という発想に至り、今では各社が「フロントサラウンドシステム」を商品化している。代表的な方式としては、ステレオと同じフロントスピーカー2個を流用し、マイコンにリアルタイム演算をさせて擬似的なサラウンド音声を生み出すもの、6個分のスピーカーを1個の箱に収め、部屋の壁面に音を反射させてサラウンド音声を生み出すものがある。
NIRO
NIRO はフロントサラウンドシステムを専業とする日本のベンチャー企業。マニア向けの高級オーディオ機器メーカーとして知る人ぞ知る nakamichi の元社長が創業した。少し前まで web での直販のみ、現在でも店頭で販売しているのはビックカメラだけなので、知名度はとても低い。しかしフロントサラウンドシステムの販売では先行している。4年前くらいには、ステレオの流用ではないフロントサラウンドシステムを販売していたのは YAMAHA と NIRO くらいのものだった。
最初は3ch分のスピーカーが1箱に収められたユニットを聞き手の前方真ん中と後方真ん中に置き、サブウーファーを聞き手の前方のどこかに置くという6.1chシステムが始まりだった。次期製品では、5ch分のスピーカーが1箱に収められたユニットを聞き手の前方真ん中に、サブウーファーを聞き手の前方のどこかに置くというフロントサラウンドシステムに移行。現在では3ch分のスピーカーが1箱に収められたユニットを聞き手の前方真ん中下に、2ch分のスピーカーが1箱に収められたユニットを聞き手の前方真ん中上に、そしてサブウーファーを聞き手の前方どこかに置くというフロントサラウンドシステムに移行している。
NIRO 400
「 NIRO 400 」は NIRO のフロントサラウンドシステムの第二世代にあたる製品である。視聴距離に応じて400、600、800、1000とスピーカーのサイズが大きくなり音質が向上したラインナップが用意されており、「 NIRO 400 」はその中で最もサイズが小さく、価格も最も安かった。想定されている使用目的は、PC 用スピーカーや26型以下の TV 用スピーカーだ。
かつて NIRO は製品を期間限定で消費者に貸し出し、消費者が気に入ったら購入してもらうというキャンペーンを行っていた。返品され会社に眠っていた型落ちの中古品が35%オフで売り出されていたのを見つけ、2年前に購入した。定価が54.000円だったところを35,100円。オプションのマウンタと送料を入れて、39,300円だった。中古品とは言ってもほぼ新品同様だ。
NIRO 400 は 5ch分のスピーカーが1箱に収められたサテライトユニット、サブウーファー、その2つに信号を送るデジタルアンプの3つから成る。サテライトユニットは TV の上の真ん中に置く。サブウーファーは、TV と平行の同一面に置く。そしてそれぞれから生えているケーブルをデジタルアンプに繋ぐ。デジタルアンプには、DVD プレイヤーやゲーム機などの音源を光デジタルケーブルなどで繋ぐ。テスト音声を使った配置調整は要らない。設置はとても簡単だ。

サテライトユニットは6角形をしていて、五辺にそれぞれスピーカーがついている。まともに聞き手の方に向いているスピーカーは1つだけで、「これで本当にちゃんと音が聞こえるのか?」と思わされるが、これがミソらしい。真ん中のスピーカーがセンタースピーカー、そっぽを向いている奥の左右のスピーカーがフロントスピーカーを担当し、手前左右のスピーカーがサラウンドスピーカーを担当しているようだ。他社製品とは違い、壁の反射は利用せず、サラウンド音声のみアンプ側で演算調整し擬似再現する、という他に類を見ない方式を取っている。
手持ちのレンズクリーニング用 DVD に付属するテスト用音声で試してみたら、本当にサラウンドになっていた。後ろからはっきり聞こえるか、というとさすがに辛いところだが、180度くらいの範囲で方向を認識できる。
サブウーファーは実際には低音だけではなく中低音まで担当しているようで、音楽を流してサブウーファーの音声レベルをゼロにしてみると、とてもスカスカした音になる。サブウーファーの威力は特に映画で発揮される。『パプリカ』の BD を観ていたら後半の都市破壊シーンでドカドカと低音が響くので、私が床を踏み鳴らしているのかと家人が勘違いしたくらいだ。近所迷惑にもなるので、夜間はサブウーファーのレベルを落とすか、ヘッドフォンを使用するのが賢明だろう。
それでも家人や近隣住民に気兼ねすることなく自然なサラウンドを楽しみたい、というニーズに向けた商品として、MovieMouse というオプションがある。5個の小型スピーカーをA4サイズ程度の薄型の箱に収めたもので、手元に置いて使う1人用のサテライトスピーカーだ。スピーカーがかなり小型な分、音の厚みはなくなるが、サラウンド感は優れている。2万円強と高いのと、NIRO が販売している最新システム「 Q: 」では使えないのがネックではあるが。
NIRO 400 はデスクトップ・シアターを構築するのに良好なシステムだと思うが、後継機種の NIRO 420 を含めて販売が終了している。スピーカーを6個置く必要はあるものの安価なシステムが各社から沢山発売されていて競合するせいか、現在 NIRO から PC 向け・小型 TV 向けの商品は販売されていない。一人暮らしの人や書斎で使いたいという人にはうってつけなんだけどなあ。
5.1ch サラウンドは戦争映画、アクション映画、ミュージカル映画など、音響を重視して製作された映画を観るには素晴らしい力を発揮する。サスペンス映画やホラー映画でも音響を利用して恐怖感を盛り上げる演出は基本なので、活躍の機会があるだろう。その他の映画でも、TV のスピーカーより音がしっかりするので、俳優の声が聞き取りやすくなったり、効果音がより鋭敏に聞こえたりするというメリットがある。
また、Xbox 360 や PLAYSTATION3 のゲームソフトでは 5.1ch サラウンドに対応した作品が多いため、ゲームの臨場感を高めるのにも有効だ。5.1ch サラウンドシステムでは 2ch ステレオをバーチャルにサラウンド化する機能が付属していることも多いので、5.1ch サラウンドに対応していない映画やゲームソフトでも、より一層楽しむことができる。
投稿者 Dormeur : 2008年12月 4日 21:30
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