« mars 2006 | メイン | mai 2006 »
avril 30, 2006
『プロデューサーズ』を観た
現在ロードショウ放映中の映画『プロデューサーズ』を観てきた。
この作品は1968年にアカデミー賞脚本賞を受賞した映画だったのがミュージカル化されて2001年にトニー賞を受賞、そしてまた映画としてリメイクされたということらしい。
ブロードウェイの落ち目の舞台プロデューサーのもとに会計士がやってくる。
帳簿を見た会計士の漏らした一言にプロデューサーは「多額の製作資金を集めて一晩でコケる失敗作を作り、製作資金を持ち逃げする」という計画を思いつく。
ブロードウェイのプロデューサーになるという夢を持っていた会計士もその計画に乗り、二人は最低の脚本、最低の演出家を揃えて失敗確実のミュージカルづくりを始める……というコメディだ。
ギャグは腹から笑うと言うよりは苦笑を誘われるといった系統。
国民性や同性愛者をネタにしているのだけど、ドイツ人やスウェーデン人やゲイ団体から怒られないのかなと心配になった。
英語の訛りもギャグの一部らしく、字幕の翻訳も頑張っていたと思うけど英語が得意ではない私にはちょっとしかそれがギャグだということが判らなかった。
アメリカ人にはきっと爆笑ものなんでしょうな。
しかしエンドロールの最後に仕込まれたギャグには不覚にも噴き出してしまった。
エンドロール終了後にもおまけがあるので、エンドロールが始まっても席を立たないよう注意したい。
展開はテンポよく、後から上映時間134分と知ってそんなに長かったのかと驚いたくらい。
ミュージカル映画なので歌って踊ってハッピーエンド、なのだけど、これがミュージカルのパワーという奴なのか、不思議な高揚感があって、観終わった後は胸の奥がすっきり爽やかになった。
ミュージカル業界におけるミュージカルづくりを題材にした作品だけに、「突然作中の人物が歌いだす」というミュージカル特有の不自然さもあまり気にならずに楽しめるのではないかと思う。
投稿者 Dormeur : 07:36 PM | コメント (4) | トラックバック
avril 23, 2006
サントリー山崎蒸留所を訪ねる
文明のあるところ酒あり。
世界中で生み出される酒の中で、今のところ私の一番のお気に入りはスコットランドにあるアイラ島のシングルモルト・ウイスキーである。
スモーキーなピート香に潮風を思わせる塩味、喉から胸に染みるボディ。
値は張るが、それに見合った心地よい酔いをもたらしてくれる。
そのモルトウイスキーの製造が遥か東の島、日本で始められたのは1923年のことであった。
場所は大阪と京都の県境にある山崎。
山崎蒸留所では今もなおウイスキーの製造が行われ、観光コースとして工場見学が一般に開放されていることで有名だ。
我が家からだと同じ大阪府内で交通の便も悪くない。
少なくともスコットランドに行くよりは気軽。
しかし見学受付は2名から、というのが障害になっていた。
ただでさえ知人友人が少ないのに、ウイスキーが好きだとか工場見学に興味があるとかで見学に誘えるような人間となると尚更居なかったからだ。
いつか行きたいと思い続けて幾星霜。
長生きはするもので、ついに山崎蒸留所に足を踏み入れる時が来た。

電話で見学の予約を入れ、蒸留所内に建てられた観光施設「山崎ウイスキー館」の2階に集合して見学はスタート。
若い女性の案内係に連れられて工場内に入り、ウイスキーの製造工程を見て回る。
ウイスキー好きなら承知のことだが、目で見て鼻で感じて確認、だ。
最初は仕込みから。
巨大なタンクに水と麦芽を投入して麦汁を作る。
タンクのある部屋に入ると、酒粕の香りを濃厚にしたような甘くて重い香りが充満していた。
ガラスで仕切られた隣の発酵桶から漂ってきた香りかもしれない。
麦汁は酵母の力で発酵し、マッシュ(もろみ)と呼ばれる低アルコールの液体となる。
これがポットスティルという装置で蒸留され、高アルコールの液体になる。
焼酎だと蒸留は1回だが、ウイスキーは蒸留を2回行う。
部屋は熱気でムンムンとしている。

