氏賀Y太『真・現代猟奇伝』(夢雅 COMICS )
ISBN:4861051746
1989年、日本を震撼させた「女子高生コンクリート詰め殺人事件」。
帰宅途中の女子高生を数人の少年たちが拉致、41日間にも渡って自宅二階に監禁したうえ、陵辱・暴行を加えた末に死亡させ、遺体をコンクリート詰めにして遺棄したという事件である。
あまりの凄惨さに、事件のあらましを読んでいるだけで目頭が熱くなるのを禁じえない。
同時に少年たちの所業に義憤が満ち満ちてくる。
2004年には事件をモデルにした小説が『コンクリート』という名前で映画化されたが、抗議や嫌がらせが殺到し、公開中止に追い込まれている。
その「女子高生コンクリート詰め殺人事件」が、エロマンガ雑誌の企画としてマンガ化された。
「真・現代猟奇伝」と銘打って、現実に起きた凄惨な事件を元にしたマンガを連載するという企画である。
執筆を担当したのは氏賀Y太。
氏賀Y太といえば萌えマンガ風の絵柄で内蔵露出のエログロマンガを描いているマンガ家だ。
その雑誌連載を収めているのがこの『真・現代猟奇伝』。
映画の公開中止事件や発表媒体、執筆者の事情があってだろう、本の冒頭には編集部による企画意図の説明文があり、さらに「このお話は事実に基づいた物語であり、内容に関しては全てフィクションです」と書かれている。
また、奥付けにも雑誌編集者の署名入りで「本作品を読まれた読者様のご意見やご感想は何卒編集部までお願いします」と書かれ、くどいほど予防線が張られている。
「女子高生コンクリート詰め殺人事件」を描いた作品は冒頭から全4話。
全体的には「実際にはもっと酷かったんじゃないか」という気がして、描写がぬるいように思う。
しかし最終的に被害少女を死に至らしめたリンチの凄惨なシーンの描写はなかなかで、好色的な猟奇趣味とは一線を画した感がある。
彼女の笑顔を写した写真に一輪の花を手向けた絵によって物語は終わり、鎮魂の祈りと事件への怒りが捧げられている。
ただ、問題はその後に収録されている短編だ。
国家反逆罪への刑罰として、生きながらにして子供の目の前で肉体を解体される母の話「そこの肉片に告ぐ」。
受けた暴行の苦痛が快感になる手術を女性に施し暴行を加える話「 ANGEL 」。
人間が食肉加工される社会、加工工場で働く一人の女性を描いた話「ゆめいろハンバーグ」。
折角張った予防線が台無しになってるよ!
世の中にはこれで興奮したりエレクトしたりする人がいるから商売として成り立っているのだろうけど……私はダメです。
ピクリともしませんわ。
- 女子高生コンクリ詰め殺人関連ページ(写真入りレビュー。グロいので注意)
きづきあきら『モン・スール』( Seed!comics )
ISBN:4901978063
本の帯に「小学生は、人を好きになっちゃいけないの?」とあり、ロリコンマンガかと思わせておいて、実は性愛と家族をテーマとした重い物語。
父の失踪後、親友の助力を受けながら小学生の妹と二人暮しをしていた大学生の主人公。
しかしその親友が妹と肉体関係を持っていたことが発覚し、妹も姿を消してしまう。
そして主人公の知らなかった事実が明らかとなり、「妹を守る兄」という関係は一気に反転する。
実は妹こそが兄を守っていたのだった。
正直なところ、この作品の「妹」は怖いです。
やはり男は阿呆、女には敵わないと思わざるを得ません。
良作。
雁えりか『バンパイアドール・ギルナザン』( 第1巻、ZERO-SUM コミックス)
ISBN:4758050856
吸血貴公子と恐れられた吸血鬼、ギルナザンがエクソシストの手により現代に復活。
しかしそのエクソシストは美男子ながらマニアックな趣味の性格破綻者だったため、復活した肉体は美少女の蝋人形だった。
彼に振り回されるギルナザンの日々を描いたコメディ。
絵はベタが多くて重たいが、ギャグはなかなか面白おかしい。
もうすぐ第2巻が出る見込。
あかほりさとる・桂遊生丸 『かしまし~ガール・ミーツ・ガール』(第1巻、電撃コミックス)
ISBN:4840229554
宇宙人との事故により女性に変わってしまった少年と、幼馴染の少女、初恋の少女の三角関係を描く物語。
コメディチックながら、全体的な展開はややゆったりとシリアスに流れている。
あかほりさとるという名前から受ける印象とはちょっと違う。
「オネニーサマ」というギャグはさすがに寒いが。
細やかで柔らかい絵柄がよい。
小村あゆみ『ハイブリッドベリー』(マーガレットコミックス)
ISBN:4088477901
「少女野球もの」ジャンルでは珍しい、少女向け作品。
土いじりが好きな少女、要は野球部の二塁手杉崎に惹かれているのだが彼の前では素直になれず悪態をついてしまう。
彼女のイレギュラーバウンドへの反応に、野球部の顧問教師は内野手の才能を発見。
彼女の恋心を利用してマネージャーとしての入部を勧めるが、本当の目的は8人しかいない野球部にプレイヤーとして入部させることだった。
思いもよらず野球をやることになるわ、ポジションが杉崎と競合してしまうわで、果たして彼女の恋はどうなるのか……。
今後の展開が楽しみだが、作者が熱心なスワローズファン、担当編集者がマリーンズファンというところに好感が持てる。
第2巻がいつの間にか出てたので買わなくちゃ……。
綾瀬さとみ『夏色ショウジョ』(ワニマガジンコミックス)
ISBN:4898299148
成人マークは付いていないけれどエロマンガ短編集。
作者は気に入っていないようだが、「ああっ青春オナニスト」は無闇な勢いで突っ走る、爆笑間違いなしの一編。
ギャグ以外にシリアスな短編も収められていて、その一編「笑ウ少女」のクライマックスに描かれる、悲しみに歪んだ少女の醜い表情はなかなか印象深い。
小だまたけし『平成イリュージョン』(ミッシィコミックス)
ISBN:4776714914
日中戦争を回避し、太平洋戦争も迎えず平成に至った架空の日本を描いた表題作その他を収めた短編集。
80年代の「少年キャプテン」を彷彿とさせる物語設定と絵柄だが、作者の web サイトを見たらまさにその時代からマンガを細々と描き続けている人らしい。
ちょっと応援したくなります。
宮野ともちか『ゆびさきミルクティー』(第1巻~4巻、ジェッツコミックス)
ISBN:4592134575
ISBN:4592134583
ISBN:4592134591
ISBN:4592143841
女装趣味の少年と、彼にとって妹的な存在である隣家の少女、彼女の家庭教師で少年の同級生の少女、彼ら三人の三角関係を描いている作品。
少女二人は主人公の少年に惹かれているが、彼もそれを承知の上でそれぞれに愛情とも恋心ともつかない感情を抱き、彼女らを傷つけていく。
しかし決定的な破局は訪れない。
ラブコメの、なかなか進展しないぬるい恋愛からコメディ部分を取り去ったような、「ライト泥沼」とでも言った感じの物語がゆるゆると続く。
第4巻では、少年の姉と隣家の少女の父との関係が明かされる。
泥沼はますます深く込み入っていくようだ。

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