5 août 2007

読んだ本 2007.8.5

2006年の初春くらいに読んだ本。

宮部みゆき『人質カノン』(文春文庫)

ISBN:4167549042

いわゆる「日常の中のミステリー」を描いた短編集。
「円紫師匠」とか「猫丸先輩」みたいな全編共通の探偵役がおらず、それぞれの話の主人公が自力で真相を探り当てるのがちょっと目新しかった。
宮部みゆきがこういう短編も書ける人って知らなかったな。

古橋秀之『ある日、爆弾がおちてきて』(電撃文庫)

ISBN:4840231826

あとがきで作者自身が言及しているけど、「時間の流れ」をテーマにした短編集。
ストーリーは「高校生くらいの普通の少年の前に、変な少女が現れて、恋心が絡む」というライトノベルにありがちな構成で統一されている。
青春を感じさせる明るい雰囲気の作品群の中で「恋する死者の夜」という一編が異彩を放っていて印象深かった。
死んだ人間がゾンビ化して生前の行動を繰り返すようになっている世界で、主人公は病弱な少女と出かけた「一日限りのデート」を少女の死後も繰り返し、世界の緩慢な死に身を委ねる……というお話。
あと、最後の一編「むかし、爆弾がおちてきて」の設定は広島・長崎の被爆者や関係者には怒りを買うかもしれないけど、秀逸なアイデアだと思う。
ライトノベル入門の一冊として好適かも。

谷川流『絶望系 閉じられた世界』(電撃文庫)

ISBN:4840230218

谷川流といえば『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズで有名だが、これは毛色の違うアプローチの「セカイ系」作品。
主人公の友人の家に、突然天使と悪魔と死神と幽霊が現れる。ひとまず主人公は、自分の名前しか思い出せない幽霊の青年の素性と死因を探っていくのだが……。
天使や悪魔や死神や幽霊が居る世界のシステムが存在するなら、そんな世界そのものが狂っているのではないか、狂った世界では狂人こそがまともなのではないか……という着眼点で物語が作られている。
荒唐無稽な設定で、主人公もヒロインも狂っているが、一種の思考実験としては面白い。
描かれた狂気をフィクションとして楽しめるだけの免疫を備えてからじゃないと読んではいけない。

長森浩平『タイピングハイ! さみしがりやのイロハ』(角川スニーカー文庫)

ISBN:4044709017

物語の舞台は人口減少により都市コロニーごとに人が住むようになった近未来の世界。
主人公はハッカーの少年。
彼は伝説的ハッカー「レムス」の情報を受け、違法な AI 研究をしているという名門学園に生徒として不正入学する。
早々に不正入学は明らかになるが、顔を隠した謎めいた生徒会長に呼び出され、限られた生徒だけが進むことのできる「 AI 養成コース」に進むことを要望される。
さらに学園内にいる「アリエル」という名の迷子の少女を探し出すことを依頼される。
果たして「レムス」の情報の真偽は、生徒会長と「アリエル」の正体は……というお話。

表紙のイラストこそロリコン調の少女3人が描かれているだけだが、中身はよく出来た SF。
人に教えられなかったら、まず読んでなかったと思う。

それにしても作者の名前の元ネタはやはり『 ONE 』なのだろうか……。

笹生陽子『きのう、火星に行った。』(講談社文庫)

ISBN:4062750228

斜に構えてクールぶっている小学6年生の少年を主人公におき、彼と彼をとりまく少年たちの成長を描いた短編。
熱く燃えていく主人公の疾走感が気持ちいい。
字が大きくペラペラなので、主人公同様の、ちょっとませた小学生が背伸びして読むのもよさそう。

滝本竜彦『 NHK にようこそ! 』(角川文庫)

ISBN:4043747020

大学を中退しアパートに引きこもる青年、佐藤を主人公にした青春小説。
彼の前に清楚な少女「岬ちゃん」が現れ、彼を「ひきこもり」から救い出そうと言う。
そんな彼女をあしらい、自力で「ひきこもり」から脱出しようと奮闘する佐藤だが、挫折してばかり。
佐藤は岬と契約し、彼女のサポートを受けることになる。
しかし岬の行動には、内に秘めた本当の目的があった……。

オタク男やネットサーフィンの描写が「作者自身の実体験でなくちゃここまで書けないだろう」というほど秀逸で、共感を誘われる。
地の文でも、持ち出してくる言葉や文章のセンスが尋常でなく私にジャスト・フィットしてきて、ニヤニヤしてしまう。
ご近所の見慣れた風景がテレビ放送で映し出されているのを観たときに何故か喜んでしまうのと同じような感覚があるのだ。
少なくとも私にとっては、ずっと保管しておきたい本。

マンガ版は無理にストーリーを引き伸ばしている感があってグダグダだけど、原作はすっきり綺麗にまとまっている。

アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』(創元推理文庫)

ISBN:4488123015

ロンドンで毒入りチョコレートによる毒殺事件が発生する。
一体犯人は誰なのか?
事件は警察から「犯罪研究会」に持ち込まれ、会員6人が1人ずつ真相の推理を披露していくことになる。
もっともらしいと思わされた推理は新事実とともに次々と覆っていく。
そして6人目の会員がついに真相にたどり着く……。
アイデアといい、6つの異なる視点を用意する力量といい、感心するばかり。
「古典的名作」の評判に偽りなし。

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コメント(2)

宮部みゆきは、「短編」の方が実際良いと私は思ってます。
長編作家って短編はイマイチなこと多いけど、宮部みゆきは寧ろ短編!共通探偵が登場するけど「淋しい狩人」もなかなかいいよー!後は最初の「我らが隣人の犯罪」もツメは甘いけど、良いです。

ほほう。情報提供ありがとうございます。
宮部みゆきの本は前掲書以来、とんとご無沙汰なのでした。
読むべき本と読みたい本が多すぎるんじゃあ!(逆ギレ)
とりあえず Amazon のショッピングカートに保存しておきます。
『タイピングハイ!』しかりで、教わらないとスルーしちゃう良作ってありますよね。

ちなみに『人質カノン』を買ったのは、たまたま病院の売店で売られてて、ふと手に取ったら、カバーの紹介文に短編集と書かれてたので読みやすそうと思ったから……という偶然。

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