写真の真ん中にあるのは、職人が蒸留された液体を掬って味見をするための窓。
蒸留されて出来た無色透明のこの液体を「ニューポット」という。
ニューポットは樽に詰められ、少なくて6年、長ければ数十年熟成され、琥珀色に色づくと共に穏やかな風味となる。
倉庫の中は薄暗く寒い。
でも埃っぽくはなくて、落ち着いた木の香りが漂い清涼。

光量が足らないので樽に押し付けて撮影してみたが、やはりブレてしまった。
これでウイスキーの原酒の出来上がり。
工場内の見学が出来るのはここまでだ。
商品化するには樽から取り出した原酒を水で割ったり、酵母や熟成法を変えて作った他の様々な原酒とブレンドしたりして瓶詰めするのだが、その過程は見ることができない。
見学客は試飲スペースへと案内され、「山崎12年」と「響17年」がセミロックで振舞われる。

量はシングル。
無料なのは嬉しいが、後のツアー客がつかえているせいか15分程度で早々と追い出されてしまった。
味はというと、「山崎」は穏やかで大人しい風味。
「響」はブレンデッド・ウイスキーだけあって尚更穏やかな風味に仕立て上げられていて、アイラモルトに慣れた舌には少々物足りない。
まずくはないんだけど。
見学・試飲を終えた後は「山崎ウイスキー館」2階にある土産店で「山崎樽出原酒15年貯蔵」と蒸溜所限定販売のシングルモルトを購入した。
昔「マッカラン」を買ったときにおまけで付いてきたショットグラスしか持っていないので、ショットグラスのセットもついでに購入。
さて、どんな味が楽しめることやら。
「山崎ウイスキー館」の1階では山崎蒸留所で作られた様々な原酒がビンに詰められディスプレイされている。


そして工場で作られたウイスキー製品のみならず、製品のもとになる原酒やサントリーが輸入している各国のウイスキー製品の試飲が有料で出来る。
しかし折角ここに来たのだからここでしか飲めないものを飲みたい。

というわけで、「ニューポットのミディアム風味」と「1970年に仕込んだ原酒」を試飲してみた。
「ニューポット」は100円、「1970年原酒」は2000円だ。

まずはニューポットから。
グラスに鼻を近づけると、仕込みの部屋で漂っていたあの香りに打ちのめされる。
舌に甘みはないがアルコール度数はウイスキーという超濃厚な甘酒と言った感じ。
あるいは出来損ないの泡盛だ。
このまま商品化は絶対無理。
罰ゲームの飲み物にしかならない。
これが樽の中で熟成されるとウイスキーになるのかと思うと感慨深い。
次に「1970年原酒」。
こりゃうまい!
お姉さん、もっとグラスになみなみと注いでくれと思う。
いやはや、熟成とは神の御業ですな。
ほのかに塩味もありアイラモルトに通じるものを感じる。
ビンに詰めて持って帰りたいほどだけど、仮に持って帰れるとしても月給が全部吹っ飛ぶ値段だろうなあ。
この日は「山崎12年」「山崎18年」に合うオードブルをウエスティンホテルの総料理長が提供するというイベントが企画されていた。
150食限定、ウイスキーとのセットで1人1,000円という。
折角なので受付の列に並ぶ。


