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août 15, 2008

『 12RIVEN 』と『 CROSS†CHANNEL 』における「異世界」

主人公級のキャラクターが、人間の居ない世界に紛れ込んでしまう――『 12RIVEN -the Ψcliminal of integral- 』と『 CROSS†CHANNEL 』の設定は一見、似ている。

しかし両者は異なる。『 12RIVEN 』では、その世界が成立している理由が作中で明示されているのに対し、『 CROSS†CHANNEL 』では仮説やほのめかしで終わってしまっている。

『 CROSS†CHANNEL 』においては、異世界の成立理由は重要視されていない。作中のある人物が、思考放棄するように盛んに主人公を誘導している。主人公にとっては自らが異世界に居るという現実が重要なのであって、彼の望む結果さえ得られれば原因は何であろうと構わない。主人公以外の登場人物にとってもそれは同様である。異世界の成立理由がどうあれ、物語の結末に矛盾は生じない。

「トモダチの塔」と呼ばれる没シナリオ(注1)では、主人公が異世界に到達する前に異世界で起きた出来事が記されてはいるが、それとて異世界の成立理由が示されるわけではない。「トモダチの塔」は作品1周目の展開の正体、町外れの死体の正体、ループ現象を望む者の存在について示唆してくれる。しかしそもそも作品として世に出たシナリオには書かれていない後付の材料でシナリオを考察するのがフェアかどうか、という問題がある。

『 12RIVEN 』においては、異世界の成立理由が物語にとって重要である。それを主人公が知ることによって主人公は事態に対処できる。主人公が陰謀に巻き込まれ陰謀を打ち破るこの物語では、陰謀を企む登場人物は異世界の成立を前提に物語冒頭から一貫して行動している。

にも関わらず、異世界の成立理由の辻褄が合わないことが『 12RIVEN 』の問題である。作中の設定では異世界で個人同士が同時に存在してコミュニケーションを取れることを説明できない。私個人の考えでは、『 serial experiments lain 』で使われた「人類の集合的無意識のネットワーク」という概念を持ち出せば合理的な説明ができると思うが、作中でその概念は明示されていない(注2)。ほかにも、冒頭での拳銃奪取やトラック事件も別設定(特定人物のみ持つ超能力の存在とか)がないと矛盾なく説明ができない。後付の材料でシナリオを考察する問題を避けられないのだ。

なお、物語設定が現実の科学と照らし合わせて正しいかどうかは問題ではない。もちろん正しい方が読者への説得力が増すが、間違っていても作中で明示的かつ整合性があれば、「作中に限っては」有効だ。そうでなければ創作物語は成立しない。ゴジラもスーパーマンもハリー・ポッターも非科学的な存在だが、各作中に限っては「居る」。

『 12RIVEN 』における異世界も、『 CROSS†CHANNEL 』における異世界も、読者が「そういうものなのだ」と盲目的に受け入れるしかない点では共通している。しかし物語の根幹を物語内で合理化できていない分、『 12RIVEN 』の方が読者の反発を免れないだろう。


注1:「トモダチの塔」は公式ファンブックに収録されているが、「 cross channel script.pd 」で web を検索すると読むことが出来るようだ。また、ファンがスクリプトを組んでゲームに仕立て上げたプレイ動画がニコニコ動画に投稿されている。

注2:「集合的無意識」の語は作中で登場するが、それは「マインド・フュージョン」の能力について語る描写においてである。

投稿者 Dormeur : août 15, 2008 11:00 PM

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