『 Memories Off Duet 』は 『 Never7 』『 Ever17 』『 Remember11 』( Infinity シリーズ)を世に送り出したゲーム会社 KID が製作した、プレイステーション2用のノベル型恋愛アドベンチャーゲームである。
発売は2003年で、現在「 SuperLite2000 」シリーズに収められ、2,000円程度で購入できる。
中身は1999年に発売された『 Memories Off 』、2000年に発売された『 Memories Off Pure 』、2001年に発売された『 Memories Off 2nd 』、そして追加シナリオ『 Memories Off 雪蛍』から成っている( Memories Off シリーズ )。
美少女ゲームにありがちな、口癖によってヒロインのキャラクター性を強調する技法はないし、ヒロインは委員長や超能力者やメイドロボや宇宙人や武術家や巫女や身体障害者ではない。
「萌え」よりも物語性を重視した作りとなっている。
シナリオ製作には Infinity シリーズのシナリオを担当した打越鋼太郎が参加している。
Memories Off
順当に、初代作品からプレイしてみた。
物語は、主人公である高校生、三上智也が幼馴染の少女、桧月彩花と会話しているシーンから始まる。
彩花は智也をデートに誘う。
しかし場面は変わり、智也ともう一人の幼馴染の少女、今坂唯笑の二人が高校生活を過ごすシーンが続く。
そこに彩花はいない。
オープニングムービーの彩花には白い翼が描かれている。
ああなるほど、そういうことね。
冒頭のシーンでは智也も彩花も高校生ではなかったのだ。
そんなわけで過去を引きずっている智也と、それぞれの事情で過去を引きずっている少女たちとの恋愛模様が描かれることになる。
物語中で現れる選択肢をプレイヤーが選択することにより、智也は過去を克服して登場する少女たちとの誰かと結ばれる。
明確なバッドエンドはない。
唯笑と結ばれるルートでは過去のことでかなり葛藤に苦しむ智也だが、ヒロインの一人、霧島小夜美と結ばれるルートではあっさり過去を解決してしまっていて、首を傾げてしまう。
そもそも全体的に物語展開がぬるい。
「嫉妬に狂った唯笑が主人公を刺殺し、自分も首に刃物を突き立てて自殺、血の海のなか『これで永遠に三人は一緒だよ……』とつぶやく」みたいな凄惨な終わり方があってもよかった。
家庭用ゲームだから難しいだろうけど。
悪趣味ですみません。
また、要となるキャラクターである彩花を演じる山本麻里安の演技はお世辞にも上手とはいえない。
冒頭のシーンで初めて彩花の声を聞いたとき、「なんだこのちょっと上手な素人さんみたいな声は!」と思ってしまった。
お陰で彩花が登場するたびに興醒めしてしまう。
物語展開上、彩花を魅力的に描かないと主人公の葛藤や迷いが読み手に迫ってこないのに……。
山本麻里安は本作の主題歌も歌っているが、これも下手。
あまり満足できる作品ではなかった。
Memories Off Pure
『 Memories Off 』の主人公たちの中学生時代を描いた物語。
ここで主人公が彩花とくっつきさえしなければ、彩花と『 Memories Off 』の某ヒロインは、背中に翼が生えるようなことはなかったのだ。
感動するよりもむしろ呆れた気分になった。
Memories Off 2nd
『 Memories Off 2nd 』は『 Memories Off 』の続編で、前作のおよそ一年後が物語の舞台となる。
登場人物は全く異なるが、前作で狂言回しを演じていた人物が、こちらでも脇役で登場する。
また、前作でも物語の舞台が湘南地区をモデルにしていることを思わせていたが、今作ではそれがより明確になっている。
物語の冒頭から、主人公の少年、伊波健には交際中の彼女、白河ほたるがいる。
ほたるは健と同じ高校に通う少女で、年齢不相応な子供っぽい面はあるが聡明で快活。
ピアノ奏者として卓越した才能を持っている。