供されたのは、食べるのが惜しくなるほど細かく作られたオードブル。
なかなかいける。
おかわりが欲しい。
家で飲むときこのオードブル食べたいわ、とはお連れ様の弁。
試飲しては休み、試飲しては休みの繰り返しでトイレが近くなるのには弱ったが、「もうちょっと飲みたいかな」という丁度いいくらいの酔い加減をキープ。
楽しい一日でした。
投稿者 Dormeur : 11:59 AM | コメント (2) | トラックバック
avril 16, 2006
『いま、会いにゆきます』を観た
2004年の日本映画のヒット作『いま、会いにゆきます』。
散々映画館で予告編を観せられて「はぁ、また泣かせる感動作ですか」と冷ややかにスルーしてたのだが、今日 TV で放送するというので観てみた。
若くして妻に先立たれ、小学生の息子と二人暮しの主人公、巧。
妻の澪は「雨の日に帰ってくる」と遺言を残していた。
死から一年後の雨の日、約束どおり彼女は二人の前に姿を現す。
しかし彼女は記憶を失っていた。
妻であり一児の母である、と言われ当惑する澪に巧は、高校時代からの二人の思い出を語って聞かせる。
記憶は戻らないものの再び澪は巧に魅かれ、3人家族の楽しい日々を送るようになる。
澪が一年前に死んでいることは伏せられていた。
しかし澪は生前の自分が書き記していた日記を読み、自分の過去を知ってしまう。
そして雨の季節が終わり、二度目の別れが訪れるのだった。
まあこの辺は予告編から想像のつくストーリー展開。
しかし別れの後、澪の日記を通じて澪の視点から二人の過去が語られ、観客の意表を突く仕掛けになっている。
「いま、会いにゆきます」ってそういう意味だったのね、と。
甘たるいけどピリッと捻りの効いたファンタジーだった。
だがそんな感動ストーリーは原作を読めば十分である。
この映画最大の見所は高校時代のメガネっ子澪。
可愛すぎですよ!
ありがとう、ありがとう監督!
そういうわけで、いま、会いにゆきます。
DVD で。
投稿者 Dormeur : 11:37 PM | コメント (0) | トラックバック
avril 15, 2006
島根県への旅
山陰地方といえば、2000年近く昔には大陸との交易や鉄器の生産によりそこそこの勢力を持っていた地。
日本建国の神話の里。
しかし今では交通不便で特に秀でた産業もなく、人々は細々と暮らしている。
そんなイメージが思い浮かぶ。
足を運ぶにはあまり積極的になれないところだが、島根県在住の友人に結婚披露宴へ招かれたので初めて訪れる機会を得た。
宴の開始時刻は午前12時半。
朝に大阪を発つにしてもギリギリだ。
有難いことにお宿を用意していただけるというので、前日のうちに島根県入りし観光を楽しむことにする。
あらかじめ日が決まっていることから、往路は早期予約割引により10,060円と、鉄道と遜色のない値段で利用できる飛行機を使うことにした。
実は今まで飛行機に乗ったことがない。
大阪空港の展望台から飛行機を眺めたことはあるものの、乗るのもチケットを買うのも何から何まで初めてだ。
3月9日、JAL の web サイトで4月8日の JAC2345便 のチケットを予約する。
大阪空港10時35分発、出雲空港11時30分着の便である。
そして迎えた4月8日。
阪急の梅田から蛍池へ。
ここで大阪モノレールに乗り換える。

モノレールの蛍池駅から1駅で大阪空港に到着。
北側のターミナルビルの1階、銀行の ATM コーナーのようにずらりと並んだ機械にクレジットカードを通してチェックイン。
機械から紙のチケットが出てきた。
隣のカウンターでチケットを提示し、スーツケースを預ける。
2階の出発ロビーから搭乗口へ。
搭乗口といえば金属探知機をくぐる有名な儀式がある。
予習しておいた通り鍵や PHS やカメラはポケットから出し、籠に載せて通る。
警告音が鳴ることはなく一安心。
機内で飲もうと持ち込んだペットボトルのお茶も、内容物を検査する機械に通されたのには感心した。
多分ライターオイルなんかが入っていたら反応するのだろう。
飛行機というと、空港の建物から車輪の着いた蛇腹みたいなのを通って直接乗り込むというイメージがある。
しかし出雲行きの便は地上から搭乗する。
保安のためだろうが、待合場所はターミナルの端っこである。
ひたすら歩いて待合場所に到着。
待機中の JAC2345 便がガラス越しに見えた。

