実際に読んだのは初夏あたりの時期。
カール・ブルノー・レイダー『図説 死刑物語―起源と歴史と犠牲者』(原書房)
ISBN:4562020768
死刑の起源と執行方法の歴史的変遷を記した本。
原著は1980年の出版で、本書は1989年に出た日本語訳。
翻訳者の手により図版が増補されている。
死刑に賛成か反対かという意見は保留して記述は進む。
終盤になってから、死刑に反対であるという著者の立場が明らかにされる。
著者によれば死刑制度の起源は人間の深層心理にある。
歴史的事実から見て、死刑には犯罪抑止力はないという。
そして理性的なものでない死刑制度は法によって正当化されるものではないと断ずる。
私自身は、人間というものは理性で全て合理的に対処できるほど高等な生物ではないと考えていて、感情の捌け口として、財政縮減の手段として死刑制度を必要悪だと思っている。
ただし、それは刑罰が原則死刑であるという限りにおいてのことで、それが出来ないというのであれば、死刑制度は即刻廃止して犯罪者の社会復帰の受け皿を徹底的に整備すべきだとも考える。
まあ、死刑制度に対する意見はともかくとして名著です。
ジェレミー・ヴィンヤード『傑作から学ぶ映画技法完全レファレンス』(フィルムアート社)
ISBN:4845902303
映像面での映画技法のハンドブック。
辞書的に1ページに1技法という感じに記されていて、手書きイラストによる作例が付く。そしてページの末尾に「この映画のここで使われている」と小さく言葉で実例を示している。
今泉容子『映画の文法―日本映画のショット分析』(彩流社)
ISBN:4882028700
これも映画技法のハンドブック的構成で、言及されるのは撮影技法限定だ。
戦前・戦後すぐあたりの日本のクラシック映画のスチル写真を挙げて解説を加えているのが特徴。
おかげで非常に理解しやすい。
映画入門書としていい本だと思うけど、いかんせん値段が高い。
催馬楽吉之丞『元店長が暴露するアキバ PC ショップの秘密』(毎日コミュニケーションズ)
ISBN:4839913781
秋葉原で PC パーツ屋の店長をしていた著者が、裏話や経験談を明かすという内容。
聞きかじりのフランス語を思い出してフランス人客の接客に当たったというエピソードが印象的だった。
日本語話せるのにフランス語で話しかけてくるなんて、フランス人らしい話だ(偏見)。
最後の1/3は秋葉原の情勢についての批評や店舗紹介記事だが、本書の出版は2004年1月だから変化の激しい秋葉原の町の現状とは合わない部分もあるだろう。
本書の欠点は表紙の下手な萌えイラストだ。
店頭で手に取るのは辛い。
hacksection『ソーシャル娘。萌絵ちゃんのスパイ大作戦』(データハウス)
ISBN:4887187971
ソーシャルハッキングの解説書。
前半の記述は物語仕立てになっている。
高校一年生にして凄腕ハッカーの少女、萌絵には大学生でネットゲーム廃人の兄がいる。
兄が同じゼミに居る女子学生に魅かれていることを知り、大好きな兄のために一肌脱ごうと、萌絵は兄にソーシャルハッキングの技術を教えていく……という内容。
後半は質問に対して萌絵が回答するという形式になっている。
本書で取り上げられている技術は尾行、トラッシング(ゴミ漁り)、盗聴、ピッキング、キーロガー、携帯電話のジャミング、Internet 上でのなりすまし、パスワードのクラッキングなど。
MMO の RMT で金を稼ぎ、読書に励み、七ヶ国語を身に付け、さらに肉体改造も行っている、と萌え妹キャラなイラストに反して設定が荒唐無稽で笑える。
しかし解説されている事柄はしっかりしたもの。
防御法の会得には攻撃法を知ることからって奴で、自己防衛のために知っておきたい。
プレスプラン編集部『タバコを吸わせろ!―喫煙者の喫煙者による、喫煙者のためのバイブル』(プレスプラン)
ISBN:4921132941
喫煙に対する昨今の情勢といったら、反対意見は一切許さないファシズム的で非常に気持ち悪いものだ。
そんな中で喫煙を擁護する言説を展開している本がこれ。
露悪的で堅苦しくない、軽い読み物である。
カバーを裏返すと「タバコをやめよう」という題の本に偽装できるおまけつき。
伊集院光、岸川真『球漫―野球漫画シャベリたおし!』
ISBN:4408612332
前半は伊集院光が自らの野球マンガ読者歴を披瀝しつつ、編集者岸川真と野球マンガについて熱く語り合う。
後半は野球マンガの名作を生み出した三人のマンガ家への伊集院光によるインタビューで、登場するのは『アストロ球団』の中島徳博、『ドカベン』『野球狂の詩』『あぶさん』の水島新司、『ストッパー毒島』のハロルド作石。
マンガ好きで野球好きの私にはヒットです。
みうらじゅん、伊集院光『 D.T. 』(メディアファクトリー)
ISBN:4840106193
みうらじゅんと伊集院光による、飲み屋のアホ話風の対談。
羞恥とともに隠蔽されがちな童貞的精神、または童貞的精神を保ったままでいる大人を「 D.T. 」と呼び、敢えて称揚してみよう――というのが本書のコンセプト。
サブカルチャーを軽妙に語らせれば一級品、の伊集院光とみうらじゅんが揃えばつまらないはずがない。
掬い上げられる数々のエピソードや知見は行動文化論的示唆に溢れていて、面白おかしくもあり興味深くもある。
ただ、10代で今まさに脱童貞への闘争に浸っている少年には、童貞というのはアイデンティティに関わる深刻な問題すぎて笑い飛ばせないかも。
既に20代、30代にあってもはや童貞でない読者が、過去の自分の行動と照らし合わせて笑いながら共感する――というのが一般的な読まれ方だろう。

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