ISBN:4840220093
女子野球もの小説「若草野球部狂想曲」の本編は全3巻から成るが、サイドストーリーとなる短編集が存在する。
「若草野球部狂想曲」全3巻刊行後、ライトノベル雑誌の「電撃 hp 」に掲載された短編3本と、書き下ろし短編2本を収めた『若草野球部狂想曲 EX アンサンブル』(電撃文庫)だ。
1本目「サイレントハート」は若草高校野球部でも主人公の西宮光児に並ぶ頭脳的プレイヤーであり、謎の多い美少女でもある二塁手、夙川奈留緒の物語。
彼女が野球部に入部した経緯が描かれている。
何故彼女が頭脳的プレイに長けているのか。
一作目で、右打ちの彼女が左打席で難なくバッティングが出来たのは何故か。
その辺の疑問が氷解する。
2本目「マイフレンド」は二作目で助っ人として野球部に加入した一年生の遊撃手、伊奈市鈴音と、一作目から登場している一年生の外野手、服部・O・マリーの物語。
舞台は二作目で鈴音が野球部へ加わってから本番を迎えるまでの間の空白の二週間だ。
ブランクを埋めようと躍起になる鈴音。
マリーは新しいチームメイトを温かく迎えるが、マリーの優れた身体能力を前に鈴音は気後れしてしまい打ち解けることができない。
トレーニングに焦るあまり鈴音はマリーに八つ当たりをしてしまい、マリーも鈴音も深く傷つくことになる。
そんな二人の少女が友情で結ばれるまでの経緯を描いている。
3本目「猫と小夜美と無四球試合」は二作目で若草高校野球部が対戦した白桜学園高校野球部の物語。
ノーコンピッチャーの小夜美が、無四球ゲームを達成しなければならない賭けを行う羽目になった事件を描いたもの。
4本目「キャプテン八木沢」は若草高校野球部のキャプテンのはずなのに、非常に影が薄い遊撃手、八木沢勝彦の物語。
堅実な守備力を持った彼だが、女子部員にも劣るバッティングが欠点。
何とかバッティングを向上させようと奮闘する八木沢に光明は訪れるのか。
短編らしく小気味よい一作。
5本目「夏の彼方に ~ Last ball ~」は西宮光児が若草高校に転校する直前の夏休みの物語。
三年生部員が引退する前なので、若草高校は公式戦に出場できるメンバーがギリギリ揃っていた。
夏の全国高等学校野球選手権大会の地方予選第一回戦に出場した若草高校は、三年生のキャプテンにしてエースピッチャーの戎行信が打ち込まれコールド負けしてしまう。
結局彼は公式戦で1勝も出来ずに野球部を引退することになった。
夏休みを無気力に過ごす戎。
同じく野球部を引退した三年生で若草野球部の女子部員第一号である一ノ谷真綾は、そんな彼の姿を見かねて後輩を巻き込み一計を仕掛ける。
この短編集と、「若草野球部狂想曲」シリーズを締めくくるにふさわしい一作だ。

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