お口の恋人と言えばロッテだが、影絵映画と言えばロッテ・ライニガーである。
アニメーション映画の初期の時代に影絵映画を制作したロッテ・ライニガー。
「ロッテ・ライニガーの世界」と銘打たれた彼女の作品の上映ツアーが日本で行われていて、今まさに大阪で上映中ってことで観に行ってきた。
上映は短編『カルメン』『パパゲーノ』『ガラテア』の3作品と長編『アクメッド王子の冒険』1作品という構成(順番も同様)。
すべてモノクロのサイレント映画である。
基本的に人物はシルエットで描かれ、顔の表情は描写されない。
キャラクターの感情表現は仕草に頼ることになる。
ところどころカクカクして不自然なところがないわけではないが、上手に動きをつけていて感心した。
『カルメン』(1933年)
ビゼーの歌劇『カルメン』を元にした短編作品。
物語展開は字幕での説明が一切なく、音楽のみ。
ゆえにシンプル。
原作と違って結末は大団円になる。
『パパゲーノ』(1935年)
モーツァルトの歌劇『魔笛』を元にした短編作品。
最初から最後まで歌つきなのだが、恐らくドイツ語なんで何を言ってるのかは判らない。
でも物語は単純なので平気。
『ガラテア』(1935年)
スッペのオペレッタ『美しきガラテア』を元にした短編作品。
神話のピグマリオン伝説ではピグマリオンと彫像ガラテアは結ばれるが、この作品では「人形性愛者キモーイwwwキャハハハハwwww」とばかりにピグマリオンは相手にされず大騒ぎになるというドタバタ劇。
『アクメッド王子の冒険』(1926年)
1926年制作の長編アニメーション映画。
日本はようやく昭和に入ったころだってのに大したもんだ。
モノクロ映画だが恐らくフィルムに彩色してあるのだろう、背景は色つきだ。
鮮やかで独特の雰囲気を作り出しているが、MPEG2 で圧縮したら変なノイズで台無しになりそう。
物語はアラビアンナイトを元にした荒唐無稽な冒険活劇で、全5幕だったかな。
間に字幕画面が入って物語展開の説明がある。
魔法使いが魔法で作った「空飛ぶ馬」にアクメッド王子が乗せられ、魔法の国ワクワクに飛ばされる。
王子はワクワクの女王パリバヌーに惚れてしまい、脅迫まがいで彼女を自分の国に連れ帰ることにし旅立つ。
帰りの道中で二人は脱獄した魔法使いに襲われ離れ離れになる。
一方、魔法のランプの力でアラジンは王子の妹ディナルザデーと結婚するが、魔法使いのせいで宮殿と妻が消えてしまう。
王子はアラジンと出会い、魔法使いの宿敵である魔女の助けを借りて魔法使いとワクワクの魔物を倒す。
パリバヌーを奪還した王子は再び現れたアラジンの宮殿に乗り、アラジンとディナルザデーとともに祖国へと帰還する。
魔法の描写でただの影絵ではない、ウネウネしたおどろおどろしい化け物や精霊が登場するのが面白い。
ガラス板に描いて撮影したのだろうか。
物語は唐突でご都合主義な展開が続いてずっこけそうになるが、民話が元だから仕方ない。
東南アジアでは伝統的な影絵芝居があって、神話を元にした物語を上演していると聞く。
こんな感じなのだろうか、とぼんやり思った。
ところで、実は私はシルエットという奴が苦手で、見ていると怖くなってくる。
『ポートピア連続殺人事件』の一シーンはトラウマである。
しかしロッテ・ライニガーの一連の作品は平気だった。
背景もシルエットで描かれてにぎやかだったり、人物が動いたりするのが恐怖感を和らげているのかもしれない。
作品のカット写真を見つめていると落ち着かなくなってくるし。
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