JAC2345 便の機体は、故障が多発して新聞紙面を賑やかしているボンバルディアQ400。
座席数74という小型プロペラ機だ。
大都市の空港と地方空港を結ぶ路線用としてよく使われている。
老朽化した YS-11 を置き換えるのに使えるのはこの機種くらいなので、故障が多くても代替機種がないらしい。
ゲートを通り階段を降りると、写真の左下のところから地上に出る。

思わず「広い」という言葉が出そうになる。
さすが空港、街中なのに広々と空が開かれている。
春ということもあって、晴れてはいるが薄く雲が広がっている。
日差しが柔らかい。
風が強いものの、野球遊びがしたくなる開放感だ。

Q400 は機体が低く、開いた扉がそのままタラップになる。
乗り込むとさすがに鉄道車両とは違って中の空間は狭い。
軽量化のためだろうが座席もペラペラで安っぽく、細い金属の柱で床に固定されているのがむき出しになっており頼りない。
横幅も狭い。
エコノミークラス症候群、という言葉を実感する。

折角窓際の席を確保したので、窓からこっそりターミナルビルを撮ってみる。
なぜか窓ガラスは無数の傷でいっぱいだ。
そこへ「デジタルカメラは上空で使ってください」とフライトアテンダントに目ざとくたしなめられる。
以後着陸に至るまで、口角が上がりっぱなしだが目は笑っていないアルカイック・スマイルを維持し続けた彼女たちに感心。
プロペラが回り出し、いよいよ機体は滑走路へ向かう。
ドキドキしてきた。
滑走路の端に着いたところで、「滑走路が混雑しているので待機する」と案内放送。
人が緊張しているというのに焦らしやがって!
待機している間、この緊張感は何だろうかと考えて思い当たった。
ジェットコースターに乗り込んで、ジリジリとレールを機械で上っていく時のあの感じだ。
そうこう考えているうちに機体は滑走路に出る。
突如プロペラが轟音を発したと思うと、とんでもない加速がかかり爆走。
サイボーグ009ですか?加速装置ですか?と肝を冷やしていると地上の物体がどんどん小さくなっていく。
先生!浮いてます!
ギャア、旋回しないで!
体が斜めに!
左下に落ちる!
というわけで体を強張らしている間に、北向きに離陸した機体は左へ旋回した。
眼下には阪神甲子園球場と鳴尾浜が見えた。
そこから機体はさらに右へ旋回し、北西を目指す。
中国山地を見下ろしながら上昇。
空を覆う薄雲の中に入ると機体が不安定になる。
あのう、浮いているはずなのに何かポイントを通過する電車みたいにガタガタ揺れてるんですが!
と思うと突如重力がなくなった。
ウギャァ!
ふわっと来た、ふわっと来たですよ!
エレベーターで降りるときの、あの内臓が持ち上がるような、背筋が寒くなるあの感覚が!
遊園地の絶叫マシンよりよっぽど怖いっちゅーねん。
ほとんどの時間は安定して飛んでるから怖くないけど、いきなり「来る」のはやめてほしい。
さて、雲を越えると視界の下半分は雲の海、上半分は真っ青な空。
プロペラは快調に回転中。

このQ400という機体、「 Q 」てのは「 Quiet 」の頭文字で、ノイズキャンセリング機構を備えて静粛というのが売りらしい。
しかしこれで静かというのは誇大広告だと思う。
少なくともキハ58よりうるさい。
他の機種はよっぽどうるさいのだろうか。
10分ほど雲の上を飛んでいた機体は再び下降。
機体が小刻みに揺れ、緩急をつけて重力の消失がやってくる。
「大丈夫です」と案内放送があるが、たとえ大丈夫じゃなくても正直に言わんだろう。
両手で手すりを握って耐えていると、眼下に海岸線が見えた。
日本海だろうか。
海岸から内陸部に入り、市街地を突っ切って再び水面が顔を出す。
対岸が見えないところからして、また日本海に出たのか。
ひたすら水の上を飛んでいく。
と、どんどん水面が近づいてきた。
うわ、着水かよ!
と思った途端に地面が出現。
ガクンと衝撃が来てブレーキがかかり、手元にあったペットボトルが慣性の法則に則って前方へ転がっていった。
宍道湖の湖畔、出雲空港に到着だ。
やれやれ、命拾い。