健はサッカー部を引退してから目標を見失っており、コンクールを目指して練習に打ち込むほたるに引け目を感じている。
そんな中、健は他の女性に心を惹かれていく。
健の浮気相手は健の同級生、健の通う高校の臨時講師、健のアルバイト先の同僚、ほたるの姉、ほたるの親友の計5名。
おかげで物語はドロドロして葛藤と修羅場を抱え、家庭用ゲーム機の恋愛アドベンチャーゲームとしては少し深みのあるものとなっている。
健が浮気せずに終わる展開も用意されている。
健が浮気相手のヒロインと親密になるシナリオに進んでも、選択肢によってバッドエンドに至ることがあり、これがなかなか楽しい。
バッドエンドは、ヒロインが海外へ逃亡したり、才能を開花させることのないまま主人公の前から去ったり、放火の末に自殺したり(ついでに主人公の親友は失踪)、電車に跳ねられて死んだりと、悲惨だ。
さすがにほたるは心優しい少女なので、嫉妬に苦しんでもヒロインを刺し殺したりはしないが、それはそれで切ない。
全体として、心変わりする自分への主人公の葛藤よりも、ヒロインそれぞれが抱える葛藤の方が強く、主人公のダメっぷりが目立つ。
こんな主人公のどこにヒロインたちは惚れるのやら。
まあ、恋なんて不可抗力的に落ちるもので、理由なんか分かりはしないんだけど。
いまいち感情移入しづらい主人公だが、心移りしてしまった後にほたるに対して主人公が抱く疎ましさは何となく同意できる。
贅沢なことだけど、自分の望まない好意を熱心にぶつけられるのって鬱陶しいんだよなあ。
ところで、本作では白河ほたるがピアノ奏者という設定から、音楽ネタが物語の味付けに使われている。
彼女がコンクールで弾くのがリスト作曲の「愛の夢 3つのノクターン 第3番 変イ長調 『おお、愛しうる限り愛せ』」( Liebestraume: 3 Notturnos No. 3 - O Lieb, so lang du lieben kannst )。
聞いたことがあるんだけど名前が分からなかったのが、このゲームのお陰で名前判明。
早速 CD を買ってしまった。
個人的にはこれだけでも収穫だ。
ともあれ、前作よりもドラマ性、キャラクター性、演出、グラフィックなど全てが上回っている。
一般大衆に受け入れられる程ではないけれども、家庭用ゲーム機での恋愛アドベンチャーゲームとしては優秀だと思う。
ちなみに本作には、公募によるおまけシナリオと公式のおまけシナリオが併せて20本あり、本編シナリオ全てと19本のおまけシナリオをクリアすると、最後の1本をプレイできるようになる。
このシナリオではキャラクターの着せ替えを楽しめるほか、ゲームを終わらせて現実に帰るようプレイヤーを諭し、作品を締めくくる。
メタフィクション的で親切な仕掛けが心憎い。
Memories Off 2nd 雪蛍
『 Memories Off 2nd 』の健とほたるの馴れ初めを三人称で描いた物語。
健に思いを募らせ奮闘するほたるの姿がいじらしい。
こんなドラマチックな馴れ初めなのに『 Memories Off 2nd 』で他の女に走る健は最低野郎だ、歯ァ食いしばれ!
この物語を読んでから『 Memories Off 2nd 』を振り返ると、健に捨てられるほたるが可哀想で切なさが増す。
読者にそういう風に思わせた点でこのシナリオは成功だといえよう。
このシナリオ一本で少女マンガ一冊作れそうだ。
まとめ
「萌え」要素が抑制されている分、オタクの世界ではマイナーな作品であるように思われるが、本作以後も毎年のようにシリーズ作品が発売されていることから、そこそこの人気を保っているらしい。
なるほど、恋愛アドベンチャーゲームをプレイしたことのない人にもお勧めできる程のレベルではないが、好んでその手のゲームをプレイする人には訴求力を持った作品だと思う。
2,000円という値段はお買い得である。

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