谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』(角川スニーカー文庫)
ISBN:4044292019
帯には「『このライトノベルがすごい!2005』ライトノベル・ランキング作品部門 第1位」とデカデカと書いてある。
通販で買ったので全然知らなかったのだが、本屋に行ったらずらーっと『涼宮ハルヒの○○』というタイトルの本が並んでいた。
売れてるシリーズなのね。
この『涼宮ハルヒの憂鬱』は第8回スニーカー大賞大賞受賞作で、著者のデビュー作でもあるという。
物語は手堅く、高校生の少年「キョン」の一人称で語られている。
高校の入学式の日、彼のすぐ後ろの席の少女が自己紹介の場でこう言い放った。
「ただの人間に興味はありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
彼女こそ涼宮ハルヒ。
折角美少女なのに変人である彼女に何故か目を付けられた主人公は、無理矢理彼女に付き合わされて文芸部を乗っ取り新しいクラブを創設することになる。
世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団、略して「 SOS 団」。
その活動は宇宙人や未来人を探すこと。
その活動を通じてハルヒとキョンの周りに様々な少年少女たちが関わってくる。
しかしハルヒは全く気づいていなかった。
彼らは、主人公を除いて宇宙人や未来人や異世界人や超能力者だったのである。
非日常を求めながら自分が非日常の世界に居る事に気づかないハルヒと、彼女の知らないところで非日常に翻弄されるキョン、という構図で物語は進んでいく。
これもいわゆる「セカイ系」という奴に入るのかな。
日常への幻滅、倦怠というのはライトノベルの読者層の年代には共感できる心理で、それを物語の根幹に据えたこの作品はスイートスポットにすぱっとはまる。
それに加えて一気に読ませる力は看板に偽りなし。
売れるのももっともだ。
露骨にラブコメしてないのもよい。
ジャック・ケッチャム『隣の家の少女』(扶桑社ミステリー)
ISBN:459402534X
ぐわぁぁぁぁぁぁ!
私、子供が虐待される話って読んでて辛いんですホントに。
この小説は語り手である主人公が、その少年時代を悔悟とともに振り返るという形式のお話。
少年時代の彼の隣家に、両親を交通事故で亡くした少女メグが引き取られてくる。
主人公はメグに心魅かれるのだが、メグはその家の女主人に虐待され、虐待はどんどんエスカレートしていく。
主人公は傍観者の立場を脱することができないまま、事態は惨事へと向かう。
悪趣味だなあ。
救いが全くないわけではないけど、気分が滅入る。
しかしきっついのにどんどん読み進めてしまう魔力がある。
それにしてもこの表紙、怖いよう……(シルエット恐怖症)。
カレル・チャペック『山椒魚戦争』(岩波文庫)
ISBN:4003277414
1935年に書かれた SF 小説の古典。
赤道直下のある島で、不思議な海生の山椒魚が発見される。
彼らは人間に従順で知能が高く、教育すれば道具を使いこなしたり、言葉を話すこともできることがわかった。
人類は山椒魚を盛んに繁殖させ、優れた労働力として活用し始める。
それがどんな悲惨な結果を招くかも知らずに……。
核開発競争と「核の冬」の恐怖を予見したかのような傑作。
秋山瑞人『イリヤの空、UFO の夏』(全4巻、電撃文庫)
ISBN:4840219443
ISBN:4840219737
ISBN:4840221731
ISBN:4840224315
宣伝によれば、各巻12万部以上売れたというライトノベル。
2005年にビデオ販売のアニメーション作品にもなった。
現代日本と似ているがちょっと違う世界を舞台に物語は進行する。
自衛隊ではなく「自衛軍」と米軍の基地がある地方都市、園原市。
そこに住む中学生の少年、浅羽直之が主人公である。
彼は並外れた知力・行動力を持つが変人という新聞部部長の水前寺に付き合わされて、夏休みの間ずっと UFO を探すために市内の山中に篭っていた。
夏休みの最後の夜、山から家に帰る途中に浅羽は、浪費した夏休みを埋め合わせるために学校のプールに忍び込む。
するとそこには「イリヤ」と名乗る不思議な少女が居た。
泳げない彼女に浅羽は水泳を教えるが、程なく政府関係者か軍関係者と思われる男が現れ彼女を連れ帰ってしまう。
その翌日、彼女「伊里野加奈」は浅羽のクラスに転校生として現れる。
しかし伊里野は無口で表情に乏しく、同級生と交わろうとせず、浅羽としか関わろうとしない。
普段はリストバンドで隠しているが彼女の両手首には金属の玉が埋め込まれている。
突然鼻血を出して倒れるし、大量の薬物を持ち歩いているし、公衆電話でどこかへ頻繁に連絡を取っている。
学校を欠席したり、校内放送で呼び出されて早退したりすることも多い。
訓練のための抜き打ちの空襲警報に異常に反応し、機敏な動きを見せもする。
『新世紀エヴェンゲリオン』の綾波レイみたいな「新兵器のパイロット」という設定を匂わせつつ、浅羽と伊里野、そして彼らを取り巻く面々の物語が綴られていく。
徐々に浅羽や新聞部員と打ち解けていく伊里野だったが、その時間は長くは続かない運命だった……。
キャラクターやストーリーだけ見るといかにもライトノベルという感じ。
しかしそのキャラクターの動かし方が上手い。
電撃文庫というライトノベルのレーベルだから正直言って侮っていたのだけど、見かけとは裏腹に文章力が高くて驚いた。
1巻につき1話というわけではないが、1話完結的なエピソードを重ねることで全体的に物語が進む構成になっている。
この物語構成も巧みですっかり引き込まれてしまい、1巻を読み終わるとすぐに次の巻を買いに走った。
ちなみにここから先はネタバレ。
物語が佳境に入って浅羽は、伊里野と共に過ごすか、あるいは伊里野を犠牲にして世界を救うか、というジレンマに陥ることになる。
「セカイ系」ですな。
結末は切ない。
少し不満なのは、読んでて頭の中に思い浮かぶ登場人物の姿と、カバーイラストや口絵に描かれている登場人物の姿が一致しないこと。
私の想像力と趣味の問題なのかもしれないけど、どうしてもこのギャップを埋められない。
アニメ版も web サイトを見たところイメージが合わなくて、躊躇しているうちにオンライン配信が終わってしまった。

アニメDVD買って見たけど、今見ると3巻だけラッピングされたまま・・・
1,2,4,5,6と見たのかあたしは(o_ _)o
謎だ
DVD の3巻というと、小説の2巻目に相当する話ですな。
学園恋物語なエピソード。
ここで全編が終了してたら「心がちょっと温まる物語」で済んだんですけどねえ。
ここを折り返し地点として悲劇になりますから。