あいにくの曇り空。
いや、曇りというよりも、景色が霞んでいる。
ターミナルビルまでてくてくと歩いていく。
吹き抜ける風が強い。
荷物を受け取るとすぐに空港から出雲大社へ連絡するバスの切符を買う。
バスに乗り込んで出発を待つが、東京から出雲空港への便が到着してから出発するということで30分近く待たされる。
バスに設置された TV が地元のローカルニュースを映し出している。
県内で黄砂を観測しており、見通しが数km になっているという。
霞の原因は黄砂だった。
出雲空港とは言うものの、場所は出雲市ではない。
田園風景の広がる平野をバスは走る。
観光バスのように車内の TV で観光案内が放映される。
走ること40分か50分というところで、突然眼前に山が現れた。
八雲山である。
三輪明神の大鳥居とどっちが大きいかという白い大鳥居をくぐると、並木道。
参道の前に来たところでバスは左折する。
境内の左側に沿って進み、駐車場の対面、土産物店や蕎麦屋が固まったところで止まった。
荷物をコインロッカーに預け境内に入る。
入るなり対面から「メガネをかけた若い巫女さん」という、マンガのキャラクターのようないでたちの女性が歩いてきたが、そのお顔を拝見するに、世の中そんなに甘くないよなと思った。



用を足すため一旦境内の外に出る。
表参道に戻ると、参道の脇に祈りを捧げるおっさんを発見。
さきみたま、くしみたま。

さらに参道を挟んで反対側にはウサギとアイコンタクトを交わすおっさんあり。

その参道は真っ直ぐ高くそびえる松並木の道。
由緒ある大社にふさわしい導入部と言える。

建てられて数百年という銅の鳥居をくぐり、拝殿へ向かう。

拝殿の脇には桜の木が1本、華を誇る。

奥に見える高い屋根が本殿。
一般客は中に入ることはできない。
白い装束の客が神職に伴われて中から出てきたが、これは教団の信者らしい。

本殿に向かって左側にコンクリート製の建物がある。
神社建築にも調和する格好いいデザインだ。
神社庁の庁舎だという。

出雲大社の祀る神様は縁結びの神様である。
ここ数年、神社では悪質な債務者たちや JASRAC の連中を殺してくれるよう祈ってばかりの私だが、折角なので良縁に恵まれるよう祈っておく。
取引先の営業マンが変な奴でありませんように。

門前の敷石のデザインもなかなかよいですな。

さて、表参道の両脇には広々とした芝生の広場があり、その外縁部には桜が植わっている。
休日だというのに田舎だからか、ほとんど花見客がいない。



霞んでそびえる山が厳かな趣を与えてくれる。
満開の桜の季節に訪ねることができたのは運が良かった。


見事な桜なのに、敷地内は閑散とするばかり。

表参道の入口を裏側から眺める。
遠く大鳥居が霞んで見える。

参道の入口の鳥居は、木目がむき出し。
つらつらと見てきて「有名な神社の割にどうも地味だなあ」と思ったが、神社と言えばつきものの朱塗りが一切ないのがその原因であることに気がつく。
建物に朱色をつけるのは稲荷系だっけか。
バスターミナルに戻り、脇の蕎麦屋で当地の名物、出雲そばを頂く。
醤油が強い出汁だった。

看板によると、数百メートル先に「出雲の阿国」の墓があるという。
折角だからと訪ねてみると、道路から土手を登った普通の墓地の中にそれはあった。

ミュージカル「阿国」の公演記念碑なんてものも。
今夜のお宿は松江にある。
出雲大社の門前から松江へは、一畑電車を利用する。
出雲から宍道湖の北側を通り松江へと至る鉄道線だ。

参道の入口から駅へ向かう途中、竹野屋という旅館がある。
実は歌手の竹内まりやの実家、と空港からのバスの運転手が教えてくれた。

駅前の島根銀行の ATM で現金を引き出す。
開発者の趣味が垣間見える。

出雲大社前駅の駅舎は年季を感じさせるモダンな建物だ。
文化財として登録されているらしい。

駅舎の脇からはプラットフォームを覗くことができた。
看板や柱の錆び具合が寂寞感を増している。
二両編成の急行列車が停車中だった。


駅舎の中はステンドガラスから光が差し込み、キリスト教会のよう。
しかしアーチを描く天井はモスクのようでもある。

普通電車が駅に入ってきた。
懐かしい顔だ。
昔、南海電車で走ってた奴である。
地方の貧乏私鉄には、都市部で走っていたオンボロ電車車両が売り飛ばされて余生を送っていることがよくある。

改札が開いた。
電車は1時間に1本か2本。
自動改札機なんてあるはずもなく、検札はスタンプではなくハサミ式だ。
長閑。


車両はワンマン化され、後方確認用のミラーが取り付けられている。


これから乗る急行は「出雲大社号」のヘッドマークが取り付けられている。
車内は3列シートとロングシートの組み合わせ。
車内広告が全然ないことに気がつく。
運転台の中には、「観光急行」という表示があった。
両手で数えるくらいの客しか乗せないままに列車は走り出す。
途中、一畑口駅でスイッチバックする。
何でこんな平地でスイッチバックするのだろうかと思ったが、元々この鉄道は出雲と一畑薬師を結ぶ鉄道として建設され、後で松江と一畑口駅間を作ったためにこんなことになったらしい。
ここから松江市まで電車は宍道湖の岸に沿って走るが、黄砂のせいで対岸が全く見えず、景色を楽しむには至らなかった。
残念。
出雲から小一時間で松江に到着。

湖の端であるここまで来るとようやく対岸が見える。


宍道湖の湖畔は観光を意識してか綺麗に整備され、時折ジョギングを楽しむ人々が通り過ぎていく。
対岸が遠くなるとやはり霞に覆い隠されてしまう。
この夜は松江駅前の居酒屋で地酒「月山」を飲みながら地元の海の幸に舌鼓を打った。
駅前は県庁所在地だというのに、人が少なく閑散としていた。
車社会だからだろうか。
駅は高架化されていて周辺も綺麗に整備されてはいるが、寂れた感じがする。
繁華街はもう少し離れたところにあるのかもしれない。
店を出た後、同行者に誘われて高架下のマンガ専門店に入る。
松江にもマンガ専門店なんてものがあったのだ。
品揃えも、押さえるべきものを押さえてある。
つい2冊買い求めてしまった。
レジの脇のチラシを手にとって見てみると、明日松江市内でメイド喫茶の開店イベントが行われるという。
こんな果ての地にまでメイド喫茶かよ。
宿は一畑電鉄傘下のホテル「ホテル一畑」。
この近辺ではそこそこのクラスのホテルらしく、内装は綺麗だし従業員の対応も丁寧。
観光にもビジネスにも対応するように大浴場を備える。
夜になって黄砂も収まったらしく、大浴場の窓から見える宍道湖の展望はすっきりしていた。



翌朝は爽やかな晴れだった。
景色もよく見渡せる。

いよいよ結婚披露宴。
受付に置かれた新郎新婦ご両人の似顔絵、よく似てます。
本当におめでとう。
披露宴の後、新郎新婦に伴われて自動車に乗り、旧広瀬町(現・安来市広瀬町)へ。
車同士がすれ違うのもやっとな細い国道を通って山を越えたどり着く。
かつて尼子氏の城下町として栄えたらしいこの街も寂れている。
日曜日の夕刻、数少ない店もその戸を閉ざしている。


街中にある「月山」の蔵元、吉田酒造。
一瓶買い求めたかったが、閉まっていた。
月山を求めてスーパーの裏手の酒屋を尋ねるが、ここも閉まっていた。
寂れすぎだ。
諦めず近くの温泉地の土産物センターを訪ねる。
ここも閉店作業中だった。
店員に頼みこむと、店を開けてくれた。
「月山」は web で調べても取り扱っている店が極端に少ない。
楽天市場で2店舗見つかっただけだった。
http://www.rakuten.co.jp/taka2ka/566150/567201/
http://www.rakuten.co.jp/ichimura/101875/132182/
地元店舗で買えたのはありがたい。
買い求めたのは普及品の「月山 純米酒」。
柔らかな飲み口と穏やかな香りで飲みやすい。
次は吟醸を飲みたいところ。
広瀬からは米子へ移動。
米子駅前の食堂で蕎麦を食す。
米子駅前も SATY やホテル、税金を無駄に投入したような建物こそあるが、活気に乏しかった。
米子から特急やくもに乗り、岡山へ。
振り子式車両である381系はカーブを曲がるときに大きく傾く。
違和感を覚えるが、それも眠りの中で気にならなくなる。
目覚めると終着の岡山の手前、倉敷だった。
車代をもらったこともあり、岡山からは新幹線のグリーン車に乗る。
さすがグリーン車、広々とした座席。
手元を照らす読書灯もある。
座席横のヘッドフォンジャックにヘッドフォンを差し込むと、クラシック音楽が流れる。
無料の雑誌を読むことが出来るし、おしぼりのサービスなんかもあってブルジョワ気分だ。
いい夢を見させてもらいました。
というわけで、2日間の小旅行はお開き。
ありがとうございまいした。
投稿者 Dormeur : 09:20 PM | コメント (0) | トラックバック
avril 02, 2006
『かもめ食堂』を観た
フィンランドと言えば森と湖の国、ムーミンが生まれた国。
ディズニーランドに憧れはないけれど、フィンランドにあるというムーミンランドには憧れる。
私の「いつか行きたい国ランキング」上位にある国だ。
そのフィンランドで全部撮影されたという触れ込みの日本映画が『かもめ食堂』である。
フィンランドの首都ヘルシンキの街角に日本人女性のサチエが「 ruokala lokki 」(かもめ食堂)という名の食堂を開く。
おにぎりがメインメニューというその食堂だったが、日本料理店を前面に押し出した店構えというわけではなく、通りすがりに遠巻きに店を覗く現地人はいるが客は一人もいない。
初めて来た客は日本かぶれの青年、トンミだった。
日本のことで彼から受けた質問に頭を悩ますサチエは、街の本屋でミドリという日本人旅行客の女性に出会う。
ミドリに答えを教えてもらったサチエは、その礼にミドリを自分の家に宿泊させる。
特にフィンランドに来る目的があって来たわけではないというミドリは、かもめ食堂の仕事を手伝うことになる。
ポツポツとお客が来るようになったかもめ食堂。
やがてマサコという名の日本人旅行客の女性が店に現れ、彼女も食堂の仕事を手伝うようになる。
そしてかもめ食堂は満席になるほどの繁盛を見せる。
サチエにコーヒーの淹れ方を教えた謎の男、道からサチエを睨みつけては去っていく謎の女性というエピソードはあるものの、特にドラマチックな盛り上がりはない。
かもめ食堂が繁盛していくのは偶然と幸運にしか見えない。
森と湖の国が舞台だが、殆どヘルシンキの街中しか映らない。
ただ日常の時間がゆったりと流れていく。
しかし小林聡美、片桐はいり、もたいまさこという3人の女優の、強力でコミカルな存在感が作品を支えていて退屈させない。
ゆるい物語がおにぎりのご飯だとすれば、彼女らは味付けの濃い具と言ったところか。
ちなみに梅田ガーデンシネマで観たのだけれど、10時15分、10時25分の上映は満員で入れず。
12時20分の上映を観終わって出てきたら、急遽追加された21時台の上映を除いて全て完売となっていた。
上映中は「あんたら笑いすぎだ」と思うくらい随所で笑い声が上がる。
土曜日で毎月1日の映画サービスデー、大阪じゃ梅田ガーデンシネマでしか上映していないってことを差し引いても、何故こんなに人気で観客の反応が良いのか不思議だった。
私が知らないだけで前評判が高かったのか、女優たちの人気が高いのか。
謎である。